屍人荘の殺人もカレーうどんも本格推理です【小説版ネタバレなしレビュー】

2021年8月21日

浜辺美波さん、神木隆之介さん、中村倫也さんと豪華キャストでの実写映画化で盛り上がる屍人荘の殺人

映画をご覧になった方もまだの方も内容が気になる方も多いかと思います。

さきに結論を。失礼ながらハッキリ言います。

おそらく、作者の今村昌弘先生は狂人の類です。

ネタバレなしとしていますが、屍人荘の殺人のレビューで避けて通れない特殊設定に触れます。

推理もの・ミステリーの根幹たるトリックや犯人には一切触れてないのでシビアな方でなければ問題ないはずですが、あらかじめご了承ください。

屍人荘の殺人のあらすじ

異色の特殊設定ミステリー小説、屍人荘の殺人

異色の特殊設定ミステリー小説、屍人荘の殺人。

まずは小説版 屍人荘の殺人のあらすじを軽くご紹介。ここまでは公式あらすじに書いてある程度のことのみ。

さえない大学生活を送っていたミステリ愛好会の葉村譲と会長 明智恭介のもとに、転機が訪れる。

女子大生探偵として数々の事件を解決してきた剣崎比留子が、ともに映画研究会の夏合宿に参加してほしいと依頼してきたのだ。

合宿初日の夜、想像だにしなかった"災厄"により紫湛荘に立てこもることとなった一同。

しかし休息もつかの間、夜明けには映研部員の一人が死体として発見される。

異常事態のなか、"災厄"にも人間にもなしえない密室で繰り返される連続殺人事件。

クセのある映研の面々といわくつきの夏合宿。そして剣崎比留子が葉村たちを呼んだ理由。

すべての謎を解き明かせるか。そして葉村は、明智は、比留子は生き残ることができるか。

波乱と災厄に満ちた夜がはじまる。

避けては通れないアレの存在

本作小説 屍人荘の殺人を語るため避けて通れないのがその特殊設定。

なんとゾンビが出てきます。

まさかのゾンビ×殺人推理ミステリー。とても相性がいい組み合わせとは思えない。

しかも本作屍人荘の殺人は作者 今村昌弘先生のデビュー作。

コレは期待と不安が入り混じる……!

ただの舞台装置で終わらないゾンビ

屍人荘の殺人は登場人物らが館に閉じ込められ外部との接触が断たれるいわゆるクローズドサークルもの。

読む前、あらすじで「 どうせゾンビが囲んでクローズドサークルになるだけの凡作だろ 」なんて考えてました。

な~にが凡作じゃ、お前の想像力が貧相ぼんくらなだけじゃい!

アッツアツのカレーうどんでも食って詫びろ!

本作、屍人荘の殺人はゾンビがいるからこそ作品が成り立つ推理小説です。

ゾンビと館の代わりに暴風雨と島では絶対に成り立ちません。

ゾンビがいるからこそ成り立つミステリー。どんなはなしか、ワクワクしません?

カレーうどんも屍人荘の殺人も本格推理

本格ミステリーなカレーうどん

カレーうどんは本格ミステリー。

誤解なきよう申し上げますと、カレーうどんも屍人荘の殺人も本格推理ものです。

カレーうどんは本格推理どころか本格中華ですらないとかツッコミが聞こえそうですが。

うどんをカレーに入れようと思いついた頭がミステリーでなくてなんだ。

ミステリーじゃなかったら軽くホラーだぞ。

間違いなく狂人の類です。

屍人荘の殺人も似たようなもの。

ゾンビ×ミステリーを成し遂げるなぞ、やはり作者の今村先生は狂人に違いない(失礼)。

(なぜここでカレーうどんが出てくるかはぜひ屍人荘の殺人本編でお楽しみを)

ゾンビが出てくる以上、屍人荘の殺人の分類はまぎれもない特殊設定もの。

しかし謎解き、推理内容、トリックは本格ミステリー小説顔負けです。

特殊設定だから本格ミステリーではないなんてことはない。そこは両立できると古事記にも書いてある。

その栄えある両立の実例として新たに加わった作品。それが屍人荘の殺人なのです。

エンターテイメント小説でもある

屍人荘の殺人は本格的なミステリー・推理ものであると同時に、エンターテイメント性も非常に高い小説です。

情報を読み解き推理をする本格ミステリー作品としてはもちろん、深く考えずハラハラドキドキ楽しむ小説としてもとても優秀。

本格的な推理ものでありながらゾンビ&殺人のシリアスだけに終始せず、各所に散りばめられたユーモアがメリハリをつくり読んでいて疲れません

特に主人公 葉村とヒロイン 剣崎比留子(かわいい)のケレン味のある微笑ましいやりとりはみてるだけでニヤニヤしてしまう。

お姉ちゃんな……そういうの見るの超好きやで……(おっさんだけど)

ちょっとした不満も

しかし屍人荘の殺人が100点満点ってわけでもなく、ちょっとした不満も。

ほんの一部ですが、ある登場人物の二面性に対して主人公の葉村が持つ評価が少し感情移入しづらかったな、と。

もちろん全く共感できないわけでもないのですが、デリケートな問題に対して描写のキレが少々ものたりなく感じます。

極端なはなし(男からみた)イケメン無罪ともとられかねない。

(イケメンが嫌いな私のひがみが大いに働いている点は否定できません)

とはいえ、決して本作の人物の感情描写が下手なわけではありません。

むしろ登場人物を記号化しがちな推理もの小説にしてはかなり丁寧に登場人物の想いを描いているといえます。

特に主人公 葉村の明智恭介への想いだとか、自身のとんでも設定にへの剣崎比留子の考え方など。

ネタバレなしなので深くは言えませんが、確かに普通ならそれはそう思うよな、と。

(コナン少年と金田一少年は比留子さんのことを見習ってすこしは自覚した方がいいと思う)

続編 魔眼の匣の殺人もすばらしい

異色の特殊設定ミステリー魔眼の匣の殺人表紙

屍人荘シリーズの2作目、魔眼の匣の殺人。

実は屍人荘の殺人はシリーズもので、続編2作目として魔眼の匣の殺人も刊行済み

率直なところ1作目の屍人荘の殺人がとても練られていたので、魔眼の匣の殺人はあまり期待していなかったんですよ。

屍人荘の殺人が作者の瞬間最大風速で、ネタギレとか燃え尽きなんじゃないかと。

しかし杞憂でした。ぶっちゃけ屍人荘の殺人より魔眼の匣の殺人の方が面白いレベル

魔眼の匣の殺人もレビューしていますので、ご興味ある方は下記リンクよりどうぞ。

実をいえばさきに述べた屍人荘の殺人の不満点は、読んでいた当時はさほど気になっていなかったんです。

登場人物もある程度記号化されていて覚えやすい親切設計なので、その辺はあまり深く考えないでいいかなと。

しかし続編の魔眼の匣の殺人を読んで思い直しました。

魔眼の匣の殺人では人間のピュアな部分とどす黒い部分が、物語の展開に絡んで無駄なくドラマティックに描かれています。完璧です。

それだけに、屍人荘の殺人のいまいち感情移入できなかった部分を思い返してしまった、という……

原作レビューまとめ:屍人荘の殺人もカレーうどんも本格推理

これだけ原作小説を持ちあげておいてなんですが、日々の忙しさにかまけて映画版 屍人荘の殺人を見逃しました。

気づいたら軒並み上映終わってた。

浜辺美波さんと中村倫也さんのコンビはドラマ崖っぷちホテル!で観てよかったし、神木隆之介さんが出るだけで当たりだろうし、原作小説もとてもよかったのでぜひ観に行きたかったのですが。

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