幻の輝き撃ち、その真相【ガンダム用語】
甘っちょろくも魅力的な主人公とかわいいヒロイン(かわいい)のボーイミーツガール。カッコよすぎる悪役。歩兵や戦車も活躍する泥臭い戦場。
いま見ても全く色褪せないOVA、ガンダム 08MS小隊。
そのガンダム 08MS小隊から生まれたのが、多くのガンダム・プラモファンにネタにされ愛される輝き撃ちなのです。
輝き撃ちとは
輝き撃ちとは、シールドを地面に突き立て、その上にキャノンなど火器の先を載せて撃つポーズを指します。
銃身が長いライフルやキャノンなどの火器を撃つとき、安定させるためのバイポット代わりにシールドを使うわけです。
ロボアニメ界隈では「サンライズ立ち」「ガイナ立ち」「種ポーズ」などと並んで有名なカッコいいポーズのひとつ。
由来は冒頭画像のRX-79[G] 陸戦型ガンダムが180mmキャノンを撃つシーン。
なのですが……
輝き撃ちといったな? あれは嘘だ
しかし実は08MS小隊のオープニング映像中、陸戦型ガンダムは輝き撃ちなんかしていません。
なにをいってるとわからねーと思うが(略)
そもそも陸戦型ガンダムがあのポーズで輝き撃ちをするのは無理。
少佐! 姿勢が違います。あの撃ち方は自分は見ていません!
例の輝き撃ちのシーン、角度的に乗ってるように見えるだけ。
実際にはシールドはガンダムの左斜め前方に突き立てられており銃身は乗っていません。
オープニング映像でのサイズを考えたら、シールドがカメラ(視点)に対してかなり手前にあることは明白です。
遠近感抜きであのサイズだったらシールドどんだけ大きいのよ、って話。連邦のシールドは化け物か。
そもそも土台が必要な火器なら真っ先にやられがちなシールドを使うではなく、キャノンにバイポットつけるか別に用意しとけってハナシ。180mmキャノンは組み立て式なんだから。
勘違いが広まった原因はGジェネ?
それこそ嵐のなかの輝きのような、一瞬のシーンの見間違いがなぜここまで広がってしまったのか。
その原因として有力とされているのが、ゲームの初代SDガンダム Gジェネレーション。
陸戦型ガンダムが180mmキャノンで攻撃する戦闘シーンで見事なまでの輝き撃ちを披露。
銃身をシールド上部に下ろすときに思いっきりガッチャーンと言っており、まごうことなき輝き撃ち。
陸戦型ガンダムは納得いかなかったでしょうね。やったことなかったのに、バンダイ公式に輝き撃ちさせられたんだから。
なお、Gジェネシリーズでも輝き撃ちは伝統となっており、180mmキャノンを使うときは当たり前のように輝き撃ちしています。Ez-8も。
バンダイ公式「夢(輝き撃ち)を諦めないで」→ 輝きパーツ爆誕!
HOBBY SEARCH ガンプラ 陸戦型ガンダムHGUC ©BANDAI SPIRITS。
ゲームだけでなく、陸戦型ガンダムのプラモでも「あのポーズが再現可能!」と、バンダイが公式ポーズ例としてパッケージなどに載せるように。
そのため、シールドに自立させる機構、通称「輝きスタンド」がつけられています。劇中にも登場せず設定上も存在しないパーツですが……
本来の輝き撃ちは立った状態でシールドに砲身を載せて撃つ(ように見える)ものですが、陸戦型ガンダムのシールドは小型のため高さが足りず片膝立ちでしゃがんだポーズにはなっていますが。
(GジェネはデフォルメされたSDガンダムなので、立ったままでもOKでしたが……)
そこまでするか!? 輝き棒
輝き棒のファンイラスト | さくさくさくらい #pixiv https://t.co/Gp4Pv4qwur
— がみあにゼロ (@Gamiani0) May 2, 2019
輝き撃ちにはまだまだ逸話があります。
当初陸戦型ガンダムのMG版プラモを出すために金型もほぼ完成した段階になって、
「MGなのに劇中オープニングのシーンも再現できないのはおかしいだろ!」
とプラモ工場の工場長が超絶お怒りになったとか(真偽のほどは不明)。
しかし、いくら輝かしくてももともとやってもいないポーズ。しゃがませないと正面向きではシールドの上に砲身が載らない。
オープニング通り、立ったままのポーズだと輝き撃つどころか地面撃つことになっちゃう。
しかも当時のMGキットでは可動域の問題から片膝立ちでもシールドと砲身の高さが合いません。金型もほぼ出来上がっている状況で、これから可動域を広げるのは無理。
そこで苦肉の策として金型の隅っこを掘り、180mmキャノンの砲身とシールドとの高低差を埋めて支えるレゴの支柱みたいなパーツを追加。
いまでも語り草になっている「輝き棒」なるパーツが生まれた瞬間です。
輝き棒いらずの輝き関節
HOBBY SEARCH ガンプラ 陸戦型ガンダムHGUC ©BANDAI SPIRITS
なお、現在発売されているHGUC版プラモでは可動域の問題を解消し、輝き棒なしでも片膝立ち輝き撃ちができるように改善されています。
輝き棒の代わりに可動域の問題を解消した新関節機構が「輝き関節」と呼ばれるようになっただけですが。
↑ の画像が輝き関節が導入されたHGUC版。
輝き棒もシールドのスタンドもEz-8みたいな現地改修とでも思えばいいのだろうか。そこまでして輝き撃ちしたいかバンダイさん 08小隊。
嵐のなかで輝き撃ちの夢を諦めない点は、本当に称賛に値します。
輝き棒まで持ち出してその夢(輝き撃ち)を諦めないバンダイ公式の姿勢に、諦めずアイナと添い遂げたシロー・アマダの姿を重ねるガノタたち。
「輝き撃ちは存在しない」「勘違いでもカッコいいからいいじゃないか」「でも座り込んでまで輝こうとする陸戦型ガンダムはカッコ悪い」などなど議論が交わされながらも、多くの輝き撃ち作品が誕生し盛り上がっていました。
しかし無念なるかな。残念ながら、バンダイ公式が負けを認めました。
認めたくないものだな、公式自身の過ちというものは
バ、バンダイ…!とうとう目を覚ましてくれたか…!!!正しく輝いているぞ…!!! pic.twitter.com/wb9eiax7YE
— パーク@ (@_hp23) May 10, 2018
HGUCパラシュートパック版プラモのなかに、ポージング例として掲載された写真です。
しかしすでに時遅し。バンダイ公式が本物の100%正しい輝き撃ちを披露したにもかかわらず、
「輝きが足りない」
「ジオンによる巧妙なプロパガンダ」
などと言われる始末。
いまや本当に輝き撃ちがあったかどうかなんて関係ない。輝き撃ちは確かに、私たちの中に存在するのです。
オマケ:決死の輝き撃ち
駆け抜ける嵐の中で輝いて pic.twitter.com/oEA6afYO6X
— ガンダムクソ解説bot (@kusokaisetu) March 28, 2019
Twitterでバズったガンダム試作2号機 サイサリス(GP02)による輝き撃ち。
「駆け抜ける嵐」は、0083 Stardust Memory 第13話のサブタイトルです。
こっちは本家陸戦型ガンダムの輝き撃ちとは逆でシールドがこんな小さいはずない、なんて突っ込みは野暮。
ちなみにガンダム試作2号機は核バズーカを撃ったあと、冷却剤を噴射しまくるシールドで試作2号機自身の身を守る設計。
なので、輝き撃ちしたら死にます。壮大なる自爆。
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