白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻 展開予想【十二国記】

2020年3月2日

18年ぶりの新刊から冷めることのない熱気そのまま、白銀の墟 玄の月 完結編である第三巻・第四巻の発売が迫ってきました。

今回は白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻での展開を予想。といいつつほとんど妄想・空想ですが、発売前の暇つぶしにでもなれば幸いです。

本記事は「 波 」の作者インタビュー、事前公開された第三巻・第四巻のあおり・あらすじ文で事前バレされた事実も含めて考察しています。

ネタバレ回避勢のみなさんはご覧にならないことをおすすめします。危ないから目次も開かないでね。

公式による事前ネタバレを前提に

十二国記白銀の墟玄の月第三巻・第四巻表紙

新潮社十二国記公式ページより ©小野不由美 / 新潮社

白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻発売直前!

まず前提としてお伝えしなければならないのが、白銀の墟 玄の月第一巻・第二巻本編とは別に新潮社・小野不由美先生によって明らかにされた事実です。

ざっくりまとめると、下記が新たに判明した白銀の墟 玄の月の内容。

  • 純粋な戴の物語として描かれる=陽子らの出番なし?
  • 鳩は妖魔。
  • 驍宗は生きていて、身動きがとれない状況から脱出。

本記事はこれらを前提に白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻の展開を考察・予想します。

ここでは省きましたが、上記については前回記事でまとめています。詳しく知りたい方は下記リンクよりどうぞ。

話の軸は天システムへの対抗になると予想

白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻では、十二国世界をとりまく天とシステムへの対抗がテーマのひとつとして取り上げられると予想されます。

これまた「 波 」11月号のインタビューで明らかになったことですが、戴のストーリーは魔性の子を書いたころから基本的に変わっていないそう。下記がインタビュー該当部分の抜粋です。

――「十二国記」は先生の中で、いつ頃から存在した物語なのでしょうか。それは最初から、今のような物語でしたか。また、『魔性の子』をお書きになった時点で、「十二国記」の物語はどこまでが小野先生の中にあったのでしょうか?

小野 基本的な世界設定は『魔性の子』を書いたときからありました。戴の話については、その当時に考えていた話から基本的なところは変わっていません

新潮社 波 2019年11月号 小野不由美インタビューより

つまり白銀の墟 玄の月の大筋も当時から変わっていないということ。

もともと小野不由美先生は「 十二国記は最終的に天のシステムに対抗する話になる 」としていました。前作 黄昏の岸 暁の天で陽子や李斎らが天について疑問を感じたり、白銀の墟 玄の月 第二巻で琅燦が天意の解釈を持ち出したあたりがその布石でしょう。

となれば、白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻では天と天意への対抗が展開の軸の一つとして登場すると予想されます。

阿選の謀反の相手は驍宗ではなく天

白銀の墟 玄の月が天への抵抗を軸のひとつにした物語で、阿選がその当事者とすれば腑に落ちる部分が出てきます。

白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻で描かれた阿選は、嫉妬心から謀反を起こすような往生際の悪い人物像ではありませんでした。また、本来偽王であれば喉から手が出るほど欲しいはずの麒麟による王選を受けても、践祚する素振りすら見せていません。

これは阿選が背いた相手が驍宗ではなく天だったから、と考えることができます。

阿選にとって簒奪が目的ではなく、天に背くための手段が簒奪だっただけ。

そもそも驍宗への嫉妬心から出た謀反ではないのだから麾下からみれば意外で当然ですし、天に背いているのだから天意を受けて践祚するわけがありません。

また、天意に逆らうことは民に対する苛烈すぎる誅伐の理由にもなります。

正当なる王を求める民はすなわち、天意に求める者です。天意を排除した国を作るために、天意に従う民を排除していると考えれば腑に落ちます。

阿選が簒奪時にも簒奪後にも自身の麾下らを直接巻き込まずにいるのも、天に逆らう大罪を自分一人で被るためと考えれば、麾下想いな阿選像とも一致します。

阿選が天へ背いた動機

阿選が偽王になる欲望以外の理由でシステムに逆らうのなら、その根源は不条理への怒りか正義感からと推測するのが順当です。

特に阿選は驍宗と並んで王に相応しいとされた人物にも関わらず、「 同じ朴姓のため次王になれない 」天の不条理をもろに受ける立場にあります。そういう意味では、阿選の謀反の相手が驍宗ではなく天だとしても「 驍宗を選んだ、あなたが悪い 」のセリフは意味が通じます。

(阿選の朴性について詳しくは下記リンクよりどうぞ)

ただ、これだけでは天に逆らう動機としては弱いと感じます。阿選が次王になれないといっても、次々王にはなれるはず。

ライバル視による嫉妬があるなら、続けて王になって驍宗の治世を知る民に比較してもらいたい、という欲もあるのでしょうけれど、阿選はそんなに往生際悪そうでもない。

一応、そのほかの不条理を正すためという線もありますけど、正義感からの行動であそこまで民を殺せるものだろうか。

そもそも阿選は常勝の将軍であり民想いな描写もないので、意に沿わぬ民の虐殺には躊躇がないだけかもですが……

共犯者か第三勢力の存在

阿選の行動や動機に不自然な点が残るなら、第三者勢力の介入か黒幕的な人物など別の思惑を持つ人物のために事態がややこしくなっている可能性も高いです。ミステリの常套手段ですね。犯人の犯行とは別の事件があったがために謎が解けなくなる。

そもそもいまは仕方なく簒奪者の役を演じているだけで、謀反自体が阿選の意志ではなかった可能性すらあります。

共犯者・第三勢力候補として具体的には琅燦、正頼辺りが怪しい。霜元は裏切り者としては十二分に怪しいけど、さすがに黒幕ってほど大物なイメージではないので除外(霜元ファンの方いらしたらごめんなさい)。

あとは鳩の妖魔も。阿選が鳩の妖魔を使役しているのではなく、逆に阿選を操っているなんてこともあり得ます。

特に赤い鎧で揃えた赭甲集団は阿選ではなく第三勢力や黒幕の配下っぽい雰囲気がぷんぷん。

李斎は「 それほど腕が立つ連中が阿選軍にいた記憶がない 」とさり気なく失礼な証言をしていますし、実際白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻での登場人物を見る限り、阿選・品堅の麾下に女子供を嬉々として屠るような者がいるとは考え難い。

その辺りを加えて考えても、阿選とは別の思惑を持つ第三勢力が関わっている可能性は十分にあると思われます。

阿選と驍宗の共謀説?

最も読者の心をえぐる展開が、驍宗が阿選と共謀していた展開ではないでしょうか。

驍宗はシステムに選ばれた王でありながら人として国と民が天から解放されることを望み、天の獣である泰麒を阿選に襲わせた、なんてストーリー展開。

えっ、驍宗はそんなのことしない? 本当に? でも青猿が驍宗は泰麒を裏切るって言ってる……

驍宗が共犯かそもそもの首謀者なら、土匪の乱で当の土匪が王の自作自演かもと感じていたのが伏線になりますね。阿選が麾下に出した「 驍宗周辺でなにか起こっても放っておけ 」指令も、弑逆のためではなく単純に驍宗の自作自演を邪魔しないためだった、と。

「 驍宗を選んだ、あなたが悪い 」のセリフも、麒麟の角を斬らせるような男を王に選んだあなたの自業自得ですって意味で通ります。

自分で妄想しといてなんだけど驍宗様めっちゃ怖いわ。

そして、天意に背いた王に失道せず初めて対峙する麒麟として、王への思慕と天意の間に揺れる泰麒の葛藤も心をえぐる。

ただ、驍宗が天意に反するために計画を遂行したとして、故あれば勝ちを捨てる驍宗が民も多くが犠牲になっている現状を容認するのはおかしい。麾下も多く処刑されていますし。

この説の場合、どこかで驍宗の思惑が外れてコントロールがきかない状況、って展開になるかも。

天意に逆らう鳩の力

阿選が鳩を利用しているのか、別の黒幕による差し金なのか、はたまた鳩の妖魔こそが黒幕なのかは不明。

ですが、鳩は天意に逆らう側とみて間違いないでしょう。偽王に対して自浄作用として働くべき州侯が病んでいる以上そう見るのが自然です(病む=傀儡がミスリードでなければ)。

可能性としては低いでしょうが、鳩は阿選の謀反とは全く関係なく発現し、好き勝手に傀儡を作りまくっているのがたまたま阿選の有利に働いた可能性もあります。元気に謀反してた阿選が無気力になっていったのは鳩の影響を受けたためかも?

本来王宮内に妖魔なんぞ湧くはずもありません。誰かが連れ込んだのでなければ、慶国宝重 水禺刀の青猿のような存在が鳴蝕による白圭宮破壊で封印が解けてしまったとか、黒麒や饕餮が原因で協力な鳩妖怪が引き寄せられたとか。

となれば、赭甲集団も鳩の仲間と考えることもできます。単純に鳩が操っているだけでなく、人妖という可能性も。図南の翼で珠晶が襲われた人妖は、一部だけ人の姿で鱗があったり蛇の尾があったり、どちらかといえば汕子ら女怪に似たものでした。

しかし月の影 影の海で語られたところによると、見分けがつかないほど人と同じ姿に化けられる妖魔もいるとされています。王宮に棲みついて人を傀儡化できるような高等な妖魔が出たのですから、白銀の墟 玄の月で語られた赭甲集団が全員人の姿をした妖魔としても不思議はないでしょう。人でなく妖魔であれば、異常に気配に敏いのも納得がいきます。

ただ、人妖の話を言って聞かせたのが逹姐なので完全な人に化ける妖魔っていうのがどこまで本当か怪しいところではあります。逹姐、州侯が神通力を操るとか言ってたくらいだし。

柳も巻き込まれている?

関連して気になるのは柳。状況があまりにいまの戴と似ているんですよね。王が政治を放擲し、官吏が上にお伺いを立ててもまともな指示はない。沿岸部に集中して妖魔が湧くなど。

そのなかでも王が政治を放擲している部分、劉王が鳩妖魔のくるっぽーで傀儡になっていると考えれば納得がいきます。

十二国世界では王宮も州城も雲海もすべてつながっているので、鳩の妖魔が柳の王宮に飛んで傀儡を作ることは可能でしょう。

戴はすでに天へ抗う状況としてある程度完成された状況です。阿選が首謀者にせよほかに黒幕がいるにせよ、さらに天への対抗を広げるため、他国も同じ状況にしようと柳に手を広げたことは考えられます。

ただ、例え劉王が鳩の影響下にあるとして、柳の麒麟がそれを黙認するはずがないんですよね。麒麟ごと傀儡にできるものだろうか。

泰麒 蒿里が天へ背くシナリオ

阿選の謀反とは別に、泰麒である蒿里が天に背くシナリオもあり得ると考えます。

よく考えてみれば、天が存在しながら王がどうとか国が傾くとか結構不条理です。傾かない世界にすればよかったのに。また、戴と漣のような生きやすさの差は不条理の塊。

世界を造れるほどの力があるなら、なぜ民が苦しむような仕組みの世界にしたのか。っていうか麒麟の一生って超絶ブラックじゃないか、と文句を言いたくもなる。

蓬莱の世界には天のような主体のハッキリした創世主がいないので文句の言いようもありませんけど、十二国世界に天たる組織が存在することを蒿里はよく知っているし、反抗心を抱いても不思議はありません。

天意の象徴で天の眷属たる麒麟が天に逆らう。カッコいいなおい。高里は高校生とはいえ蓬莱で育った男の子ですからね。中二病引きずってもおかしくはない(?)。

蒿里はかなり異質な麒麟

本来、天の眷属たる麒麟が天の条理に疑問をもったり、まして抗おうなどと考えることはありえません。

しかし蒿里は麒麟としてはあまりにも異質です。胎果の麒麟としても異例なほど長く蓬莱に生きて成長しています。

その後、麒麟としての力も記憶も失った純粋な人として、もっとも多感な時期を蓬莱で過ごしています。そもそも十二国世界にいたのは蓬山暮らしを合わせてもたった1年程度。

普通の麒麟ではまず身につかない蓬莱の考え方が、その身に染みついています。立場こそ違えど、同じ時代の蓬莱を生きた陽子が天に抱いた疑念を蒿里が抱いたとしても不思議はありません。

むしろ天とつながっている(つながっていた?)蒿里だからこそ、思うところがあるかもしれません。

蒿里に麒麟としての力が戻っているのか、戻りつつあるのかは不明。しかし士遜へのおよそ麒麟とは思えない態度を考えれば、蒿里が現在ほかの麒麟とは全く違う、異質な存在であることは確かです。

琅燦の立ち位置と耶利の主公

すでに共犯者ともいえる立ち位置にいる琅燦。しかし彼女は実は味方だった・実は黒幕だったのどちらにも行ける玉虫色状態です。

驍宗や泰麒の味方だからこそ阿選についているのか、天や驍宗に対し謀反を起こすよう阿選を唆しているのか、ただ傍観者として天と阿選の戦いを見守りたいだけなのか。掴みどころがありません。

一応、いまのところ結果的に琅燦の発言はすべて泰麒の意に沿う展開につながっており、味方をしているようにも見えます。冢宰ではなく実権のない三公の座についているのも直接驍宗麾下や民の弾圧に関わらないためと考えることができます。

また、謎の少女 耶利を泰麒のもとに送り込んだ謎の人物も琅燦っぽい雰囲気があります。

いずれにせよ天意に明るい琅燦のことなので、第三巻・第四巻で重要な役割を担うことは間違いなさそうですが……

次王は李斎? 回生?

驍宗には申し訳ないけれど、やはり気になるのは次の王が誰になるか

いや驍宗が死んだと確定してないっていうかむしろ生きてる可能性の方が高いんですが、たとえ老安で死んでいた武人が驍宗じゃいとしても第三巻・第四巻で驍宗が死ぬ可能性は十分に残されています。

誰かが死ぬフラグガンガンに立ってるし。回生の懐刀とか戦場南の歌詞とかとっておきのサラダとか

仮に驍宗が崩じたとして、次王の有力候補は李斎、回生あたりでしょうか。李斎はたまにエゴ丸出しになったり空回りしたりする性格が玉に瑕ですが、国を思えば西王母にすら逆らうあの実直さなら、王道に則って戴を導いてくれそうな気はします。

次に回生。死者の山を意味する蒿里が麒麟で、生き返りを意味する回生が王。対比が面白いコンビです。

ただ、白銀の墟 玄の月 第四巻の時点では回生は少々幼すぎます。珠昌の例はあるとはいえ、いまのところ回生の頭には復讐しかなく、国のため、民のためになるような思想はなさそう。老安の大人たちを疑った賢さは素晴らしいですが。

阿選が王になるパターンは……ありそうっちゃありそうだけど、泰麒の角を斬った阿選が実は善人だったって流れがどうつくられるかですね。

十二国初の麒麟王 蒿里爆誕

私としては泰麒である蒿里が自分を王に指名する展開が一番面白いかなと。

元来麒麟は慈悲深すぎて王に向くような性格ではないので、わざわざ除外するまでもなく天啓は下らないでしょう。

しかし白銀の墟 玄の月 第二巻で死をちらつかせた士遜の言葉を逆手にとるなど、現在の蒿里はおよそ麒麟らしくない面を多々みせています。それでいて民への想いはほかのどの麒麟にも負けません。

天が恣意的ではなく教条的であれば、現在の蒿里に天啓がくだってしまう可能性はあります。ある意味、元は慈悲深い麒麟でありながら民のためなら深謀遠慮も辞さない理想の王です。天が理想の王を与えてくれるなんて最高じゃん。

問題は麒麟に王としての資格があるかどうか。王に選ばれるにはその国に戸籍があることが条件のはず。確か麒麟には戸籍は存在しなかったような。

ただ、実際蒿里は延で三公に任じられていましたし、麒麟が自身の戸籍を自国に用意することも禁じられてはいないかな、と考えています。

まとめ:白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻 展開予想

なーんて予想とかなんとか言ったところで、きっとこんな妄想・空想はかすりもしないんでしょうねぇ。実際白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻の展開も全く想像の埒外でしたし。

ともかく、第三巻・第四巻まであとわずか。正頼黒幕説を唱える私の尻が無事で済むかは、小野不由美先生次第!

万民は健やかに白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻発売を迎えるべし。これをもって初勅とする。