小指殺しの魔眼の匣の殺人:ネタバレなしレビュー【屍人荘超え?】
ミステリーらしからぬ特殊設定と映画化で話題の屍人荘の殺人が気になって気になって、ついに読みました。
だけど本記事のテーマは続編にあたる魔眼の匣の殺人です。
大丈夫私もよくわからなかった。気づいたときには屍人荘の殺人どころか魔眼の匣の殺人まで読破してた。
※本記事はネタバレなしのつもりですが、魔眼の匣の殺人の帯やあらすじなどで公表されている程度の情報は普通に出てきます。
また、屍人荘の殺人は読破されている前提で前作のネタバレは多少あります。シビアな方はご注意。
前作屍人荘を軽く越えた魔眼の匣の殺人
レビューの結論、魔眼の匣の殺人は前作 屍人荘の殺人を軽々と越えたなと。
そして一番の感想は小指が死んだ。痛い。
あと腕の筋肉痛がきました。2日後ってところに心も痛い。
重いハードカバー本なんか寝転がって読んでたら当然ですが、そんなことにも気づかないほどの熱量で読みふけってしまいました。
ひょっとして今村昌弘先生どっかの十字路で悪魔に魂でも売ったんじゃ???
絶賛しすぎるとお世辞っぽくなるのはわかってますけど、事実なんだからしょうがない。もちろん細かい不満点がまったくないわけでもありませんが……
どうせなら私の小指がヤバくなることも作中で予言しておいてほしかった。
あらすじ&魔眼の匣の殺人のテーマは「死の予言」
今作 魔眼の匣の殺人のテーマは死の予言。
その日、“魔眼の匣”を九人が訪れた。人里離れた施設の孤独な主は予言者と恐れられる老女だ。彼女は葉村譲と剣崎比留子をはじめとする来訪者に「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と告げた。外界と唯一繋がる橋が燃え落ちた後、予言が成就するがごとく一人が死に、閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。ミステリ界を席巻した『屍人荘の殺人』シリーズ第二弾。東京創元社公式ページ 魔眼の匣の殺人内容紹介より ©著作者:今村昌弘
「 死の予言 」が成就されていく事件、想像もつきませんよね?
いやぁ、面白かったですよ。後述しますけど、ちょっとドラマ TRICKっぽい雰囲気もよかった。
しかも、魔眼の匣の殺人でも特殊設定である死の予言がただの舞台装置ではなく、犯人・トリック・動機にも密接に絡みあっています。
この点の妙味は前作 屍人荘の殺人のゾンビとも同じ。いや、それ以上かも。
ちなみに前作 屍人荘の殺人のレビュー記事は下記リンクよりどうぞ。
ドラマ TRICK好きにオススメ
本作魔眼の匣の殺人、ドラマ TRICK好きな方にもオススメです。ぜひ読んでいただきたい。
魔眼の匣の殺人のテーマは前作のゾンビよりも非科学的な死の予言。それだけでもうTRCIKっぽいですよね。
しかも屍人荘シリーズ本来の持ち味のひとつ、葉村くんと比留子さん(かわいい)のコミカルなかけあいもどことなくTRICKっぽい雰囲気が漂います。
下ネタもないしTRICKより初々しくかわいらしいものですけど。
実写映画化の際にはぜひとも阿部寛さんと仲間由紀恵さんも出演していただきたい。このお二方がハマりそうな登場人物もいますし。
一応、屍人荘の殺人は読まずとも魔眼の匣の殺人だけ読んでも大丈夫な構成にはなっているので、TRICK好きな方は魔眼の匣の殺人から読んでみてもいいかと。
さらに深まったミステリー展開とまった登場人物の悲哀
魔眼の匣の殺人は登場人物の悲哀がより深く描かれ、小説性が増しているように感じます。
とても相性がいいとは思えない特殊設定をミステリーと融合させた完成度の高さは前作 屍人荘の殺人でも見せつけられた通り。
ただ、魔眼の匣の殺人を読了したいま、屍人荘の殺人では人物描写が記号化されぎみだったように感じます。
登場人物がどちらかといえば人としてではなく「 キャラクター 」として描かれている印象がありました。
反面、魔眼の匣の殺人では人の感情に由来する行動・動機がより深いところまで描かれ、その切迫感と悲哀がひしひしと伝わってきます。
それでいて魔眼の匣の殺人でも前作 屍人荘の殺人と同じく、登場人物がキャラクター属性を含んだネーミングで登場人物の把握しやすさは変わらず。
私のような記憶力皆無な人にはとても親切(Switchの脳トレによれば、短期記憶能力60歳並み)。
登場人物が記号化するのはわかりやすさのためにミステリーではよくあることで、決して悪いことではありません。その方がエンターテインメント性が増して読みやすくなりますし。
ただ、魔眼の匣の殺人ではエンターテインメント性と同時に人を描く小説性も両立できているな、と。
(小説性って言葉、いい表現が思いつかず雰囲気で言ってるだけなのであまり深く気になさらず)
衝撃のラストに小指の骨崩壊
死の予言が生みだす悲哀と切迫感が、さり気ない伏線と事件に絶妙に絡むさまは本当に見事としか表しようがありません。
三ツ星シェフが作るパスタってきっとこんな味わいなんだろうなぁ。アルデンテなスパゲッティに全ての味がよく絡んだソース。
それが1000円台で味わえるなんてお得!
しかし特にあのラストは本当にえげつない。私の心と小指を折りにきたとしか。
おかげで終盤は休憩もせず読み込んでしまい、スマホ指ならぬハードカバー指になるかと。
余談ですけど魔眼の匣の殺人、2020年1月時点でまだ文庫本出てないんですよね。出費的な意味でも重かった。
ハードカバーで買うのはオススメしません。小指が折れても知らないぞ……!
不満がないわけでもない
と絶賛しきりですが、魔眼の匣の殺人に不満がないわけでもありません。
屍人荘の殺人に比べると葉村くんと比留子さん(かわいい)とのドキドキな絡みが少し少なかったかなと。
下世話なはなしですけど、あそこまでヒロインの比留子さん(かわいい)が魅力的だとやっぱり恋愛要素にも期待してしまうわけで。
おじさんな、そういうの見るの大好きやで……(事情を知らない転校生がグイグイくるネタ)
もちろんまったくないわけではありませんが、そこら辺の要素が少し薄めだったように感じます。
作品中の事情もあるし、魔眼の匣の殺人ではまた魅力的な新キャラとして女子高生の十色さんが登場したのでそこら辺とトレードオフなのかもしれませんけれど。
逆ベクトルの感情表現もありましたし。ひぃ。
シリーズ続編の有無は?(ネタバレ防止対策あり)
シリーズファンとして気になるのが、魔眼の匣の殺人で班目機関の謎が解かれるのか、葉村と比留子さんの2人がどうなるのか、ですよね。
魔眼の匣の殺人で屍人荘の殺人シリーズとして完結したか続くかだけ書いておきます。
さすがにネタバレになるので、お読みになりたい方だけ下記のボタンをポチっとしてください。
まとめ:魔眼の匣の殺人 ネタバレレビュー
予言により死の危険に晒されるなか、複雑に絡み合う人々の過去と思惑。
ワトソンをめぐる比留子さんと葉村とのすれ違い。
無駄なく散りばめられた伏線と見事としかいいようのない絶妙な回収。
この非科学的な状況でも動じず謎を論理的に解き明かすべく奮闘する葉村と比留子さん(かわいい)。
果たして班目機関の謎は解き明かされるのか。
あなたの小指は無事でいられるか。
そして前作屍人荘の殺人でも見られなかった比留子さんの新しい顔を、ぜひ本書 魔眼の匣の殺人で味わってください。
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