【物語シリーズ】花物語で忍野扇が男になった理由

2024年3月9日

放送順と時系列がめちゃくちゃなアニメ物語シリーズ(原作もめちゃくちゃだけど)。

で、時系列的には最未来に当たる花物語に登場した忍野扇が男だったことに面食らった方、多いのではないでしょうか。

「 しまったいまは男の子なんだっけ 」とか言っちゃう。マジでなんなんだコイツ。

なお、花物語で忍野扇が男の姿をしていたことを解説するためには、どうしても物語シリーズのネタバレ、特に最終章にあたる終物語の核心部分に触れる必要があります。つまりネタバレです。

ネタバレがイヤな方は、終物語までご覧になった上で再度お越しくれやす。傷物語や続・終物語までは観なくても大丈夫です。

通説は男の忍野扇は神原が生み出した説

通説は花物語で登場する忍野扇は神原駿河が生み出した怪異だった説です。ネット上でみる限り、この説が一番信頼性が高いとされているようです(私はこの説は間違いだと考えていますが、それは後述)。

まず忍野扇は人が自分自身を正したいと願う自己批判精神が生み出す怪異。化物語セカンドシーズンのなでこメドゥーサや終物語で登場している女版の忍野扇は阿良々木暦の心が生み出したものでした。

生み出した本人とは対となる存在なので、阿良々木暦が生み出した忍野扇は逆の性別の女性花物語での忍野扇は女性の神原駿河が生み出したから男性ってわけです。

さらにいえば忍野扇=「 正体不明 」の怪異はもとをたどれば神原駿河の母神原駿河の母 臥煙遠江が生み出したもの。花物語のキーとなる悪魔のパーツ、レイニー・デヴィルがその怪異のミイラです。

阿良々木暦が忍野扇を生み出したのも、偶然からそうとは知らずレイニー・デヴィルの力を一部取り込んでしまったためでした。

レイニー・デヴィルの左腕に宿した神原駿河が忍野扇=「 正体不明の怪異 」を生み出せても不思議はありません。神原駿河が母 臥煙遠江の才能を受け継いでいるなら、悪魔の左腕がなくとも怪異を生み出せるのでしょう。

また、神原駿河と忍野扇の会話のなかに「 扇君は男だっけ? 」と駿河が訝るシーンがあります。これを忍野扇は「 僕は生まれてこの方ずっと男 」と否定し、神原駿河は「 そういえばそうだった 」とあっさり納得します。

これはかつて阿良々木暦が忍野扇になにを言われても疑うことができず納得していた姿に似ています。

あからさまなウソでも納得せざるを得ないのは、自分自身である忍野扇がそう言い切ることで自分にとっては本当になってしまうからでしょう。

この説の矛盾

ですが、私としてはこの説に異を唱えています。忍野扇が神原駿河の作り出した怪異なら、悪魔様の話を知っているはずがないのです。

「 正体不明の怪異 」は生み出した本人が知っていることしか知りません。忍野扇の決め台詞「 私は何も知りませんよ。あなたが知っているだけです。阿良々木先輩 」のセリフもその証左。

しかし花物語ではじめて悪魔様の噂を神原駿河の耳に入れたのは忍野扇でした。

男版の忍野扇が神原駿河から生まれたものなら、神原駿河が知らない悪魔様の噂を知っているはずがないのです。

神原駿河は忍野扇から悪魔様のことを聞いたあとにバスケ部のキャプテン日傘と阿良々木火憐に悪魔様について訊ねており、この会話から忍野扇に聞かされるまで悪魔様のことなど知らなかったことが明白です。

もう一点、花物語冒頭の会話で「 すべからく 」と口にした忍野扇に対し、神原駿河は心中で「 すべからくの使い方を誤っている 」と突っ込んでいます。神原駿河が知っている「 すべからく 」の使い方を忍野扇が誤用することはおかしい。

このときの会話のテーマが「 過ち 」だったので、過ちの例のひとつとしてしてわざと誤用してみせた可能性もゼロではありません。西尾維新さんはそういう言葉遊び好きですし。ただ、いずれにしても神原駿河が悪魔様を知らなかったことの説明がつきません。

私もこの説自体はとても好きなのですが、この矛盾がどうにもひっかかってしまう。

正体不明であるために男になった?

ここからは私の持論。忍野扇が神原駿河の前に男として現れたのは正体不明であることを続けるためではないか。

忍野扇のレイニー・デヴィルの根源、正体不明であることが本分の怪異です。

その本分から逸脱し続けると、ルール違反としてくらやみに襲われてしまう。だから正体不明であるために女から男になってみたりしているのではないでしょうか。

終物語で明かされますが、忍野扇は阿良々木暦が自分を罰したいがために生み出した「 正体不明の怪異 」。化物語セカンドシーズン以降、数々の事件の裏で糸を引いていたのが忍野扇でした。

経緯を軽く振り返ります。阿良々木暦は八九寺真宵をくらやみから救えなかったことのに、人間なのか吸血鬼なのかあやふやな自分自身や怪異の妹 月火が無害認定されていることなどに負い目をもっていました。

その自己批判精神から深層心理で「 自分もくらやみに罰せられるべき 」と感じていたのです。

そんな折に偶然が重なって、気づかないうちに神原駿河の左腕に宿る力を阿良々木暦は取り込んでしまい、レイニー・デヴィルの能力として、深層心理にくすぶっていた裏の願いがくみ取られます。

阿良々木暦の「 自分もくらやみに罰せられたい 」願いを叶えるため、「 正体不明 」の忍野扇が発現し、くらやみを装って阿良々木暦をの周囲をひっかきまわしていたのです(この辺の事情は下記リンクよりどうぞ)。

その後、臥煙伊豆湖と阿良々木らに正体を看破された忍野扇は怪異としての本分を失い、またくらやみを騙った罰として、くらやみに消滅させられる運びに。

しかし阿良々木暦は忍野扇のことをかばい、あまつさえ一緒にくらやみに消滅させられそうになります。ちゃっかり願いを叶えそうになってる。この忍野扇ちょっと有能過ぎない?

間一髪、やってきた忍野メメが「 忍野扇は俺の姪 」と宣言。忍野扇の正体が再びあやふやになって正体不明の本分を取り戻し、くらやみが消滅。事件は収束しています。

 

でも実のところ、忍野扇が怪異であることに変わりはありません。くらやみに襲われず存在し続けるためには、今後も人々にとって正体不明な存在である必要があります。

その正体不明である一環として、女だったはずの忍野扇が男として登場したのではないか、というのが私の持説です。人間ではなく怪異なんだから、女から男に姿を変えること自体はワケもないのでしょう。

神原駿河の左腕を元に戻す阿良々木暦の願い

 

そうやって考えれば、花物語で忍野扇が神原駿河の前に現れたこともまた自然なことです。

物語シリーズでは阿良々木暦がたくさんの人を(あるいは怪異を)救っていますが、実のところその半数はハッピーエンドではありませんでした。忍野メメ流にいえば全員が幸せになる方法はなかったのです。

特に神原駿河は左腕を悪魔の腕に浸食されたままです。忍野メメいわく20歳になるころまでは元に戻らない。神原駿河は自業自得として甘んじて受け入れましたが、バスケの道は諦めざるを得ませんでした。

毛むくじゃらの左腕は日常生活にも支障をきたしています。常に包帯を巻いて隠さなければならないのは露出狂の神原駿河にとっては苦痛でしょうし、暴走を恐れて毎晩柱に左腕をくくりつけて眠っています。

 

お人よしの阿良々木暦がこの状況を気にしないわけがない。「 神原駿河の腕を元に戻してあげることができたら…… 」と思い続けていたことでしょう。

そんな折、阿良々木暦が悪魔様の噂を耳にする。

(これはあくまでも仮定であり、作中阿良々木暦が悪魔様について言及するシーンはありません。が、妹の阿良々木火憐と月火が知っていたので阿良々木暦が耳にしている可能性は大)

阿良々木暦の深層心理にあった「 神原駿河の左腕を元に戻してあげたい 」願いと、新たに情報が入った「 どんな悩みも解決してくれる 」悪魔様。

羽川翼の想いにも気づかないような朴念仁の阿良々木暦が両者を結び付けられずとも、忍野扇が動き出すには十分すぎる状況です。知識さえあれば発想がなくても大丈夫。忍野扇はそういう怪異なので。

偶然が必然か、悪魔様は悪魔のパーツの蒐集家でした。忍野扇=阿良々木暦が悪魔様の蒐集家としての能力まで把握していたかは微妙なところですが、かつて阿良々木暦を罰するために周囲の状況をを最大限利用した忍野扇のことですから、いずれにせよ少しでも可能性があればともかくも接触をさせる方向で動くと考えるのは自然です。

それで忍野扇は、神原駿河に悪魔様の情報をもたらせたのです。

もしかしたら同時期に貝木泥舟が悪魔様や神原駿河に接触し、レイニー・デヴィルの頭を持ち出してきたのも、忍野扇の計らいによるものかもしれません。いやさすがに考えすぎか?

ちなみに、ガムテープ拘束は暴走を抑えるためではなく、朝起きてガムテープがはがれていれば暴走したことは知ることができるっていう工夫。神原駿河自身、生半可な拘束では抑えられないし、自分で拘束できる=暴走しても自分自身である猿なら抜けられると知っているため、完全に拘束するつもりは最初からありません。

またアニメでは描かれていませんが、自分が寝ているうちに暴走して事故を起こしているんじゃないかと恐れ、毎日地元新聞を丹念にチェックしたり。当然熟睡もできず、起きているときもなかなか気の休まることがありません。続・終物語でアイツがやらかしたせいでお母さんの夢はみるし、幻聴まで聞こえてくるし。

そんな状況、やっぱり阿良々木暦が気にしないわけはないですよね。

ウルトラC:男版 忍野扇はダーク貝木説

もう一つダークホースとしてありえるのが、花物語の男版の忍野扇は貝木泥舟が生み出した説。いま考えました。

忍野メメから聞いたか自分で調べたか、ともかく神原駿河の左腕のことを知った貝木は、それをなんとかしてあげたいとレイニー・デヴィルの頭を使って願いをかけた。

その結果男版 忍野扇が生まれた、なんてアクロバットな説です。しかしこの説、残念ながら忍野扇が男になる必然性が全く思い当たらない。

いずれにしても貝木泥舟は自力で悪魔様のことも彼女が悪魔のパーツを集める蒐集家であることも知り得たはず。あとは得意の口車に乗せて両者を引き合わせればいいだけ。

それを、いくら臥煙遠江の忘れ形見のためとはいえあの貝木泥舟がわざわざ人のために自分でレイニー・デヴィルを使うかな。使わないよな。うん。

思いつきですが、恋物語ひたぎエンドのラストで殴られた頭をのキズを治すために、貝木泥舟がレイニー・デヴィルの頭で猿化していた可能性も……?

だからヒゲもじゃになってスプリント勝負で神原駿河に勝てるほどの俊足になっていた……?

なんていま思いついただけの珍説。

まとめ:花物語で忍野扇が男になった理由

  • 通説は、花物語における忍野扇は神原駿河がつくりだしたたため、反対の性別である男になった。
  • しかし神原の知らないことを扇が知っているなど、一部つじつまが合わない。
  • 忍野扇はいままで通り阿良々木暦のつくった怪異で、引き続き正体不明であり続けるために男の姿で現れた?
  • 肉は牛、牛、豚、鳥、牛、牛、内臓、内臓の順で食え。

ちなみに忍野扇が来ている男子用の制服は、恐らく直江津高校を卒業した阿良々木暦のもの。続・終物語で阿良々木暦が卒業して不要になったので譲り受けた(盗んだとも)ものと思われます。

単純にこのときに着た男性用の制服が気に入ったのが男化した理由だったりして。