みなさん、白銀の墟 玄の月、第一巻から第四巻までお読みになりましたね。
はい。わかっています。みなまで言わないでください。
私、いろいろ謝らないといけません。
その前にまず一言。
潭翠はどこいった!?
本記事は白銀の墟 玄の月を全巻読破しての読後感想・雑感&無茶苦茶だった展開予想への反省会です。
第三巻・第四巻を含め白銀の墟 玄の月、十二国記全体のネタバレを含むので、まだ読了されていない方は注意。
正頼ごめんなさい正頼ごめんなさい
新潮社十二国記公式ページより ©小野不由美 / 新潮社
世が世なら切腹ものです。
まず全力で謝らないといけません。
正頼さんマジでごめんなさい。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
私、白銀の墟 玄の月発売前にこんな記事書いてたんです。なに謝ってんだって方は下記をご参照。
要は阿選の謀反は正頼が黒幕、って話。第二巻終了時点ではまだ目があったのですけれど、第三巻で「 んんん? 」となり。
国のため驍宗のため6年も拷問に耐えたうえ蒿里のために救出すら拒んで残った忠義の臣を黒幕扱いとか。
正直尻が気になりすぎて気が気でなかった。私もともと手足むずむず病持ちなんですけど、お尻にまで来たかと思うくらいむずむずしてた。
結局白銀の墟 玄の月終了までそこの大どんでん返しはなく。
これは庭の木に吊るされたうえでお尻にフルスイングされても文句言えない。
金属バット持参で白圭宮へ参ります。好きなだけお打ちになってください。メッタ打ちにしてください。
金属バットじゃ生ぬるいですか。釘バットですか。あ、でも血が出るヤツはダメですね。台輔に障りがありますね。
いずれにせよ私の尻は次回の蝕までの命。さらば私のマシュマロ尻。
ついでに霜元もごめん。絶対裏切り者だと思ってたから随分長いこと「 李斎逃げて〜! 」ってハラハラしてたよ。騎士様だもんね、裏切るわけないよね。
このサイトをご覧くださったみなさんにもごめんなさい
第三巻・第四巻の展開予想、ドヤりまくってたくせに外れまくりでした。普通に阿選から驍宗への反乱でした。
ごめんなさいすみません。
あっやめてぶたないで、私のお尻は正頼のものです!
予約済みです!
第三巻だったか、白銀の墟 玄の月本編で出た「 穿ちすぎ 」ってセリフがとても耳に痛い。誰より穿ちすぎていたのは私です。
驍宗の脱出手段に関しては自分でも「 いやいや、さすがにこれはねーよなwww 」って思いながら書いたのがドンピシャでちょっと笑っちゃいました。
王ともなれば自ら前線に立つことも少ないから必要性もないし、そもそも奢侈で傾いた戴の新王にそんなヒマもない。もう一頭の騶虞は諦めるしかないんだろうな、と思っていたらまさかの展開。まさに天の配剤ですね。
計都につぐもう一頭の騶虞が羅睺っていうのがまたいいですね。インド神話でお揃い。
今回の話が天意への謀反なのか、次作があるのか
私が予想していた展開とは違っていたけれど、小野不由美さんの仰っていたところの「 天へ抗う物語 」を描いたのが白銀の墟 玄の月って意味では合っていたように思います。
本来王になれない阿選が、泰麒の角を斬って驍宗を閉じ込めることで天意の履行を封じ、易姓革命に抗って偽王として立つ。確かに天意への抵抗ではあります。
ただ、そもそもが謀反を起こすだけでも天への叛旗ではあるので、もっと積極的に天のシステムに逆らうような話かと思っていました。柳もその被害者って伏線かと。
柳に関しては単純に国が傾く様子を外側から描きたかったのかな。十二も国があればどこか一国ではそういうこともある、的な。完全に私の読み違い。完敗です。
伝え聞く古い作者インタビューの話しでは、数えていくと白銀の墟 玄の月からさらに二作ほど計画があったような話なんですよね。なので、もしかしたらそちらでもっと突っ込んで天への対抗が出てくる予定だったのかも?
さらに続編が出てほしいという希望的観測です。この辺、手元に資料がないので今度図書館でバックナンバーにあたってみようかと。私は予想すると当たらないから余計なフラグ立てない方がいいのか?
とはいえ、魔性の子から始まった高里の物語が、28年の歳月を経てようやく完結をみました。まさしく「 完 」って感じがある。
最近のインタビューなどでははっきり続編長編がないともおっしゃらないけれど、以前の次で長編は終わりって発言を撤回するわけでもない。悲しみ。
いずれにせよ白銀の墟 玄の月は控えめに言っても商業的に大成功でしょうし、新潮社さんとしては続編刊行していきたいところかと思います。
あとは小野不由美さん次第。一応、長編はもう終わりっぽい話しではありましたけど、そこを新潮社さんがうまく説得できればまだ目はある?
書かないと明言された舜は除くとしても、峯麒とか柳の傾きとか、まだまだ材料はいくらでもあるんですよね。もしくは遵帝の代など思いっきり過去とか、逆に陽子が(精神年齢的に)よぼよぼのばーちゃんになったぐらいの未来の話しにするとか。
ただ、小野不由美さん的には市井の名もなき人々の物語を書く方が楽しいらしいので、折衷案が短編だったのかもしれません。
あとは短編はもちろんだけど、なんならキャラを活かして日常4コマ漫画的なものでも嬉しい。twitterでいろいろ描いてらっしゃる皆さんの絵を見てそう思った。
反省会以上、以下ただの感想文&雑感
いやもう、小野不由美さん、山田章博さん、新潮社さん、書店員のみなさんに感謝しかない。
最高の作品と最高の一か月をありがとうございます!
かなり雑ではありますが、こみあげた熱い想いを吐き出しておきます。
こういうときは、生き延びた人々の数を数えるんだ
いろいろな人がサラッといなくなったり死んでしまったり。とても悲しい物語でした。
泣きながら州宰職を辞す覚悟だった恵棟。最後の最後には巌趙と午月ら小臣たちも……
杵臼も朽桟も、その息子も、誰よりも国を想った人からどんどんいなくなったり、死んでしまったり。
特に鄷都は悲しかった。あんないい人が死ぬとは儚すぎる。最後が驍宗に看取られて、っていうのがせめてもの救いか。
嘉磬をはじめとして、まともに描かれもせずに亡くなった人々も多い。
確かに項梁のいう通りで、生き延びた人の数を数えないと涙腺が持ちません。
悲願だった驍宗も生きていたし、蒿里も穢瘁は負っても大丈夫だったし、李斎も無事。回生は余計なことしなかった。本当によかった。
さり気なく皆白が生きていたのもビックリ。右腕だった嘉磬が処刑されたのは沈痛の想いでしょう。
正頼にからかわれて憮然としていた彼はいったいどこへ?
潭翠、確か芭墨と一緒に白圭宮から逃走して、承州で芭墨だけが処刑されたところまで知られていたはず。
ただ、そのあと潭翠の話しが一切出てきてない。多分。徹夜でぼんやりと一度通して読んだだけなので、見逃している可能性も高いですけれども。特に終盤はもう怒涛の勢いに呑まれてたので何行か読み逃したり記憶が飛んでるかも。
もう一度、潭翠の行方を重点的に意識して読み返さねばならぬ。
蒿里にとっては魔性の子の続き
白銀の墟 玄の月は十二国記本編の正当続編。私のイメージでは完全に黄昏の岸 暁の天の続きなんですけど、蒿里にとってはどちらかといえば魔性の子から続いている状況なんですよね。
で、蒿里が白銀の墟 玄の月作中で魔性の子の内容に触れた辺り、もう思い出すだけで涙が。
彼にとってはつい数か月前の出来事なのだから当然のことなんでしょうけど、絶望の声をあげた広瀬や、亡くなった多くの同級生を人々のことを忘れていないのはとても感慨深いものがありました。
魔性の子から28年、高里をただ見送るしかなかった広瀬の絶望もようやく、ようやく報われました。
天意覿面で怖い
昨日の夜中、ふと目が覚めて寝ぼけた頭でマジで怖いなぁ、と突然気づいたのが、驍宗が捕まったときの流れが天意てきめんだったこと。
土匪の報復から守ってほしいと言い募る里の人々を、李斎たちは後ろ髪ひかれながらも見捨てました。で、結果的にそのせいで驍宗が馬州方面にいたことがバレて、馬州師を含む追手がかかることに。
あの場面、これまでの李斎ならまず間違いなく助けたはずです。驍宗も自分の立場を考えてか特になにも言わなかった。
しかし、ここで驍宗が民を見捨てたことによって天意が翳り、天の加護が一時離れてしまったのではないかと。そのために妖魔や追手に襲われるハメになってしまったのではないか。
もしかしたら、あの場面で現れた妖魔たちも追手が放ったものではなく、天意・天の加護がなくなったことによって湧いた妖魔だったり?(悪い妄想癖)
図南の翼で出た「 怪我人がいる、わたしはいない、だから妖魔はこない 」の逆現象じゃないかと思いついて布団のなかで悶絶しました。
しかしそのあと、多くの随従や鄷都の死を見た驍宗が、自分だけが助かるべきではないと思い直し、去思を救った。それで再び天の加護下におかれ、最終的にあのような結末を迎えることができた……って流れなのかなって。
ただでさえ白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻を徹夜で読んで生活リズムも体調も崩しているなか、こんなことを思いついたために昨晩もうまく寝つけず。辛い。
また馬州かいい加減にしろ
っていうか驍宗が捕まるシーン、「 あああああまた馬州か本当にいい加減にしろ 」って私の中の女仙が謎の怒髪天。
風の海 迷宮の岸で泰麒を捕まえたとのたまった醐孫が馬州司寇大夫で、女仙らを辟易させた昇山者の南瓜太夫こと呂伯の出身地も馬州。
なんだか泰麒って馬州と相性悪いなぁって思っていたら、白銀の墟 玄の月では驍宗を追い詰める馬州師ども。私が女仙なら持てる神通力の限りを尽くして馬州を燃やし尽くしていたところ。
馬州師は命令を遂行しただけだし南瓜太夫もただ熱心だっただけだし理不尽極まりないのは重々承知ですが。そもそもここまで馬州のイメージを悪くした醐孫が悪い。
驍宗と阿選とでは王としての器が違う
確かに阿選は将軍として素晴らしい武人だったのでしょう。しかし、やっぱり二重三重の意味で驍宗の方が王だったんだな、と感心しました。
驍宗、風の海 迷宮の岸作中で一度ご無事と言われ、泰麒には「 恥をかきなれていないから 」戴を出る、と言っていたんですよね。
でも白銀の墟 玄の月で驍宗が麾下に語ったのは王になれなかった自分は謀反を起こしたくなりかねないから。麾下らは驍宗が謀反なんて起こすわけがないと言い募ったけど、本人は大まじめに危惧していた。
その点、阿選は真逆です。麾下が「 驍宗より阿選様の方が! 」って言えば「 往生際が悪い 」とたしなめてた。でもちゃっかり禁軍将軍職に納まったうえ、結局謀反。
そこもまた、驍宗と阿選の決定的な違いなんだろうし、だからこそ選ばれたのは 綾鷹 驍宗だったのでしょう。泰麒の王気勘違い事件からなんだかんだと言われる驍宗の王選ですけど、間違いなかったと思える。
結果的に戦乱で民が苦しんでしまいましたが、尚隆、陽子(世卓も?)らの例をみるに、もはや新王の通過儀礼なのかもしれませんね。
しかし厳しい冬と阿選の圧政を乗り越えた戴は、きっと強い。なにより最後の挿絵、分厚い戴史笮書の演出はズルい。
実質1年たらずで崩壊するかと思われた驍宗の王朝も、あのあとはきっと長く長く、驍宗と蒿里と麾下たちで、たくさんの歴史を紡いで行ったんだろうなって。
琅燦はなにがしたかったのか
やはり耶利の主公=琅燦でした。二人とも黄朱だったっていうのはちょっとびっくり。
っていうか結局半獣出ずに終わった。マジか。耶利ちゃん絶対半獣だと思ったのに。
白銀の墟 玄の月のラスト、最悪の場合は黄朱で国に縛られない耶利が蒿里をその手にかける覚悟だったように、国に縛られない琅燦だからこそ国や驍宗への忠誠心より、天意への好奇心が優先してしまった、とみるのが自然でしょうか。
いや、そもそも琅燦にとっては阿選とともに謀反を起こすことと、驍宗麾下として忠義を尽くすことは二者択一ではなかったのかもしれません。
正直、私としては阿選の動機よりもこちらの方が興味があるので、突然考察をブッ込んでくるかもしれません。かもしれませんっていうかさっきざーっとかいたのでもう8割がた出来上がってたりします。
まだ一読しかしてないのに大丈夫か私と思うけれど、ほらもう次の蝕までの命だし。
なんだかなんだ優しい(?)天
なんだかんだ二度も泰麒の穢悴を治してくれる蓬山の天神、西王母様やさしい。
李斎は蓬山の天神が冷徹とご不満そうでしたが、そもそも西王母自ら応対して穢瘁を治してくれること自体が本来は特別措置なのでは?
さすがに穢瘁 → 蓬山連れて行けばなんでもかんでも治してもらえるってものでもないでしょうし。
そこはきっと、地下にあって祭祀を欠かさなかった驍宗、命懸けて行動し天神への御目通りまで叶えた李斎、6年間も拷問に耐え続けた正頼、民のために散った者たちや、祈り続けた民の想い……それらを天が汲みとってくれたのでしょう。
蒿里、今度は一ヶ月蓬山に滞在してゆっくり養生するようですけど、禎衛や蓉可とも会えていたらいいですね。女仙たちも峯麒がいなくなったままでは沈み込んでいるでしょうし。
気にしいな蒿里のことだから、きっと蓉可の前では鬣が短いことを申し訳ないなんて思って隠そうとする。前髪切りすぎた女子かよ。可愛いぞ!
しかもさらっと使令も戻ったとある。これを機に黄海でもっと使令増やしてきましょう蒿里さん。大丈夫大丈夫、折伏失敗しても饕餮が守ってくれるんだから。
まとめ:白銀の墟 玄の月読了反省会・読後感想
とにかく、ごめんなさい!
展開予想が外れたのはともかくにして、あんな聖人君子のような正頼を疑ったこと、本当に申し訳ありませんした!霜元もゴメンね。
実はいまだに文章にまとめるだけで涙がほろりでモニターが見えません。おかげで正頼へのお詫びも遅くなりました。
正直感想的なところでいえば感じたこと想ったこと考えたことキリがないので、この辺で自重します。これでも人様に見せるにはかなり無駄が多くて申し訳ない気分です。
なんにせよ、発売が決まってから、また白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻を待つ一か月がただただ楽しかったです。
リアルタイムで続巻を待つワクワクに、ここまで心が躍ったのは久しぶりでした。
ページをめくる手が止まらず夜中まで読みふけって体調を崩してしまいました。まさしく魔性の書です十二国記は。
これこそ、黄昏の岸 暁の天から18年待った(私は15年ほどですけど)われわれ蓬莱人への天帝からのご褒美でしょう。
しかしまだ終わりではない。来年2020年には短編集も予定されています。
心置きなくまた良い旅ができるよう、元気にお待ち申し上げましたと言えるよう、みなさんもご無事で。
私もその頃にはぶたれおわったであろう尻を養生して、また新刊を待ちます。