兇人邸の殺人 ネタバレなし感想・レビュー

2021年9月20日

屍人荘シリーズの最新作、兇人邸の殺人 読了

さて比留子さんの体質はどんな災いを持ってくるのか、そして今回もカレーうどんは本格ミステリーか!

ストーリーそのものやミステリー小説としての根幹であるトリックなどのネタバレなしです。が、作品を紹介するにあたってどうしても特殊設定などについてお話が出ますので、あらかじめご了承ください。

特にさすがにこれは、って部分は文字をぼかして隠しています。ぼかし文字はタップ or クリックで表示されちゃうので、押すなよ! 絶対押すなよ!

狂人間の殺人の特殊設定は○○

サイン本買っちゃった!

シリーズ伝統、兇人邸の殺人の特殊設定は巨躯の超人殺人鬼です。

超人といっても星条旗スーツの某キャップみたいなやつじゃなくて、人を見るや見境なく殺しにかかる狂人。どちらかといえばハルクのようなイメージ。

屍人荘の殺人でゾンビ、魔眼の匣の殺人で予言ときて、次は常人では絶対に敵わない圧倒的な力を持つ化け物。

一番近いのはバイオハザードに出てくるタイラントでしょうか。ゾンビから大分レベルアップしたなオイ。

緊迫感はシリーズ最高

シリーズ恒例、遠田志帆さんイラストの表紙もよき。

その点で兇人邸の殺人の緊迫感はシリーズ最高

屍人荘の殺人のゾンビはバリケードで簡単に排除できていたし、魔眼の匣の殺人の死の予言は本当に当たるか半信半疑な面がありました。

しかし、兇人邸の殺人は史上最悪の状況です。

シリーズではおなじみクローズドサークルもので、見つかれば即、死につながる化け物が闊歩する館に閉じ込められる比留子さんご一行。

しかも生存者同士にもそれぞれ利害があって脱出計画も一筋縄ではいきません。さらにこれまたシリーズ伝統、生存者のなかにしれっと殺人犯が紛れ込んでるっぽい。

主人公である比留子さんや譲でさえいつ命を落としてもおかしくない、屍人荘の殺人シリーズ内でもっともスリリングな作品に仕上がっているのです。

比留子と譲の関係、斑目機関を追う物語に進展?

実のところ、今作 兇人邸の殺人は特殊設定をうまく活かしたトリックで度肝を抜いた屍人荘の殺人、どっぷりミステリーだった魔眼の匣の殺人に比べると推理要素は少なめ。

さすが比留子さん! と唸る場面もありますけど、どちらかといえば事件解決よりも生存のためにやってる感じが強い。魔眼の匣の殺人でもそういう一面あったけど、今作は状況的により強め。

(逆にいえば、このスリリングな状況をミステリーとして描ききる今村さんの手腕がスゴい)

そういう意味ではミステリー要素は物足りなく感じる一面もあります。

が、兇人邸の殺人ではなんと比留子さんと譲の関係性&斑目機関を追う物語に、わずかながらも進展があるのです!

屍人荘の殺人で描かれた感染災害以降、巻き込みたくない比留子さんに対し、ワトソンとして頼られたいけど足を引っ張っている自覚のある譲くんの間に微妙な溝があったんですが。

そんな二人があんな、あんなことにーっ! っひゃー!

さらにさらにさらに、斑目機関を追う全体の物語に進展があ理想な雰囲気も出ています。まだまだ続いて欲しいけど、同時に早く先が気になる。名探偵コナンかよ!

屍人荘の殺人の読み直し推奨します

すでにシリーズ読破中の方も一作目である屍人荘の殺人を読み直しておくことをオススメします。シリーズ初めての方も二作目はともかく一作目の屍人荘の殺人だけは先に読んでおくことを推奨(ネタバレになるのでなぜかは読んでのお楽しみ)。

屍人荘の殺人シリーズは一応事件的には一話完結なので必ずしも順番通りでなくても楽しめますが、兇人邸の殺人に関してはある理由から、一作目 屍人荘の殺人を読んでおくことをオススメします。

私は屍人荘の殺人を最後に読んだのがかなり前だったので、一瞬ついていけませんでした。ぜひ。

屍人荘の殺人を最近読んだばかりである程度細かいところまで憶えてる、って方はいいと思うんですが、しばらく前だなー、って方は読み直しておくとより楽しめます。

まとめ:兇人邸の殺人 ネタバレなし感想&レビュー

正直なところ、私としては二作目の魔眼の匣の殺人や屍人荘の殺人の方がよかったな、って印象です。

しかし本作 兇人邸の殺人、三作目にして比留子さんと譲の関係に進展がありそうなのは見逃せないポイント。斑目機関の方もストーリー進みそうですし、ますます四作目が楽しみ。

(進展あったと見せかけて次巻でしれっと元に戻るのも、ミステリーのシリーズあるあるだけど)