十二国記シリーズは白銀の墟 玄の月で完結?【続編長編はないのか】
実に18年ぶりの長編続編 白銀の墟 玄の月 発売で注目を浴びた十二国記シリーズ。
この盛り上がりで新規に入った方も古参のファンの方も気になるのが、今後十二国記シリーズの新作続編が出るのか。
なお、本記事は魔性の子から白銀の墟 玄の月まで既刊をすべてお読みなっていることを前提にしています。特別ネタバレをするつもりはありませんが、ポロリがあるかもなのでネタバレ忌避勢はまたの機会に。
過去の作者インタビューを紐解く
結論からいえば、十二国記の本編は白銀の墟 玄の月で完結で、続編へ発展する可能性は低いといわざるをえません。残念ながら。
新潮社や小野不由美先生自身からの公式発表があったわけではありません。が、これまでの作者インタビューを紐解けば少なくとも本編のストーリーは白銀の墟 玄の月で完結したとわかります。残念ながら。
ただし、2020年発売の短編集以外にも番外編としての長編作品の可能性は大いにあります。
小野不由美先生のスタンスは一貫してた
実のところ、小野不由美先生としてはかなり初期の頃から白銀の墟 玄の月で完結の構想を固めていたようです。
まず小野不由美さんが十二国記関連について語った作者インタビューでもっとも古いと思われる別冊ぱふ 活字倶楽部 Special 4号 小説特集号から。図南の翼が出たばかりで黄昏の岸 暁の天はまだ出ていない1996年に刊行された雑誌です。
ここで本編は残り三冊~四冊とお答えになっています。
――「十二国記」はあとどれくらいのこ予定なんでしょうか。
小野 あと残り本編三冊か四冊、できたら、三冊くらいがいいんてすけど。
雑草社 別冊ぱふ 活字倶楽部 Special 4 小説特集号(1996年8月) より。
残り三冊から黄昏の岸 暁の天と白銀の墟 玄の月をひいてももう一本続編があると思いたいところです。
が、残念ながら小野不由美先生は同じインタビューの別の質問に対し「 理想の刊行ペースは年三冊。しかし本編は上下巻で一冊半端が出るので、これを番外編にあてる 」旨の返答をされています。
つまり、一冊=上巻・下巻もそれぞれ一冊ずつとする数え方。
なので、上下巻で刊行された講談社X文庫ホワイトハート版 黄昏の岸 暁の天が出た時点で本編は残り一冊か二冊だったということに。
白銀の墟 玄の月が四冊も出ているので、むしろ当初の予定よりも二冊もオーバー。三冊か四冊、できれば三冊がいいとおっしゃりながら、黄昏の岸 暁の天の上下巻 二冊+白銀の墟 玄の月 全四巻で計六冊も出してくださったわけです。
白銀の墟 玄の月での完結は当初の予定通り
そういう意味では、もとから十二国記シリーズの本編は白銀の墟 玄の月で完結する予定だったようです。
その点にハッキリ言及したのがダ・ヴィンチ 2003年7月号でのFAXインタビューでの「 シリーズの完結までにあといくつのお話があるか 」との質問に対しての回答。
とりあえず、最初に作った年表は、そもそもが「魔性の子」のためのものだったので、一連の事件が収束するところまでしかありません。その部分については、もう一本書けば、一応の決着がつく予定です。
KADOWKAWA ダ・ヴィンチ 2003年7月号 小野不由美FAXインタビューより。
もう一本書けば決着がつくと明言。この時点で黄昏の岸 暁の天はすでに世に出ていたので、つまりは白銀の墟 玄の月で終わる予定だったのだと再確認できます。
年表についての言及は先ほども引用した1996年8月刊行 活字倶楽部インタビューにもあり、それこそ魔性の子執筆の時点で白銀の墟 玄の月での出来事までしか想定していなかったとわかります。
――設定資料集みたいなものですね。それには内容がとこらへんまでつまっているのでしょうか。
小野各 国の概略と本編の最終話までのタイムテープル、最終話に関係のある世界設定だとか。
雑草社 別冊ぱふ 活字倶楽部 Special 4 小説特集号(1996年8月) より。
合わせて考えると最終話までのタイムテーブル(1996年)があり、魔性の子一連の事件までの年表しかない(2003年)とハッキリします。
しかししれっと出てきた最終話ってワードにはドキリとしますね。やはりかなり初期の段階で物語完結までの構想は固まっていたのでしょう。少なくとも、18年待たせてしまったから急ぎ白銀の墟 玄の月で完結させた、なんてことはなさそうです。
お考えは変わらないのか
2003年以降で小野不由美先生の考えが変わっていてくださればいいのですが、その後のインタビューなどを振り返ってみてもそれはなさそうです。
まず、ダ・ヴィンチ 2012年9月号に十二国記が新潮社で完全版として新装発売されることを記念した特集記事のなかに、2003年7月号で掲載されたFAXインタビューの内容が再掲された点。
小野不由美先生ご自身の考えが大きく変わっていれば当然再掲NGになるでしょうから、完全版として新装する際にも黄昏の岸 暁の天の次巻で完結という構想は変わっていなかったと察することができます。残念ながら。
さらにいえば、白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻が出版されたタイミングで発表された波 2019年11月号での作者インタビューからも構想は変わっていないと知れます。残念ながら。
(新潮社の十二国記公式ホームページで期間限定公開されてたもの)
――「十二国記」は先生の中で、いつ頃から存在した物語なのでしょうか。それは最初から、今のような物語でしたか。また、『魔性の子』をお書きになった時点で、「十二国記」の物語はどこまでが小野先生の中にあったのでしょうか?
小野 基本的な世界設定は『魔性の子』を書いたときからありました。戴の話については、その当時に考えていた話から基本的なところは変わっていません。その他の話は、依頼をいただいてから考えています。
新潮社 波 2019年11月号 十二国記 作者インタビューより。
戴の話しは当時から変わっていないとのことなので、やはり魔性の子執筆時点での構想のまま十二国記シリーズ本編は白銀の墟 玄の月で一旦完結と考えてよさそうです。
ちなみに同じく波 2019年11月号に掲載された白銀の墟 玄の月 刊行記念特集で北上次郎さんも「 作者が十二国記は次の長編で終幕と語ったのをなにかで読んだ 」と語っています。
波って新潮社から発行されているもの。このお言葉が普通に載るってことは、新潮社としても十二国記本編は完結と考えているとみてよさそうです。
十二国出てこないのに終わるの?
以前「 当サイトへ十二国全部のはなしをやってないんだからここで終わったら十二国記とはいえない 」とのコメントをいただいたことがあります。しかし残念ながら、小野不由美先生ご自身、すべての国をやる気はないとハッキリ明言されています。
新潮社 波 2019年11月号 十二国記 作者インタビューより。
ダ・ヴィンチ2003年7月号のインタビューで小野不由美先生は、十二国記というシリーズ名が十二国の一代記って意味にも見えることにあとから気づき、「 猛反省しつつ考え直さなきゃ 」と仰っていました。
しかしその後新潮社から完全版が出るに至ってもシリーズ名は十二国記のまま。「 シリーズ名ではなく構想の方を見直して十二国全部やるのかな? 」と淡い期待を抱いたものですが、残念ながら波のインタビューでそれもないと知り玉砕。
外伝・番外編に一縷の望みを
白銀の墟 玄の月で一応の完結をみることは魔性の子のころから計画されていたことを考えれば、白銀の墟 玄の月の続編は期待薄です。
とはいえ新潮社の文庫初版部数記録を塗り替えた十二国記シリーズですから、編集部としてもぜひ新刊をと希うはず。
実際2020年の短編集もすでに発売が決まっていますし、小野不由美先生自身、外伝や番外編については特に否定していません。
――今作はターニングポイントで、今後まだまだ物語は続くと、みなさん期待していると思いますが、長編の構想はありますか?
小野 いまのところ、具体的なものはありません。よく「次は舜ですか」みたいなことを言われるのですが、全ての国の王と麒麟を出すつもりは最初からないです。王と麒麟の顔が見えてしまうと、それらの人々がずっといる、という形で世界が固定されてしまう気がするのです。続く王朝もあれば、倒れる王朝もある、というのがこの世界のコンセプトなので。
新潮社 波 2019年11月号 十二国記 作者インタビューより。
「 いまのところ 」「 具体的なものはありません 」としています。ハッキリ否定されてしまった舜はともかく、図南の翼的な外伝長編作品は希望が持てるかと。
当初作った設定年表も白銀の墟 玄の月時点までしかないとはいえ、年表があるうちでもまだまだ描けるエピソードもたくさんあるはずです。
千年以上前に戴の代王が泰山焼き討ちして国氏が泰になった辺りとか、600年前の宗王登極とか、覿面の罪の故事となった遵帝のお話とか。
あと、伏線(?)が残っている芳や柳の話しを新作としてやっていただければ、こんなに嬉しいことはない。
時系列的に白銀の墟 玄の月のあとだと魔性の子年表からははみ出ることにはなりそうですけど、風の万里 黎明の空 ~ 白銀の墟 玄の月と同時期に進行していたとすればギリセーフのはず。
全部を全部は描かず読者が想像で補う余地が残される点も小野不由美作品の良さなのは理解しているつもりですが、やはり芳や柳を描いた新作も願わずにはいられない。
なによりこの二国は恭が近いので、ぜひ珠昌様を絡めて出てほしい。なんなら珠昌様主人公でお願いしたい。
それかもう、年表継ぎ足してください。そんで新章突入しちゃいましょう。天帝に届け、この祈り。
まとめ:十二国記シリーズ、長編続編はもうない?
- 小野不由美先生自身、当初から白銀の墟 玄の月で完結する構想だったので、長編続編は期待薄。
- しかし外伝や番外編については否定されていない。シリーズとしても盛り上がっているので外伝に期待。
- 一旦完結でもいいので新章突入してください(欲望)。
インタビューなどの情報を整理すればするほど、魔性の子から続いた一連の十二国記本編は完結との情報ばかりでなんともさみしい限り。
しかしストーリーとして完結をみたことで人様にオススメできるようになったのは嬉しいところ。長いこと黄昏の岸 暁の天で宙ぶらりんだったので、なかなか人にすすめられずにいました。
これにてシリーズ完結にせよ、多くのファンが待ち望む新章突入があるにせよ、十二国記シリーズを生み落とし白銀の墟 玄の月までこぎつけてくださった小野不由美先生には感謝の言葉もありません。
ようやく暁を拝み、十数年さまよった黄昏の岸から離れられた心持ちです。生きててよかった。もし死んでいたら白銀の墟 玄の月で成仏するところでした。
2020年の短編集発売まではたとえ死んでも成仏するわけにはいかない。天帝に届け、この祈り。
ディスカッション
コメント一覧
腹ぺこクマさん
ホントにそれです。
完結だとしても、続編があるとしても、白銀〜を読めた事が本当に幸せ。
そして、珠晶さまの話には完全に同意(笑)私も読みたい!
個人的には、登極直後とか、王になった珠晶と利広のやり取りとか
利広の正体を知った時、どんな反応だったのかなぁ?とか
恭は27年も空位だったから、12歳の王なんて!
って、官吏の反発も凄かったんだろうなぁ…と想像したり
でも珠晶さまの事だから
「あたしはちゃんと昇山して、麒麟に選ばれたのよ!そういうあなた達は、昇山したの?
一度でも、昇山しよう。しなきゃいけないって思った事はあるの?」とか
「文句があるなら、供麒に言いなさい‼︎」とか言いそう。
んで、正論言われた官吏たちは何も言えず、悔しがる…
みたいな話があったら、最高だなぁと妄想してます(笑)
話題になってると言う事で、新たにシリーズに手を出して、ファンになってくれた方も多いみたいだし
私は、小説に限らず話題作とか人から勧められたモノは、よほどの事が無い限り手を出さない奴なので
新たなファンが増えてくれるのは、嬉しいです。
小野主上も、予想外の反響の大きさに「もうちょっと書こうかな?」と思い直して頂けたら…
とりあえず今は、2020年に出るという短編を楽しみに待ちましょう
2020年の、いつ頃?ってのが気になるところですが(笑)
>利広の正体を知った時、どんな反応だったのかなぁ?とか
相当ビビりますよね。でも星彩もらえて超ハッピーになってそう。王として騶虞に手が届く立場になっても、国庫が傾いててそう易々と贖うわけにもいかなかったでしょうし。
珠省様はなんだかんだ真面目なので騶虞で王宮抜け出したりはしないでしょうし、安心です。
>官吏の反発も凄かったんだろうなぁ…と想像したり
反発絶対スゴイですよね。完全になめられて謀反もありそう。その辺、頑丘が大僕として守ってくれたり?
>「一度でも、昇山しよう。しなきゃいけないって思った事はあるの?」
ここに通じるところでもあるんですけど、珠昌様が登極したあと親兄弟をどう扱ったかが気になるんですよね。
一国の王と昇山という責務を果たさなかった民という関係性で割り切りそうでもあるし、気にくわなくても朝の安定のために財力や影響力を利用するため取り込むしたたかさを見せそうでもある。
どちらとも言い切れないところも珠昌様の魅力かなって。ただ、珠昌様に奏上するとしてどっちの方向性でもビンタくらいそうでハラハラ。冢宰とか六官になろうものなら、慣れるまで万年胃痛がすごそう。仙だけど。
2020年、いつでしょうね。先行公開される分もあることですしある程度出来上がってるとは思うので、盛り上がりの覚めない早いうちに出してくると思う(思いたい)ところですけれど。楽しみ楽しみ。
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