白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻の登場人物まとめ【十二国記】

2022年2月11日

白銀の墟 玄の月の完結編 第三巻・第四巻発売でまであと少し!

第三巻・第四巻に向けて復習できるよう白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻の登場人物をまとめました。

まだ白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻を読んでいる最中の方向けにネタバレなしの登場人物一覧も設けているので、お気軽にご覧ください。

まだ白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻を読んでる途中でネタバレを避けたい方は、この後に続く一言まとめ(ネタバレなし)項のみご覧ください。

ここまでは白銀の墟 玄の月で初登場の新キャラは登場時点での特性や肩書き、以前より登場していた場合は黄昏の岸 暁の天時点での肩書きのみを掲載しています。

ただし、そこから先は第一巻・第二巻読了を前提に登場人物ごとの解説が入っているので注意。

登場人物一言まとめ(ネタバレなし)

十二国記白銀の墟玄の月第一巻、第二巻表紙

新潮社十二国記公式ページより ©小野不由美 / 新潮社

ネタバレなし登場人物まとめ。

白銀の墟 玄の月関連の全登場人物一覧を早見表として一言でまとめました。

一部白銀の墟 玄の月では直接登場しないキャラでも関連ありそうな人物もまとめてあります。

そういう意味では黄昏の岸 暁の天も含めて網羅したつもりです。それでも見当たらない登場人物は下記関連記事にならいるかも?

ここには特にネタバレは載せていないので、白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻を読んでる途中にご覧いただいても大丈夫です。

逆に言えば若干古い情報になっていたりもしますが、誰だっけ? っていうのを解消する使い方はできるはずちなみに名前(氏字)に * がついているキャラは白銀の墟 玄の月で新たに登場した新キャラです。

第一巻・第二巻をすでに読了済みで、第三巻へ向けて復習される方はコチラからネタバレゾーンへどうぞ。

驍宗(ぎょうそう)
泰麒 蒿里が選んだ泰王。乱の鎮圧に向かう最中、突如行方不明になった。
泰麒 蒿里(こうり)
阿選に襲われ角を失った戴国の麒麟。
李斎(りさい)
片腕を失いながらも泰麒を連れ戻した忠義の女将軍。
阿選(あせん)
泰麒を襲撃し、玉座を盗んだ簒奪者。元禁軍将軍。
計都(けいと)
驍宗の騎獣、騶虞。気性が荒く驍宗以外には懐かない。
飛燕(ひえん)
李斎の騎獣、天馬。気性が大人しく、泰麒と仲良し。
汕子(さんし)
泰麒の使令だった女怪。穢瘁により引き離された。
傲濫(ごうらん)
泰麒の使令だった伝説の妖魔 饕餮。穢瘁により離された
項梁(こうりょう)*
暗器の楚として有名な英章軍の師帥。
去思(きょし)*
瑞雲観の道士で、李斎らの驍宗捜索に同行し協力。
鄷都(ほうと)*
薬の行商人 神農。李斎に同行驍宗捜索に協力。
静之(せいし)*
臥信麾下で瑞州師右軍旅師だった武官。
耶利(やり)*
獣のような身のこなしが特徴的な謎の少女。
恵棟(けいとう)*
阿選麾下の幕僚。黄袍館を準備した有能な人物。
文遠(ぶんえん)*
麒麟専属の医者、黄医。
徳裕(とくゆう)*
文遠の部下。
潤達(じゅんたつ)*
文遠の部下。
嘉磬(かけい)*
鳴蝕により行方不明になった天官長 皆白の右腕。
伏勝(ふくしょう)*
阿選麾下の武官で、黄袍館の身辺警護を務める司士。
午月(ごげつ)*
阿選麾下で王の身辺警護を務める小臣。
駹淑(ぼうしゅく)*
王の身辺警護を務める新人の小臣。
平仲(へいちゅう)*
天官寺人として黄袍館に務める初老の官吏。
浹和(しょうわ)*
驍宗時代に泰麒の世話をしていた女官。
建中(けんちゅう)*
琳宇で坑夫らを派遣する高名な差配。
園糸(えんし)*
項梁とともに旅をしていた女性。
栗(りつ)*
3歳になる園糸の息子。
同仁(どうじん)*
東架の里宰。
回生(かいせい)*
ある武人を主公と仰ぐ少年。
葆葉(ほよう)*
玉の豪商 赴家と牙門観の女主人。
茂休(ぼうきゅう)*
老安の里宰輔。
菁華(せいか)*
老安にいた元瑞州師の女性兵卒。
友尚(ゆうしょう)
阿選麾下の武人で恵棟の有人。
成行(せいこう)
阿選麾下の武人。
品堅(ひんけん)*
もとは別の将軍麾下だったが、現在は阿選麾下で帰泉の上官。
帰泉(きせん)*
阿選麾下で阿選を崇拝している。
杉登(さんとう)*
もとは巌趙麾下だった武官だが現在は品堅の麾下。
士遜(しそん)*
阿選偽朝において瑞州州宰。
立昌(りっしょう)*
阿選偽朝の天官長。
哥錫(かしゃく)*
阿選偽朝の地官長。
懸珠(けんしゅ)*
阿選偽朝の春官長。
叔容(しゅくよう)*
阿選偽朝の夏官長。
橋松(きょうしゅう)*
阿選偽朝の秋官長。
案作(あんさく)*
阿選偽朝の冢宰輔。
淵澄(えんちょう)*
瑞雲観の道士 去思の師匠。足腰が悪い。
短章(たんしょう)*
鄷都の上司にあたる神農領宰。
如翰(じょかん)*
琳宇の道観、浮丘院の監院で喜溢の上司。
喜溢(きいつ)*
琳宇の道観、浮丘院の道士(都講)。
習行(しゅうこう)*
琳宇付近の神農を務め、静之とともに行動していた老人。
余沢(よたく)*
習行の若い男弟子。
梳道(そどう)*
石林観の道士で褐色の道服を着ている。
巌趙(がんちょう)
驍宗配下の将軍で、驍宗とは兄弟のように親密だった。
英章(えいしょう)
驍宗配下の将軍で、阿選謀反により文州で軍を解散し潜伏。
剛平(ごうへい)*
阿選の謀反後、姿を消した英章軍師帥。
俐珪(りけい)*
阿選の謀反後、姿を消した英章軍師帥。師帥としては新参。
基寮(きりょう)*
阿選謀反の前に文州師将軍に異動した元英章軍師帥。
臥信(がしん)
英章と同じく驍宗配下の将軍で、阿選謀反後潜伏。
証博(しょうはく)*
潜伏中、轍囲を守るため駆け付け戦死した臥信軍師帥。
霜元(そうげん)
英章と同じく驍宗配下の将軍で、阿選謀反後潜伏。
正頼(せいらい)
瑞州州宰で泰麒の養育係だったじいや。
潭翠(たんすい)
泰麒の護衛官だった寡黙な男。
詠仲(えいちゅう)
驍宗時代の冢宰だったが、鳴蝕の怪我が元で死亡。
皆白(かいはく)
驍宗時代の天官長だったが、鳴蝕によって行方不明に。
宣角(せんかく)
驍宗時代の地官長だったが、阿選により処刑されている。
張運(ちょううん)
驍宗時代に春官長だった官吏、謀反後の消息不明。
芭墨(はぼく)
驍宗時代の夏官長だったが、阿選により処刑されている。
花影(かえい)
驍宗時代の秋官長だった女性で、李斎と袂を分かって以来消息不明。
琅燦(ろうさん)
驍宗時代の冬官長だった女性で、阿選謀反後の消息不明。
醐孫(ごそん)
風の海 迷宮の岸で登場した「俺が戴王だ!」の人。
呂迫(ろはく)
風の海 迷宮の岸で登場した中日までご無事でされた人。
朽桟(きゅうさん)*
函養山を縄張りとする新興土匪のリーダー。
赤比(せきひ)*
土匪で朽桟につぐ副リーダー。
仲活(ちゅうかつ)*
脚の悪い土匪の老人。
杵臼(しょきゅう)*
気弱だが快活な土匪の老人。
斂足(れんそく)*
かつて朽桟を取り立てた土匪の大御所。
翕如(きゅうじょ)*
斂足の部下で朽桟の兄貴分だった土匪。
驕王
奢侈の限りを尽くし、国庫を傾かせた先代泰王。

以下、白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻を読み終わっていることを前提に、ネタバレありで登場人物を解説しています。

まだ第一巻・第二巻を読んでる途中の方はご注意。

第二巻終了時点での登場人物まとめ(ネタバレあり)

白銀の墟玄の月第一巻・第二巻時点での登場人物・組織図

登場人物まとめ。

ここからはネタバレあり。上記画像に載っていない面々も解説していますので、目次もうまく利用ご利用ください。

なお、上記画像はデカすぎるので縮小したものです。画像そのものかコチラをクリックで高解像度版が新しいタブで開くので、細かく見たり保存したい方はそちらをご利用ください。

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主人公・主要人物

まずは主人公ともいえる主要人物4人から。

全体で見るとキャラが多いので、少し上に設置した目次もご利用ください。

泰麒 蒿里(こうり)

十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻表紙の泰麒

十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻表紙 新潮社公式ページより ©小野不由美 / 新潮社

深謀遠慮の麒麟が目指す先とは。

本作 白銀の墟 玄の月の主人公戴国の麒麟。胎果の麒麟かつ世にも珍しい黒麒。戴国驍宗から賜った字は蒿里。

紆余曲折を経て驍宗を王に選ぶも、わずか半年程度で阿選に襲われ記憶を失いながらも蓬莱へ逃れていたところを、景王 陽子を中心とした多くの国の王と麒麟らの協力によって帰還。

隻腕の李斎とともに戴に向けて出発したのが黄昏の岸 暁の天での話。

白銀の墟 玄の月ではいよいよ戴に帰り、いまや敵地である白圭宮へ堂々と正面から乗り込むなどかつての泰麒の姿からは想像もつかない胆力と行動力で同行した項梁や見守る蓬莱の人々の度肝を抜いてくれた。

主人公だけど今回に限ってはなにを考えているのか全くわからないブラックボックス。しかしすべての鍵を握る存在でもある。

角と麒麟としての力は戻りつつあるのか、阿選に王気があるのは本当なのか、使令はいずれ手元に戻すことができるのか。

そして、驍宗や李斎と再会できるのか。戴国の民に幸せを分けてやることはできるのか。すべては天帝の上にたつ小野不由美様のみぞ知るところ。

字である蒿里の由来は、蓬山にある山のうち一つ、死者の魂が帰るとされる山からとられた。死んだ驍宗(?)を主公と仰ぐ回生と対比になっている。

なお、泰山(蓬山)と蒿里山は中国の実在し、死者が還る山としての信仰がある点も同じ。

「私は皆様に差し上げる奇蹟がありません。……角を失くしました。ですから、私はもう麒麟とは言えないのです」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻より

驍宗(ぎょうそう)

十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻表紙の驍宗

十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻表紙 新潮社公式ページより ©小野不由美 / 新潮社

正当なる王は、いまの戴なにを思う。

戴の王様。氏字は乍 驍宗(さくぎょうそう)。姓名は朴綜(ぼくそう)。委州の北領郷出身。白綿の盾の故事により、轍囲と強い絆で結ばれている。

前作 黄昏の岸 暁の天作中で行方不明になったまま6年経ついまにいたる。

白銀の墟 玄の月作中、李斎らの捜索により、

  • 小さな廟付近の林でで一般人と思しき人物と面会していたこと。
  • しんがりを務めていた霜元軍と合流すると言い残し行列を離れたこと。
  • 赤黒い鎧で揃えた赭甲集団25名の選卒25名を伴っていたこと。
  • 前夜、臥信の元を訪ね15名の兵を借り、その兵らは夜のうちにどこへとなく姿を消していること。
  • 少人数で函養山や轍囲に繋がる山道を行ったが、数を減らし怪我をした赭甲集団だけが元来た道を戻って行ったこと。

が白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻で判明している。

先王が崩じる前から先を見据えてきた辣腕家で完璧超人と思われていたが、白銀の墟 玄の月作中で驍宗は自分自身を

  • 自分は人望も面白みもない人間で、みなが信頼してくれているのは出した結果
  • だからこそ結果を出し続けなければならない

と李斎に語っていたことがわかった。急激な革命も厭わず直截苛烈に振る舞ってきたのはそうした焦りにも近い感情があったからと思われる。だからこそ、戴の現状は驍宗にとってはさぞかし辛いものだろう、と李斎らに心中を慮られた。

白銀の墟 玄の月の作中途中までは白雉が落ちておらず生きてはいるとされていたが、急転直下、第二巻ラストで老安で死んだとされる。

が、死んだ人物は驍宗ではないと考察できる伏線が多く、生きている可能性が高い。その辺り詳しくは下記記事にて。

「特にそれを恥じてはいない。世の中には私のようす面白みのない者もいる、ということだ。だが、そんな者でも結果を積み重ねれば人はついてくる。もしも私に人望がある、というのなら、それは結果が作ってくれたのだ。だから、常に結果に向かって急ごうとする」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

李斎(りさい)

十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻表紙の李斎

十二国記 白銀の墟 玄の月 第三巻表紙 新潮社公式ページより ©小野不由美 / 新潮社

李斎の忠節は報われるのか。

驍宗朝において瑞州師将軍だった女性で、白銀の墟 玄の月における主人公の一人。

氏字は劉 李斎。天馬 飛燕を騎獣としている。昇山した際に誼を結んだ縁から泰麒とは気安く関係で、白銀の墟 玄の月作中では泰麒の姉のようだとも評された。

もともと驍宗麾下の者ではないが、泰麒つながりで蓬山で驍宗とも誼を得て信頼を受けている。

実際、泰麒への思い入れは強く、泰麒のためとあらば本末転倒になってしまうことがある。また武人らしくまっすぐな性格で、融通が利かず危なっかしい一面もある。同行する去思や鄷都が優秀でよかった本当に。

阿選謀反時に叛逆者の濡れ衣を着せられて逃亡して以来、現在においても公式には手配されている身分。

黄昏の岸 暁の天では利き腕を失いながらも命からがら慶に飛んで助けを求めた彼女の熱意が、七国もの王と麒麟にくわえて蓬山の玉葉や西王母の心すら動かし、泰麒の帰還を成し遂げた。

利き腕を失ったことは武人として致命的と思われていたが、項梁いわく片腕でも十分使い手の部類に入るとの評。

しかし牙門観の造りや炉を使っていることを去思に指摘されるまで気づかないなど、将軍職としてちょっとどうなの? と思う場面も。いくらなんでも王師将軍ともあろうものが道士が勘づくようなことに一切気づかないとは……

とはいえ李斎は読者の分身として説明を受ける立場であることが多い役回り。そのために割りを食ってる感は否めない。

ほかにも融通が効かずヒヤヒヤする場面も多かったが、そのまっすぐさが結果的にプラスに働くことも多いので一概に弱点といえないかもしれない。

第一巻・第二巻では空回り気味に終わったが、第三巻・第四巻でも驍宗と泰麒のため、なにより戴の民のため活躍してほしい。

「御覧の通り、なんとか生き延びた。—―多くを犠牲にはしたが」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻より

阿選(あせん)

白銀の墟 玄の月第四巻表紙の阿選

十二国記 白銀の墟 玄の月 第四巻表紙 新潮社公式ページより ©小野不由美 / 新潮社

本当に単なる簒奪なのか。

6年前謀反を起こし、驍宗と泰麒を行方不明に追い込んで玉座についた簒奪者。氏字は丈 阿選。姓名は朴高(ぼくこう)。

黄昏の岸 暁の天では角を、本作白銀の墟 玄の月では腕をと二度にもわたって泰麒に斬りつける天をも恐れない不遜の輩。

しかし、阿選麾下だった者たちの目線では驍宗に嫉妬していた風でも、しいて玉座につきたかったわけでもように見える。そういう意味では、動機も行動もよくわからない。

現在では王と一部の天官だけが立ちいることができる六寝にこもり、ほとんど出てくることもない。その天官らも魂が抜けたような傀儡だらけという。なにかを奏上しても「 聞いた 」と答えるだけで具体的な返答はなし。

政を放擲している辺り噂に聞く柳の劉王とも重なる部分があるが、果たして……

ちなみに琅燦が「 通常なら阿選は絶対に王になれない 」としているのは、姓の問題と思われる。詳しくは下記リンクよりどうぞ。

「帰還を許す。――誰か、手当てを」

阿選はそれだけを言って、踵を返した。

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

李斎ご一行

伏線の仕込み役に徹し、物語上では空回りに終わってしまった李斎ご一行。

しかし去思や鄷都ら超有能な新キャラが発掘されており、今後の彼らの活躍にはいやでも期待がかかります。

※李斎ご一行と言いつつ李斎自身は主要人物項にて解説しているのでここにはいません。

去思(きょし)

瑞雲観の若い道士。李斎組で期待値ナンバーワンの超有能若手。

瑞雲観は阿選を偽王ではないか、といち早く糾弾し誅伐されており、去思はその数少ない生き残りである。

東架に匿われていたところを偶然から泰麒、李斎、項梁らに出会い、のちは李斎に同行して驍宗の捜索を手伝った。

数少ない瑞雲観の生き残りの一人として、江州の凌雲山 墨陽山ふもとの里 東架に匿われながら監院 淵澄のもと丹薬の製造に励んでいた。

見習いだったのが瑞雲観を焼け出されたあとに道士としての資格を得るも、匿われていた立場上、道服には袖を通せていなかった。しかし東架出立に際し、淵澄の心遣いにより憧れだった黒い道士服に袖を通すことができた。以後、各地の道観の顔つなぎ役として李斎らの役に立っている。

道中は少しでも役に立ちたいと項梁から棍術を習い、土匪や追い剥ぎなど素人相手であれば十分に通用するレベルにまで達している。一国の禁軍師帥に師事してのこととはいえ、短期間での上達っぷりは筋がいいといえる。

また、牙門観では全体が戦において守りやすいよう改築していること、炉があることを見抜く観察眼・洞察力も見せている。

「心からお帰りをお待ちしておりました……!」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻より

鄷都(ほうと)

道観が作った丹薬を売り歩く神農。泰麒、李斎らの驍宗捜索において案内役として淵澄が呼び寄せた。神農としての担当エリアは馬州から文州にかけてで、函養山のある琳宇付近は彼の庭。

驍宗と同じく委州出身。驍宗が生まれたのは北嶺郷で、鄷都の出身は南嶺郷とほど近い。淵澄がほかの神農ではなく自身に案内役を任せたのもそのためだろう、と謙遜していた。

しかしこれが完全に謙遜とわかる超有能な人物。丹薬を扱って各地を巡る職柄、あちこちの道観との結びつきも強いうえ朱黄とも付き合いがある。

おかげで広い情報網と物流網を持ち、李斎らの驍宗捜索に大いに役立った

困っている民がいれば無料で品を渡すこともあり、施しをして商売になるのか、と問われれば「 私だってたまには商売を休まないと 」などと笑って言ってのける好人物。コミュニケーション能力も高い。

「いえいえ」と鄷都は笑う。「私はそのためにこの荷を背負っているのですから」

そう明るく言って、鄷都は先に立って街道を進みながら背負った笈筺を示した。

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻より

静之(せいし)

第二巻の後半で李斎らに合流した臥信軍師帥 証博麾下の旅帥

驍宗の昇山に臥信の随従として同行しており、その縁で李斎とは面識があった。

臥信軍解散のあとは証博らとともに潜伏していたが、阿選の誅伐を受ける轍囲を守るため駆けつけ静之だけが生き残った。

深手を負っていたところ、偶然行きあった習行に保護され匿われていた。ほとぼりが冷めて習行とともに各地を回っていたところ、偶然李斎らと出会い行動をともにすることに。

誰か重症の者が匿われていると思われた老安を訪ねるも一歩遅く、匿われていた驍宗らしき人物はすでに死んだあとだった。

「習行、殺してくれ……!」

「お前にはその権利がある。民の全てに、俺を八つ裂きにする資格がある」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

泰麒・瑞州一派

項梁とたった二人で敵地白圭宮に乗り込んだ泰麒を州侯に戴く瑞州の一派。

反阿選派・新驍宗派に阿選麾下も入り混じって混沌としてはいるが、阿選麾下出身の者らも一国の台輔として泰麒を守ることには一致。

泰麒本人は主要人物項にて。なお、浹和と平仲は正確には瑞州所属ではない(多分)。

(浹和は女御でおそらく天官府所属で、平仲の保衡は所属不明ながら役割的に秋官っぽい?)

しかし、主に泰麒のいる黄袍館に務めているので瑞州一派としてまとめました。

項梁(こうりょう)

楚 項梁。もとは禁軍中軍将軍 英章のもとで師帥を務めていた武人

鉄笛、飛刀などを使う暗器の達人で暗器の楚と呼ばれ高名だった。しかし本人曰くもともとは戈や槍が得意で、剣が得意なら暗器など使わない、としており、苦手な剣の代替品として使っている様子。

英章が軍を解散し潜伏させたあと、連絡網を取りまとめていた俐珪が連絡不能になり英章軍全体との連絡が途絶。

また、一人ずつ潜伏するよう命じてあった項梁麾下の旅帥のうち3人が阿選に反旗を翻そうとし殺され、部下らとの連絡網も危険で接触が取れずにいた。

そんな折に出会った園糸親子を隠れ蓑に各地を回っていたところ、天の配剤か戴に帰還して間もない東架で李斎らと出会った。

李斎とは直接面識はなかったが、阿選の謀反より前に英章が用意した仔馬を渡す役を担い、まだ稚かった泰麒に直接顔を会わせている。

泰麒と合流後は鄷都らが用意した騎獣 狡に乗った。泰麒が李斎のもとを離れる際に同行し、ともに白圭宮入り。阿選にも対面している。

実質敵地といえる白圭宮でも大僕として一人で警護を続けていたが、泰麒に認められ瑞州州宰となった恵棟に心身の消耗を心配され、謎の少女 耶利をもう一人の大僕として受け入れた。

おずおずと口にした園糸に、しない、と項梁は笑った。

「俺が戻るときには、もう旅をする必要はないんだ――この国の誰も」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻より

耶利(やり)

無位無官ながら白圭宮を自由に闊歩する謎の少女。白銀の墟 玄の月 第二巻で泰麒の大僕に任じられ昇仙した。

耶利が主公として強く仰ぐ何者かの命により、泰麒の警護のために遣わされた。

それまでは仙籍にも入っていない少女で、その幼い姿のため当初は項梁もこれで大丈夫か? と訝ったが、立ち居振る舞いだけで実力を認められた。

獣のような身のこなしで高所をもものともせず立っていられる身体能力と度胸がある。作中では言及されていないが、半獣かもしれない。

登場した当初は官服ではなく裾や丈の短い私服を着ていた。軽装ながら素材には朝服より高価な生地が使われているらしい。しかし泰麒の大僕として昇仙し官位を与えられているので黄袍館ではさすがに官服に着替えているかも?

軟禁中の巌趙と面識があり、驍宗の騎獣 計都がいる騎房の前で気安く話している。

計都に興味があるようだが、目の前に座る巌趙に対し耶利は少し離れた場所から声をかけるだけにとどめていた。驍宗麾下だった巌趙とは違い、計都は耶利には慣れていないものと思われる。

「前言を撤回します。お断りです」

「どちらを主と呼ぶかは、私が決めます。それで良ければ」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

恵棟(けいとう)

元は阿選麾下の幕僚だった人物。白銀の墟 玄の月第二巻終了時点では泰麒が治める瑞州州宰に任じられ瑞州の体制を整えている有能な人物。

王としての実権を握った阿選によって夏官長大司馬に任じられた叔容が、自身の右腕たる小司馬に推挙するほど有能な幕僚。

しかし承認は出ながらも肝心の辞令がおりず、先に阿選軍幕僚職を辞していたため無位無官のまま歳月を過ごしていた。

泰麒の帰還に際して阿選の使者より下大夫の綬を渡され、泰麒の王宮帰還に必要な全てを采配せよ、と漠然と指示されたことをきっかけに、黄袍館の用意など自身の権の届く限り誠心誠意泰麒の身の回りを整えた。

阿選麾下という複雑な立場で項梁らには警戒されながらも、誠心誠意泰麒を台輔として仕えて信頼を勝ち得た結果、瑞州州宰に任じられた。

阿選や泰麒らの無茶振りにも動じず、小一時間で黄袍館を見繕って泰麒の住まいとして用意したり、瑞州州宰に任じられる前から警護問題の解決のため水面下で働きまわるなど、高い実務能力も持った優秀な人材であることがうかがえる。さすがは阿選軍の幕僚。

自身も含め主な麾下らも巻き込まず謀反に及んだ阿選に対し恐ろしさを感じている。友尚とは親しい友人関係。

「私も目に余ると思っていました。早急に体制を立て直します」

そう言ってから、恵棟は真っ直ぐに項梁を見た。

「台輔を蔑ろにすることは許されません」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

文遠(ぶんえん)

白圭宮で麒麟専門の医官、黄医を勤める人物。

文遠ってなんか見覚えあるなぁ、って思ったら、三国志に登場する武将 張遼の字だった。文遠の姓名ってまさか……?

ありがとうございます、と言う泰麒の手を、文遠は老いた手で包む。

「……御礼申し上げるのは私のほうでございます。本当によう戻られました」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

徳裕(とくゆう)

黄医である文遠の部下。帰還したばかりで腕を負傷している泰麒につきっきりで看護するよう申し付けられている。

泰麒らが白圭宮内で信頼できる数少ない人員として、体調管理だけでなく細かな世話や警護にも気を配っており、疲労がうかがえる。

同輩の潤達もいるとはいえとんだブラックな職場環境で務めている割りには作中での扱いは小さく、存在感はさほどない。

黄袍館において立ち働くなか、茫然としていることも増えているよう。平仲や鳩のこともあり、心配なところ。

潤達(じゅんたつ)

徳裕の同僚の医官。文遠によって徳裕に続く形で黄袍館へ派遣された。

徳裕以上に影が薄い。

嘉磬(かけい)

驍宗朝で天官長だった皆白の右腕だった人物。天官の次席にあたる小宰だった。

白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻では直接登場こそしないものの、終盤には泰麒によって瑞州天官長に任じられている

阿選が実権を握ってからは天官小宰の地位を剥奪されていたが、沙汰を待てを言われて以来放置され無位無官だった。官位がなく侍従がつかない状況だったため、自費で従僕や私兵を雇っていた。

泰麒の警護体制に問題を感じていた恵棟が相談したところ、人員不足のため心苦しいとしながらも泰麒のために3人送ると約束している。

泰麒の大僕として耶利を推挙した人物も嘉磬とされる。が、耶利の主公は数人を経由させてねじ込むと言っていたので、耶利の主公=嘉磬ではないと思われる。

伏勝(ふくしょう)

もとは阿選軍の旅師。現在では泰麒の私的な場所での警護を担当する瑞州司士

泰麒に認められ瑞州州宰についた恵棟からの依頼で警護の補強をすべく、午月へ人選を依頼している。

阿選麾下のため泰麒らが気を許していないが、伏勝自身は司士としての役割を忠実にこなすべく、警護体制補強に際して午月に「 難しい空気でも挫けず職務を果たしてくれる人員を推挙してほしい 」と頼んでいる。

ほかにも午月に相手にしてもらえず若干へこんでいた駹淑を気遣うなど、大らかでいい上司。

ただし軍学出身ではなく叩き上げの武官のため、書類仕事は苦手。

「たとえ台輔が我々を信用してくだらなくとも、我々は一命を捨てても台輔をお守りせねばならない。台輔の敵は多い。張運らだけでなく」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

午月(ごげつ)

白銀の墟 玄の月時点で泰麒の護衛官、小臣を務める阿選麾下の武官

現在の禁軍左軍将軍 成行麾下の旅帥だったが、5年ほど前から阿選の護衛を勤める小臣として白圭宮に配されていた。

本来小臣は王の私的な空間で護衛を勤める立場だが、阿選が六寝にこもりっぱなしで小臣に警護を任せていないため、大した働きもできずにいた。何度も理由を問い働かせて欲しいと懇願するも無視され続け、すでに諦観の境地にいたっている。

泰麒の帰還後は瑞州小臣ととして泰麒の護衛を任されるも、白圭宮の人員を信頼しない泰麒側に警戒され、傍では仕えられず黄袍館の周りを固めて警護するのみ。

このことも、阿選軍の旅帥だった自分は警戒されて当然と捉え諦めていた。それでも、ほかの小臣には素行が悪いものが多いなか仕事には手を抜いてはおらず、巡回など任務を粛々とこなしている模様。

同じく小臣の駹淑とは同輩ではあるが、旅帥から小臣になって5年経つ午月の方が経験も軍人としての階級も午月の方が上。屈託なく阿選や泰麒のため働きたいと意気込む駹淑に対し、簒奪者である阿選麾下としては複雑な気持ちを抱いている。

しかし恵棟が瑞州州宰の地位について本格的に警護体制の補強が入る際、瑞州司士の伏勝にこの空気でも挫けずに泰麒のために働ける人員を選抜して欲しいと依頼されると、国にとっては王よりも麒麟の方が重要と考え、例え相手が阿選であろうとも泰麒を守ることを決意する。

駹淑(ぼうしゅく)

昨年卒帥になったばかりの若手士官。瑞州小臣として泰麒の警護についている。

当初は午月とともに阿選の小臣だったが、泰麒が帰還し黄袍館に入ったのち瑞州小臣に異動。

まだ若手のためか職務以外に興味がないためか、阿選の簒奪や泰麒を斬ったことなど宮中の事情・利害関係には明るくない。そのため屈託なく自身の職務を遂行したいと考えている。

粛々と職務を遂行する午月を悪く感じてはおらずむしろ慕ってすらいる。しかし諦観している午月としては駹淑の屈託のなさには複雑らしく、若干避けられ気味。

南部の凱州出身で実家はそれなりに裕福。子どもっぽい理由と恥じてあまり話したがらないが、軍出身の王として立った驍宗に憧れて武官を志し、軍学に入った。。

もともと軍学出身であれば卒帥まではいけるものだが、新兵として配属された隊の両長が優秀だったこともあり、彼も優秀と見なされて卒帥までトントン拍子で昇進し、小臣に抜擢され白圭宮に入った。

特に功を上げてもいないのにと謙遜する謙虚な性格。武術などにおいてこれといって得意なこともないが特別苦手なものもないらしく、また伏勝の書類仕事も手伝うなど、なんでもそつなくこなす優秀な若手感が滲め出ている。

「……これといった働きもしていないのに王師の両長です。言われるままに右往左往していたら昨年、卒長になってしまいました」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

平仲(へいちゅう)

白圭宮に到着した泰麒らを出迎えた天官寺人。初老の小柄な人物。

もとは官吏に関するする諸事を司る司声だったが、突然寺人を命じられ、路門で待つ「 台輔を名乗る人物を世話せよ 」と漠然とした無茶振りをされたかわいそうな人物。

泰麒が本物の台輔だとわかってからは、慣れない仕事でありながら浹和とともに泰麒の身の回りの世話を務めた。

驍宗の朝が始まるにあたり、これから良い時代が来ると考え妻を得ていた。また、宮中の里木に願いやっと授かった息子は現在二歳。黄袍館に移ってからは泰麒とともに軟禁状態で家族にも会えておらず、正院ではなく前院に住まわされる待遇に不満を抱いていた浹和に対し、私はむしろ自邸に帰りたい、とぼやいている。

疲れのためか様子がおかしいと気づいた項梁のすすめで一度自邸に帰って以来、黄袍館へ顔を出さず。心配になった泰麒の使いで浹和が邸を訪ねたところ、家人に「 平仲はもとの司声の上役に当たる保衡になった 」と告げられ、にべもなく門を閉められている。

邸には鳩の鳴き声が響いた書かれおり、平仲もまた宮中を徘徊する傀儡になったことが示唆されている。

「……どこかに鳩がいるんだよ」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

浹和(しょうわ)

驍宗朝で典婦功として泰麒の世話をしていた女官の一人。四十前後の女性。

阿選が実権を握ったあとは多くの者が白圭宮から追い出されるなか、浹和だけは仙籍すら入れない奚としてなんとか白圭宮に踏みとどまっていた。

現在の白圭宮のなかでは幼い頃の泰麒の姿を知る数少ない人物。泰麒帰還後は天官の女御として泰麒の身の周りの世話に務めている。

が、実態としては天官長の立昌の部下であり、ひいては張運の間者。泰麒や項梁らの動向を報告している。

黄袍館へ移ってからの待遇など、なにかと不平不満が多い。

「またお世話をさせていただけるなんて、これ以上の幸せはございません」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻より

市井の人々

建中(けんちゅう)

坑夫派遣を生業とする差配人

琳宇における李斎らの拠点となる家を手配した人物でもある。無口な屈強そうな男で、普段から気性の荒い坑夫らを相手にしているからか、威圧的な雰囲気を持つ。

函養山の土匪の長 朽桟に李斎らが捕われたときには出向いてきて解放を交渉した、寡黙ながら情にも篤い男。

差配人としては有名らしく、坑夫はあまり必要ないはずの函養山を治める朽桟も知っていた。神農とも浮丘院ともつながりがある。

「ーーここからさほど離れていない。こちらだ」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻より

園糸(えんし)

息子の栗、項梁とともに各地を旅をしていた荒民の女性。二十代半ば。

阿選側についた承州州侯に反旗を翻し、失敗した州宰を匿ったことにより、里ごと焼かれて住処と夫を亡くした。

仕方なく放浪しているあいだに、栗の姉だった子供も一人亡くし、その埋葬を手伝ってくれた縁で項梁とともに旅することになった。

項梁に亡き夫の面影をみいだし、また栗もよく懐いており、項梁とはずっと一緒にいたいと考えているが、項梁の口ぶりから時がくれば自分のもとを去るであろうことを感じ取っていた。

泰麒と李斎と出会ったことで項梁との旅は終わり、園糸と栗は東架に預けられた。

泰麒らと出会ったときに崖(実際には大した高さではなかった)から落ちかけたところを、泰麒に足を支えてもらうという畏れ多い体験をしている。

「戻ってきたら、また送って行ってくれる……?」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻より

栗(りつ)

園糸の息子。園糸らが焼け出された当初は乳飲み子だったのが、放浪のうちに3歳までに成長した。

3歳にして過酷な道中を自力で歩き野宿に耐えるタフネスさを持つ。

実質養父となっている項梁の跡をつぎ、将来は頼もしい兵卒として戴を守る兵士になってくれるかもしれない。

同仁(どうじん)

去思らを匿っていた東架の里宰。痩せた壮年の男。

危険を承知で瑞雲観の人々を里に匿っていた道を知る人物で常に前向きに里の皆を励ましていたが、すでに天に見捨てられた戴のこと、みなにどう希望を持たせたものか、そもそも希望をもたせていいものかと悩んでいた。

泰麒の帰還で報われたと言える。

「天はお前たちを見捨てたのだと、どうして言えましょう。善行は天に届かず、献身は地に投げ捨てられたのだと、そんなことを察してほしくはなかった」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻より

回生(かいせい)

老安で死んだ驍宗と思われる武人を世話していた少年。回生はその武人から与えられた字。

妖魔に襲われた回生自身と父を助けてくれた武人に心酔し、世話をした。父はこの時の怪我が元で亡くなっている。

武人の怪我が完治し、また回生が大きくなったら一緒に阿選の手から白圭宮を取り戻すと約束していたらしい。

回生がまだ小さいこともあり剣や武術の稽古までは至らなかったようだが、短剣の研ぎ方を習っていた。

回生は武人が死んだのは李斎らが琳宇付近で驍宗を探しているという噂を聞き及んだ老安の大人たちが薬を盛ったためと考えている。

白銀の墟 玄の月 第二巻ラスト、武人の形見となった懐刀を手に老安を出奔している。

「俺が莫迦だった。そんなの信じて、あの時、俺が毒味をすれば良かったんだ。そしたら主公は死なずに済んだ」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

葆葉(ほよう)

戴では知らない者のいない玉の豪商 赴家の首領にして牙門観の女主人。氏字は赴 葆葉。

色白でふっくらとした慈母を体現したかのような女性だが、身につけた豪華すぎる衣装と宝石類、油断ならない目つきが外見を裏切っている。去思曰く女傑。

表向きは隠居していることになっているが、実態としてはまだ赴家の舵取りを続けているとされる。

もとは道観の院のひとつだった白琅の牙門観を買い取り、玄圃(西王母の庭園?)にすると公言してはばからない。

しかし去思が気づいたところでは牙門観を戦において防備に適した造りに改築しており、本来禁止されている金属精錬のための炉もある模様。

なにかしらたくらみがありそう。

「私などが賢しげに義を唱えてそれを拒んだところで、ろくでもない役人がろくでもない商人の手に渡すだけですからねぇ。どうせまき散らされる財なら、私の手の中に落ちたほうが少しはましなことに使えるってもんです」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

茂休(ぼうきゅう)

第二巻ラストで死んだ驍宗とされる武官を匿っていた老安の里宰輔

茂休が習行に冬器を求めたことでかねてから誰かが匿われているのでは? と考えていた習行と静之が老安を訪ね、匿われていた驍宗らしき武将が死んだことを知ることとなった。

「あまり御自身を責められませんよう」

茂休は灯火を静之のそばに置いた。

「新王が立つ、という噂を聞きました。全ては過ぎたこと。新しい御代が来るのです」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

菁華(せいか)

同じく兵卒くずれの者たちと老安に潜伏していた元文州師の女性

阿選による文州誅伐の際に反民隠匿の嫌疑を受けた経緯で逃亡している。

注文されていた冬器を収めるため習行とともに老安を訪ねた際、静之は菁華ともう一人元兵卒の男と会っている。が、李斎と出直してきたときにはすでに老安にはいなかった

李斎らが到着する前日に老安を立っているらしいが、驍宗らしき人物が老安の大人たちによって毒殺されたと回生から聞いた静之は、菁華らも老安の人々によって葬られたのではないか、と疑っている。

「ーー同類のようだ。所属を訊いてもいいか」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

阿選・張運一派

琅燦(ろうさん)

驍宗朝では武具や造作などを司る冬官長を務めていた女性。阿選朝において三公 太師。三公となったいまでも実質冬官長の任を兼務している。

黄昏の岸 暁の天作中では重臣らが気弱な泰麒を慮って驍宗に対する陰謀の噂をシャットアウトしていたなか、そういった陰謀の噂も泰麒の耳に入れていた人物。驍宗になにかあれば真っ先に動くべきは台輔だから、という至極真っ当で論理的な理由からだった。

驍宗が登極する前からの麾下でありながら、阿選朝においては重臣である三公 太師の地位についている。さらに挿絵では東洋ファンタジーらしからぬドレッドヘアー姿をみせ、突然のイメチェン(?)で読者を二重に驚かせている。

阿選本人の眼前で呼び捨てのうえで簒奪者呼ばわりし、驍宗を「 驍宗様 」と呼んでいるが、阿選は歯牙にもかけていない様子。

寝返って忠をつくしているわけではなく、なにかしらの利害関係で阿選と協力関係にいるものと思われる。張運は阿選に望めば冢宰の座にもつけそうなのに、と実権のない相談役 三公に甘んじている琅燦の態度を訝っている。

もともと冬官府の誰とでもおよそ話が通じないことはないほど広く深い知識を持つ女性とされていたが、白銀の墟 玄の月 第二巻では天が非常に教条的であることを見抜いていたり、阿選が王とする泰麒の欺瞞(?)を「 これは天意による取引 」と解釈したり、天意についても明るい様子を見せている。

ちなみに白銀の墟 玄の月作中で「 簒奪などの非道を抜きにしても阿選が王に選ばれ得ない理由がある 」と思わせぶりな発言もしているが、恐らく阿選の姓が問題。詳しくは下記リンクよりどうぞ。

「ほかの手段を取って驍宗様を排すれば、天は大手を振って天命の在処を変えるだろう。そのとき、阿選はその中に含まれない。なにしろ、天を悩ませている張本人だし、しかも阿選にはほかにも選ばれ得ない理由がある」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

張運(ちょううん)

阿選朝においてナンバーツーともいえる冢宰の地位にいる官吏。驍宗朝では春官長だった。

三国志の猛将みたいな名前だが文官である。そもそも春官は祭祀や式典、学校関係の制度を司る官吏。

もともと驍宗麾下でもないため忠誠心もなく、阿選が玉座に座ってからはおもねる形で阿選側につき、冢宰の地位を手に入れた。

阿選が無気力になり六寝にこもるようになってからは具体的な指示がもらえないため、反民が出れば徹底的に潰すかつての阿選の方針をトレースするのみで具体的な施政は行えていない。結果的に戴は民が放置されている状況となっている。

阿選が次王に立てばそのまま自身は安泰、もし阿選以外の王が立ってもすべて阿選の責任にして自身の権勢を守ることを考えている。

風の海 迷宮の岸終盤で驍宗がクビにしようとした派手好きな春官長が張運なのか長らく不明だったが、白銀の墟 玄の月作中で当時張運は春官の次席である小宗伯で、件の春官長ではなく部下だったとわかった。

泰麒に諫められ一度は見送られた人事だったが、結局驕王が任じた春官長はクビにして次席にいた張運が繰り上がりで昇進し、春官長になっていた模様。

そういうとこじゃないかな、驍宗。

「これまで通りにするしかあるまい。どうせ主上は、聞いた、と仰るだけだ」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

友尚(ゆうしょう)

阿選麾下の武人で現在禁軍右軍将軍恵棟とは朋友で、白銀の墟 玄の月作中では泰麒の身の回りに関する相談も受けていた。

作中では天意など将軍が知るべきことでもなく、自身が阿選の部下であることに変わりはないとしながらも、阿選が次の王になることは信じられないし、玉座に座っている現状は間違いだとの考えを恵棟に語った。

阿選が禁軍将軍に据えるほどだから有能なのだろうが、その辺に服を脱ぎ散らかすだらしない一面がある。

せめて下官を雇えばいい、と助言する友人 恵棟の助言も「 面倒 」と一蹴した。相当のものぐさ。

「何がどうなっているのかは分からないし、たかだか将軍の俺には分かる必要もないことだ。俺は阿選様の麾下で、それは変わらない」

言ってから、友尚は寂しげに笑った。

「けれども、いまの事態は間違っている」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

成行(せいこう)

現在の王師、禁軍左軍将軍。名前が出てくるのみで詳細は不明。

元の禁軍左軍将軍が巌趙なので、将軍職を解かれた巌趙の後釜として据えられたものと思われる。

現在泰麒の護衛として小臣を務める午月はもともと成行軍の旅帥だった。

士遜(しそん)

張運の息がかかった瑞州州宰

白圭宮に帰還し、せめて瑞州の民を救済すべく州侯として働こうとする泰麒の命を、張運の指示でのらりくらりと無視していた。

その不遜で怠慢な態度、なにより民への救済が遅れることに耐えかねた泰麒により罷免された。今作で不人気投票を行ったら首位候補な登場人物。

「やはり台輔には御休息が必要でございましょう。台輔の御療養の妨げにならぬよう、拙はしばらく身を慎んでおります。—―御免」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

立昌(りっしょう)

張運のもとで働く阿選朝の六官。天官長太宰。元は春官長のなかでも最低地位の府吏で、異例の出世とされる。

天官は宮中での王の世話役だが、肝心の阿選が傀儡の天官で周りを固めて六寝に籠っているため、天官長としての仕事は特にできていない。

「我々には阿選様のお気持ちなど、知りようがない」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

哥錫(かしゃく)

張運のもとで働く阿選朝の六官。土地や戸籍などを司る地官長大司徒。

懸珠(けんしゅ)

張運のもとで働く阿選朝の六官。春官長大宗伯。

祭祀や宮中の行事を司る職だが、阿選は王として務めるべき祭祀どころか六寝に籠って出てくることすらほとんどなく、困惑している。

叔容(しゅくよう)

阿選朝における夏官長大司馬。もとは阿選軍の軍司だった。

辞令がおりずはたせなかったが、夏官長に召し上げられる際に恵棟を次席の小司馬に推挙していた。

「まったく何も動かない。ーーこれは些か可怪しくはありませんか」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

橋松(きょうしゅう)

阿選朝における秋官長大司寇。法を司る。

「言い争っても仕方なかろう。いずれにせよ、阿選様が動かねば国は動かないのだ」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

案作(あんさく)

阿選朝のいける冢宰輔。冢宰となった張運直属の部下。

天意について語る琅燦の会話に唯一ある程度くらいついており、張運より有能そう。

品堅(ひんけん)

驍宗朝時代に阿選軍で師帥を務めていた武人。驍宗が行方不明時に引き連れていた阿選軍を指揮していた。

もともと生え抜きの阿選軍麾下ではない。

李斎は「 存在感がない 」としているが、項梁は「 実直 」と評しており、実際部下である帰泉は品堅の人品を高く買っている。

驍宗が行方不明になった当時、驍宗が引き連れてきていた阿選軍を師帥として代表する立場だった。が、阿選による謀反のことは知らされておらず、知ったのはすべてが済んで鴻基に帰還したあとだった。

なお、驍宗は行方不明になる少し前に小さな廟近くの林で一般の民と思しき人物と面会しており、李斎はこれが品堅の紹介によるものと考えているが、詳細は不明。

阿選が自分たち麾下らを放置してい現状に心を痛めながらも「 自分たちになにか非があったのだろう、いずれまた必要となるときのために精進しよう 」と、同じく意気消沈する帰泉を慰めている。

巌趙麾下の師帥だった杉登を自身の隊に受け入れており、瑞州州宰となった恵棟が泰麒でも信用できる人材として杉登を瑞州側に引き抜きたいと相談され、快諾している。

帰泉(きせん)

阿選麾下の武人で品堅の部下

特別優秀なわけではなく失敗もする不器用な性格だが、その愚直で不器用な面を阿選や帰泉らに「 得難い人材 」として高く評価されている。

驍宗よりも阿選こそが王に相応しいと考えているが、現実として阿選が簒奪者であること、自身は直接的に行動していないとはいえ簒奪者側に加担していることに引け目を感じている。

そうしたことも阿選の鼓舞さえあれば、と考えていたが、肝心の阿選は六寝にこもりきりで特に指示もなく面会もできないことに心を痛めていた。

その後、帰還した泰麒により阿選が次王に指名されたと聞き、「 やはり阿選こそが正当の王だったのだ 」と喜びながらも、若干の違和感をぬぐえずにいる。

杉登(さんとう)

阿選の謀反が起こるまえは巌趙軍で師帥を務めていた武官。現在は品堅の麾下として阿選朝の軍に組み込まれている。

杉登に対し引け目を感じている品堅や帰泉を「 いまは国の大事なのだから 」と逆に励ますなど、できた人物の模様。

しかしさすがに思うところはあるようで、阿選次王の報には複雑そうな顔をしていた。

瑞州州宰となった恵棟が泰麒にとっては敵の多い白圭宮において数少ない信が置ける人物として名をあげていたので、第三巻・第四巻では泰麒に近しい瑞州の官として登場するかも。

津梁(しんりょう)

名前のみ登場。凱州将軍だったが、阿選の謀反後王師として編入された人物。現在の官位は不明。

駹淑はこの異動についてきたとされる。

道観・神農

瑞雲観や石林観など道観と、丹薬を売り歩く神農の面々。

去思や鄷都など李斎とともに旅している登場人物は李斎ご一行項にて解説しています。

淵澄(えんちょう)

瑞雲観の老師で去思の師匠。数少ない生き残りの一人。瑞雲観の道院のうちひとつをまとめる監院だった。

生き残った監院6人のうち筆頭。残る5人の監院は他州へと散り、棟架には淵澄だけが残った。

瑞雲観虐殺のあと困窮と寒さにより腰を痛め、歩くだけでなく立ち座りにも支障があり、介助が必要。

去思が泰麒、李斎らとの同行を申し出たことを快諾し、道士になっていたものの道服を着れずにいた去思に自身の道服を贈った。

また、各地の道観へ理由は聞かず去思らに協力して欲しいとの依頼する文を用意し、また神農にも連絡し李斎らによる驍宗捜索の便宜をはからせた。

短章(たんしょう)

鄷都が巡っている地域の神農站をとりまとめる宰領。第一巻・第二巻では名前のみ登場。

短章の名を聞いた順行らの様子から、瑞雲観の丹薬を各地へ送り出している短章やその一派は神農界隈で少なからず敬われているとわかる。

如翰(じょかん)

浮丘院の監院。淵澄の文により泰麒の帰還を知り、訪ねてきた李斎らに協力することを約束し喜溢をつけた。

しかし、荒民を受け入れている実態で行政に目をつけられたくないため、李斎らが浮丘院を拠点に活動することを内心快く思っていない。

如翰が喜溢を李斎らにつけたのもどちらかと言えばお目付役としての意味合いが強かった。

白銀の墟 玄の月 第二巻の終盤では阿選が新王に選ばれるとの噂を耳にし、泰麒の身柄は李斎らがおさえているさずでは、と不快感を示している。でも喜溢にあたるのはどうかと思う。

喜溢(きいつ)

琳宇付近で驍宗を捜索するためやってきた李斎らの世話を仰せつかった浮丘院の一員。道士の教師役である都講の位。

あまり李斎らの活動をよくは思っていない浮丘院の思惑のなかにありながら、喜溢自身は李斎に対して最大限協力的に振る舞った

行方不明になる直前の驍宗を目撃した荒民らを李斎に紹介したり琳宇各地へ同行して便宜をはかるなど、李斎らの驍宗捜索において多く貢献している。

習行(しゅうこう)

琳宇付近をまわり丹薬などを納める神農

静之を保護し匿っていた。

余沢(よたく)

神農である習行の若弟子。時おり登場するが影は薄い。

静之が李斎と行動をともにするに際して、下働きでもいいので自身も国を救う手伝いをしたいとして李斎らに合流。

以降、琳宇に拠点をおき驍宗を探す李斎らの身の回りの世話をしている。

沐雨(もくう)

天三道の道観、石林観の主座。名前のみで登場はせず。

喜溢曰く信仰心厚いたいねんにご立派な方。

もともと石林観は先王と結び付きが強かったが、それは過去の話でいまは関係ないとされる。阿選と通じることはないだろう、とされている。

しかしいまでも王宮と結び付きがあるようで、内々ながら阿選が泰麒に選ばれたとの情報が伝わっていた。

梳道(そどう)

白幟を保護する石林観の道士。褐色の道服を着ている。

白銀の墟 玄の月 第二巻の終盤、阿選が次王に選ばれたとの噂を聞いた李斎達が噂を確かめるため赴いた石林観で出会った。

李斎らが驍宗側であることに気付いてか、最後には気遣う様子を見せた。

「軽々な絶望も軽々な歓喜も民の平静を蝕む。噂などというものはしょせんは正体のない化物のようなもの。惑わされず、落ち着いた心で天に守護を祈っておいでなさい」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

驍宗配下

巌趙(がんちょう)

驍宗朝における禁軍左軍将軍で、現在は白圭宮に軟禁されている。

巨軀と豪放磊落な性格を持つ武人で、李斎からみてまっとうで堅実な戦をする武将。驍宗登極前から部下だった一人で、驍宗との絆は兄弟のように親しかったとさえ言われていた。

阿選の謀反が発覚した当時、巌趙軍は唯一鴻基を離れていなかった驍宗配下の王師だったが、そのまま阿選朝の王師として組み込まれた。

巌趙本人は白圭宮に軟禁状態で、禁門近くの厩にいる驍宗の騎獣 計都の面倒をみている。

黄昏の岸 暁の天作中では、次期禁軍将軍と目される巌趙を飛び越して驍宗が将軍に就いたため恨みを持つとの噂があるとされたが、白銀の墟 玄の月作中では耶利に簒奪者である阿選への怒りをぶつけており、ただの噂だったと知れる。

「あの兇賊は盗人だ。玉座を盗み民を屠った。王の資格などあるはずがない!」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻より

英章(えいしょう)

驍宗直属、禁軍中軍将軍だった武人。古くから驍宗麾下だった一人で、文州で起きた乱に真っ先に投入されていた。

皮肉屋かつ気分屋な一面があり、クセのある性格だが心酔している部下も多い。麾下として項梁、俐珪、剛平らを師帥に持つ。俐珪が入る前には基寮も師帥として英章配下だった。

白銀の墟 玄の月劇中では驍宗にポロっとタメ口きいちゃったりするあたり、付き合いが長いだけあって多少の気安さもあるようだ。しかし、驍宗を尊崇していることは間違いない。

ほか、正頼とは互いに悪し様に言い合って憚らない仲の良さ。

最悪は自腹を切るつもりで略奪された古伯の義倉を埋めるなど民想いな面もある。軍事だけでなく所領の運営もうまいらしい(驍宗麾下の重臣であれば当然とか)。

阿選の謀反が明らかになった際、驍宗が立つときに備え雌伏するため逃げると宣言

驍宗のために戦う気がある者は時がきたら馳せ参じると誓約せよと言い、署名させた幕内の地図にはビッシリと名前が書きこまれた。

「耐えて雌伏し、主上が立てば必ず駆けつけると誓約せよ。その気のない者は好きにすればいい。ーーただし、阿選に下る者は、決戦までの命数と思っておくんだね。主上と阿選が戦うことがあれば、私は必ずその者の首を貰う」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻より

俐珪(りけい)

英章軍師帥で項梁の同僚

地元に強いつながりをもつ俐珪こそが最も深く安全に潜伏できるとして英章軍全体の連絡網を任されていたが、不測の事態に陥ったか行方知れずで連絡がつかない。

そのため、英章軍全体が互いのつながりを断たれてしまっている。

5人いた師帥のなかでももっとも年若く新参。かつて師帥だった基寮が文州師将軍として異動したため師帥に引き上げられた。

まだ師帥になって3ヶ月足らずで、英章に対しては気後れをしている。

剛平(ごうへい)

英章軍麾下で師帥を務めた武人。項梁、俐珪の同僚で、同じく英章軍を離散時に潜伏している。

古くから英章軍におり、項梁、基寮とともに轍囲の戦いに参加している。当時は卒帥だった。

基寮(きりょう)

名前が出てくるのみで特に登場はせず。

項梁、剛平らとともに英章軍師帥だったが、文州師将軍に異動した。入れ替わりで入った師帥が俐珪。

古くから英章麾下として驍宗に仕えており、轍囲の戦いにも参加している。

阿選麾下である友尚いわく、一緒に飲むと愉快な気のいいやつらしい。文州師将軍に異動して以来、後特に言及されていない。

臥信(がしん)

驍宗朝で瑞州師右将軍を務めた。英章ら同様、阿選の謀反を知ったあとは軍を解散させ自身も姿をくらませている。

驍宗が行方不明になったあとに土匪の乱鎮圧のため文州に投入された。ある程度平定されたのち、命じられるまま瑞州右軍を半分に割いて鴻基へ帰還させた。臥信自身も鴻基へ帰還すべく準備をしていたところで阿選の謀反を知り潜伏。

このとき、臥信は正頼と結託して国庫にあった国幣(蓬莱における小切手的なもの)を運び出したとされる。

驍宗登極前から麾下だった武官で、驍宗の蓬山昇山にも同行している。当時から配下だった静之も伴っていた。

付き合いが長いだけあって、驍宗本人に「 飢えた虎の横にいるようで傍に寄るのが嫌 」と直接指摘するなど、ある程度気安い距離感を持つ。

証博(しょうはく)

臥信軍の師帥で静之直属のの上官

軍が解散になったあと20人ほどで潜伏していたが、阿選の誅伐の対象となった轍囲を守るために駆けつけ戦死

霜元(そうげん)

驍宗朝における瑞州師左軍将軍。現在は潜伏し消息不明。

李斎からみて堅実でまっとうな戦をする武将。巨躯ではないが上背のある偉丈夫でどことなく品格のある佇まいを持っている。泰麒は「 西洋の騎士のよう 」と形容している。

短編の冬栄では泰麒の漣国訪問に同行した。

黄昏の岸 暁の天では阿選謀反後の安否について特に語られていなかったが、英章ら同様文州で軍を解散し、潜伏していると明かされた。

土匪の乱ではなにか思惑があったらしき驍宗に15人の兵を貸している。

驍宗行方不明後、芭墨に命じられ一度白圭宮に戻るも再度文州へとんぼ帰り。そのまま別途起きた承州の乱鎮圧へ向かうよう命じられ、向かっている途中で阿選の謀反が明らかになり、そこで軍を解散し行方をくらましている。

特に黄昏の岸 暁の天で描かれた状況を考えると驍宗麾下の裏切り者として霜元がもっとも怪しい最有力容疑者だが、果たして。

正頼(せいらい)

泰麒ファンにはお馴染みのじいや。驍宗朝では瑞州州宰であると同時に教育係の傅相。実質泰麒のお世話役である。そして尻フェチ。

もとから驍宗麾下の軍吏。白銀の墟 玄の月でいう幕僚の立場だったと思われる。かなり有能な文官だったらしい。

イタズラ好きでよく泰麒や潭翠をからかって遊び、ときには驍宗にこってり絞られている。

阿選が泰麒を襲撃した際の鳴蝕の被害に巻き込まれ、潭翠に担がれた状態で登場したが、比較的軽傷で済んでいた模様。

白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻では阿選の謀反発覚時に臥信と結託して国庫の国幣を盗み出した罪で鴻基にて捕われているとされた。また、死んではいないが厳しい尋問だけでなく拷問を受けていることも示唆されている。

泰麒としては瑞州の施政のため信頼できる正頼の力を借りたいと恵棟に申し出たが、いまだ叶ってはいない。

もしお時間ありましたら、答え合わせが近づいてお尻がそわそわしてきた下記記事もご覧になってください。

「腕白小僧の首根っこを摑まえて、がみがみ言うのが私の役目なんですから。たまには大変な悪戯をしでかして、尊いお尻をぶたせてくれなくちゃ、じいやには楽しみがありません。」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 華胥の幽夢 冬栄より

潭翠(たんすい)

驍宗朝において泰麒の専属護衛官である大僕を務め、常日頃から傍で仕えていた。現在の消息は不明。

驍宗が潭翠一人が泰麒に付き添えばいいよう体制を組んでいた模様。

しかし、よりによってその潭翠が正頼に呼び出されて離れ、そのスキに泰麒は阿選に斬られてしまった。

泰麒の漣国訪問にも同行している。物静かで滅多に表情を変えない寡黙な男ゆえに、よく正頼のイタズラのターゲットにされていた。

阿選謀反後、驍宗弑逆の濡れ衣を着せられた芭墨とともに白圭宮を逃げ出したとされる。のちに芭墨は委州にて処刑されたとされるが、潭翠の消息は特に聞こえてこない。

「わかりません。おそばにいなかったのです。一体、何が起こったのですか」小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 黄昏の岸 暁の天より

花影(かえい)

驍宗時代の秋官長。もともと驍宗麾下ではなく元は藍州の州宰。驍宗登極後に抜擢された。

温情派の官吏だったため秋官長として粛清に携わることに負担を感じていた。この際、同じく驍宗麾下ではなかった縁で李斎に相談し、誼を得ている。

のちに李斎伝いで「 秋官長に向かないからこそ性急すぎる自身の重しになってほしい 」との驍宗の真意を知り、以後も夏官長としての職務を全うしている。

阿選の謀反後は王宮を離れ藍州へ。そこで逃げながら各地を巡っていた李斎と出会うも、藍州州侯も病んでしまったために二人で逃亡。

まだ阿選側についていないとされる垂州州城へ向かう途中、景王登極を噂を聞き罪を前提に慶へ向かうとする李斎と袂を分かった。その時点で垂州州侯もすでに病んでいたことが明らかにされた。

以後消息不明。白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻でも登場していない。

宣角(せんかく)

驍宗が地官長に任命していた重臣の一人。もとから驍宗の麾下だったわけではなく、若い文官とのことなので、相当に有能な官吏だったと思われる。

阿選が実権を握ったあと処刑された。

黄昏の岸 暁の天では鳴蝕が起きたあとの混乱の最中、彼よりも上位の者たちが死亡・行方不明・重症で宣角が朝の筆頭として指揮をとるべき序列だった。が、驍宗の武断の朝の指揮をとるには力不足として固辞していた。

芭墨(はぼく)

驍宗が夏官長に任命していた重臣。もともと驍宗麾下の一人。

ある意味軍事政権ともいえる驍宗の朝において軍事を司る夏官の長を任されたあたり、かなり驍宗の信を得ていたと見える。

阿選が実権を握ったあと、芭墨が李斎をそそのかして驍宗を弑したとの嫌疑をかけられ白圭宮より逃亡。しかし逃亡先の委州にて処刑されたとされる。

詠仲(えいちゅう)

驍宗朝における重臣中の重臣、冢宰

元は驍宗麾下ではなく垂州侯だったのを冢宰に取り立てた辺り、よほどの人物だったと推測される。

しかし影薄くほぼ登場しないまま、鳴蝕時に負った重症がもとで亡くなったとされる。

皆白(かいはく)

驍宗朝の天官長大宰

黄昏の天 暁の天 泰麒が起こした鳴蝕の際に行方不明になり、6年後の白銀の墟 玄の月でもそのまま見つかっていない。倒壊した三公府にいたことが目撃されており生存は絶望的。

白銀の墟 玄の月二巻で言及された嘉磬の上司。

土匪

朽桟(きゅうさん)

現在函養山付近を牛耳る土匪のリーダー。6年前の土匪の乱そのものに疑問を感じ、距離をとっていたおかげで誅伐を受けずに済んでいる。

もともとは文州南部の貧しい家に生まれ、重税に耐えかねて一家まるごと戸籍捨てて鉱山に流れ着いたのち、落盤による父親の死や妹の病死を受けて残る家族を養うため16歳にして土匪になった。

恵まれた体格で頭角を表して斂足に山を紹介され、甘拓を治める土匪の首領となった。

自身は戸籍がないため子供を設けることはできないが、死んだ土匪仲間の妻や子供、親兄弟らを引き取り総勢11人の大家族をなしている。

が、彼自身によればそもそも土匪全体が身内みたいなものらしい。

「ちょいと顔を貸してもらおうか」と、朽桟は凄みのある笑みを浮かべた。「俺は街がごたごたすんのは嫌いでね」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

仲活(ちゅうかつ)

函養山を捜索する李斎らについてきた土肥の案内人

片足の曲がった老人だが、小型でずんぐりした老馬をうまく乗りこなし、人馬一体、機敏に動いていた。

樵の家系に生まれ自身も子供の頃までは樵をしていたが、税を払えずに坑夫に。しかしすぐに落盤に遭い、家族を養うため土匪に身をやつした。

三年前に函養山にでた妖魔に女房子供を食い殺されている。

長い間連れ添うと、女房なんて空気みたいなもんで、ろくに顔なんて見ちゃいない。髪を結っても化粧をしても気がつかねえ。このぶんだと他人にすり替わっても分からないんじゃないかい、なんて言われてさ。なのに……女房が残した手を見たとき、すぐに分かったんだ」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

赤比(せきひ)

朽桟の右腕の土匪。朽桟が函養山に行ってる間、岨康を任されていた。

杵臼(しょきゅう)

土匪の一味で、気弱だが快活な老人。岨康から函養山までの二日の道のりを、苦にする様子もなく李斎らを案内した。

この案内のときが杵臼と李斎らが会う二回目だったらしいが、一回目がどれのことだかイマイチわからない。

美味しいご飯作ってくれそうな氏字なのでおそらく食堂の老人が杵臼?

斂足(れんそく)

朽桟が土匪になった頃、鉱山のトップに君臨していた首領。甘拓を紹介されるなど世話になったこともあり、朽桟が頭が上がらなかった人物。

そのため斂足から翕如の仕事を手伝ってほしいと言われた時は断れず、朽桟は少なからず土匪の乱に関わることになる。

驍宗が行方不明になって阿選が実権を握り土匪が徹底的に誅伐された際にその座を追われ、のちに暴漢に襲われて死亡している。口封じの暗殺だったと思われる。

翕如(きゅうじょ)

立場的に同格ながら朽桟の兄貴分だった土匪だった人物。土匪の乱の際に何者かから命令を受け、朽桟に細かな指示を出していた。

驍宗が行方不明になったあと、阿選軍により誅伐を受け叛逆者として処刑されている。

騎獣・使令

計都(けいと)

驍宗の騎獣で十二国世界でもっとも優れた騎獣とされる騶虞(すうぐ)。驍宗が襲われたときには騎乗していなかった様子で、驍宗を探す風に陣営へ戻ってきていた。

現在は白圭宮 禁門近くの厩舎につながれ主人の帰りを待っている。

一国を一日で駆け抜けるほどの俊足と勇猛さも併せ持ち利口。素晴らしく長く不思議な五色に輝いて見える尾と、信じられないほど複雑で美しい色をした目を持つ虎のような妖獣。

騶虞には黒ベースに白縞のものと白ベースに黒縞のものがいるが、計都は白い体に黒い縞。

驍宗が黄氏の弟子になって何度も黄海に入り自分で捕えて自分で慣らした。ただし、騎商のようには行かず、驍宗以外の者には慣れない。さすが驍宗、騎獣からして李斎とは対照的である。英章曰く主人に似て偏屈。

巌趙のような驍宗麾下はともかく、耶利はあまり慣れていないらしくあまり近づけていなかった。

とら

黄昏の岸 暁の天のラスト、慶の金波宮を出立する泰麒と李斎に延麒が貸し与えた騎獣。計都と同じ騶虞。

作中では泰麒がとらに乗り、李斎は飛燕に乗って移動していた。計都とは違ってよく馴らされているらしく、許しさえあれば誰でも乗せてくれる模様。

たまが寂しがるからきちんと帰してくれよ、と延麒に託された。無茶して死ぬんじゃないぞ、との言外の叱咤激励か。

泰麒とともに白圭宮に赴き、現在は白圭宮の厩舎につながれている模様。

飛燕(ひえん)

李斎の騎獣。翼が生えた大きな犬のような姿をした天馬。李斎を守るために身体をはるなど、飼い主に似た忠義もの。

穏和で慣れやすい性格で、偏屈な驍宗の騎獣 計都とは対照的。

蓬山で昇山者らの泰麒が飛燕に目を留めたことで李斎との縁を結ぶキッカケとなった。泰麒は李斎ともども飛燕をかなり気に入っており、毎日のように撫でに行っていた。

狡(こう)

吾輩は狡である。名はまだない。白銀の墟 玄の月劇中、騎獣を持たない項梁のため鄷都が用意した。

巨大な犬に似た姿で全身に豹のような模様があり、頭には牛のように曲がった短い角を持つ。

金持ちが見栄で持つような騎獣ではなく、軍の空行師でもよく見かける、武人が実用のために持つ騎獣。

荷の止まった戴の状況でこんなにいい騎獣をよく用意できた、と項梁は感謝しきりだった。

白圭宮についてからはとらとともに白圭宮の厩舎につながれていると思われる。

汕子(さんし)

女怪として泰麒の面倒を見ていた使令。黄昏の岸 暁の天で泰麒とともに蓬莱へ流されたのち、穢瘁と怨嗟を受けすぎていたため西王母によって泰麒から引きはがされた。

以降の消息は不明。泰麒の角が治り麒麟としての力を取り戻したら帰ってくるのだろうか。

女怪の性か泰麒が卵果だったころに蝕によって目前で流されてしまった経験からか、泰麒への執着が非常に強く、泰麒を守るためとなると見境がなく行動してしまう。

その行動がかえって泰麒を傷つける結果になっていることも多い。

傲濫(ごうらん)

泰麒の使令だった伝説の妖魔 饕餮

王ですら手に余る妖魔とされ、およそ麒麟に折伏できるような思われていたため、泰麒が折伏した際には多くの人々を驚かせた。

妖力甚大で好きな姿に転変することもできる。

黄昏の岸 暁の天で鳴蝕を起こした泰麒とともに蓬莱へ流され、そこで集めた穢瘁と怨嗟がひどく、西王母によって泰麒から引き離された。

その他

耶利の主公

白銀の墟 玄の月 第二巻で登場した正体不明の人物。敵の多い白圭宮にいる泰麒の身を案じ、自身につき従う耶利に泰麒に仕え守るよう頼んだ

これを受けて耶利は大僕として泰麒のもとへ赴いている。

驍宗を驍宗様と呼び簒奪者の阿選が王になるのはあり得ないとしたり泰麒と利害を違えることはないと発言するなど、驍宗派閥の人物であることは間違いなさそう。

無位無官の私兵である耶利を白圭宮内を自由に往来できるようにしたり大僕として送り込むなど、阿選朝にあってもそれなりの権限を持っている人物と思われる。

耶利を泰麒の大僕として推挙した者として皆白の元部下である嘉磬の名があがっているが、この人物は複数の人物を通して耶利を泰麒のもとへ送り込むと発言していたので、少なくとも嘉磬は正体ではないと思われる。

「台輔のそばに辿り着いたら、台輔の命に従うよう。私のことは考えなくていい」

小野不由美著 新潮文庫 完全版十二国記 白銀の墟 玄の月 第二巻より

前泰王 驕王

驍宗が登極する前の王。物語にはさして登場していないが、なにかと名前が出てくる御仁。

かなりの贅沢家で派手好きだったため、いまでも戴は貧乏国家。金ぴかの鎧を着て喜んでいたらしく、オシャレ番長の氾王は悪趣味と切り捨てている。実際に驕王へ玉を収めた葆葉によれば「 王のために用意した 」と言えば品も見ずにすべて買い上げていたらしい。

奢侈な王ではあったが無能な官吏を重職に据えることはなく、革命や急激な変化のない前例主義の穏やかな施政を行った。

最終的に麒麟の失道による崩御したものの施政自体は悪いものでもなかったらしく、124年も治世が行われている。ゆえに「 寝にあっては暗、朝にあっては明 」と評された。

文官を重用し軍吏は冷遇したと言われているが、当時超若手だった驍宗を禁軍将軍に据えたあたり見る目もあった模様。