白銀の墟 玄の月 第二巻で残された謎・伏線・フラグ【十二国記考察】
18年ぶりの長編新作 白銀の墟 玄の月。涙ながらに読みました。いやホントに、お待ち申し上げました。
新王を待つ荒民ってこういう気持ちなんだろうか。しかしまだ、白銀の墟 玄の月も十二国記も終わりではない。
11月9日の第三巻・第四巻発売に向けて、白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻で残された謎・伏線・フラグをまとめつつ考察します。
にしても最近頭がぼーっとする。夜中に鳩のぽっぽーって声でうるさくて眠れないし。天井裏に鳩でも住み着いたかな。
白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻をお読みになった前提でまとめています。ネタバレによってひどい穢瘁を負う危険性があるので、未読の方は見出しすら開かないでおくことをオススメします。
未読の方は、黄昏の岸 暁の岸まで読んでればOKな下記記事をご覧ください。
驍宗の生死と新月の供え物
新潮社十二国記公式ページより ©小野不由美 / 新潮社
驍宗の死で迎えた白銀の墟 玄の月 第二巻 衝撃のラスト。しかし書き方が明らかに考察を促している。
私としては驍宗生存説を推します。老安とは別に、月に一度、新月の夜に川を使って洞窟へ送られた食料が伏線としてまだ浮いた状態。
この洞窟が本命で驍宗は生きてましたって伏線ではないかと。
誰だよこのおっさん。あっ、いや回生ごめんて短剣おろそうか、あっ。
ほかにも根拠はいくつかあるので、驍宗が死んでない説については別途考察記事を立ててあるので下記リンクよりどうぞ。
あと地味に気になるのが老安で主上らしき武人とともにいた兵卒2人の行方。静之の報告を聞いた李斎が訪ねたときにはもう老安にはいませんでした。
順行が収めた武器を持って仇討に行ったとも考えられますけど、行くならいくで静之と合流してから考えそうなもの。
老安の人々によって葬られた可能性すら示唆されてたけど……
鳩の声
宮中に巣くい不吉に鳴く鳩。黄昏の岸 暁の天で幻術とされてきたものも鳩が原因とわかりました。
白銀の墟 玄の月 第二巻でも平仲が傀儡になってしまった模様。有能ではなかったにしても白圭宮で貴重な泰麒の味方だったのに。
平仲だけでなく、泰麒の周囲では鳩に魂を抜かれそうな兆候がちらほら。確かにある危機なのに姿は見えず、淡々と物語が進んでいくホラー感。小野不由美先生の真骨頂。
しかし鳩とは言っても「 鳩が住み着いたようだ 」「 鳩の声がする 」などといっているだけで、ハッキリとした姿はみせていません。本当に鳩声の妖魔なのか、妖魔が遣わした鳩の声を出すなにかなのかも不明。
鳩の赤い目が驍宗の深紅の目と重なるように感じるのは考えすぎ?
実はすでに発表された第三巻のアオリ(あらすじ?)で鳩の正体が明言されています。当然ですけど、これが思いっきり第三巻以降のネタバレ。新潮社さん、なぜこのようなことを。そういえば文庫版 屍鬼のあらすじでもこんなことあったような。
事前情報を仕入れるのは嫌な方もいらっしゃるかと思うので、以下隠しておきました。
第一巻・第二巻をお読みのうえで、第三巻のあらすじをもう目にした方、もしくはあらすじに若干のネタバレを気にしない方のみ下記をお読みください。
戴国の宝重は慶国の碧双珠と同じ?
黄昏の岸 暁の天で琅燦が言及していた戴の宝重が、白銀の墟 玄の月でも言及されました。
李斎によれば怪我を癒す力があるらしい。
「驍宗様は身を守るための宝重(たから)をお持ちだった。極めて仮死に近い状態だったとしても、宝重の奇蹟で息を吹き返し、治癒した、ということはあると思う。だが、たとえ宝重の力を借りたとしてもそれなりに時間はかかるはずだ」
小野不由美著 新潮社 十二国記完全版 白銀の墟 玄の月 第二巻より
つまり、時間は多少かかるけど持っていれば怪我が回復する系の宝重。
言うまでもなく慶国宝重 碧双珠と同じ。
考えてみれば碧双珠の名に「 双 」という字が入っているので、ふたつ一対で存在する宝重を
分けあったとしても不思議はない。慶と戴は虚海を挟んでお向かいさんで近いし。
むしろ、玉の産地である戴の宝重が珠とすれば納得できる部分もあります。
仮に戴の宝重が慶の碧双珠のようなものだったとして、碧双珠のおかげで死の淵から這い上がった李斎が言うのだからこのセリフは説得力があります。この縁がうまく活きて陽子や慶国が介入する展開とかあったら燃えますね。
泰麒は黄昏の岸 暁の天「 自分の手で支えられるものこそ我 」なんて言ってるけど、奏も恭も慶も立ち上がりには他国の援助を受けていまがある。戴だってほかに頼ったっていいじゃない。驍宗も泰麒も、もっと人に頼っていいと思う。驍宗は割と頼ってたっちゃ頼ってたけど、結局出たがりが凶事につながったわけだし。
「分かってからでは間に合わないかもしれない。文州までは遠いから。空行師を使っても数日はかかるだろう。いざという時、頼りになるのは戴国秘蔵の宝重とやらなんだけど、あれを使えるのは王か麒麟ーー泰の国氏を持った者だけだ。宝重を使えるのも台輔、そして多分、切羽詰まった時、一番早くて確実で、あてになるのは、台輔の使令だ」
小野不由美著 新潮社 十二国記完全版 黄昏の岸 暁の天より
琅燦は「 あれを使えるのは王か麒麟だけど、(いま)使えるのは台輔 」と言いきっている。
つまり戴国宝重は白圭宮にあるってことに。
驍宗が宝重を持っていたのが李斎の勘違いでなければ、戴には碧双珠らしき宝重と別にもうひとつ宝重があり、白圭宮に眠っていることに。
それに驍宗がもっていた宝重が本当に慶国の碧双珠と同じものなら、泰王・泰麒以外でも使えるはずです。黄昏の岸 暁の天劇中で鈴が使ったり李斎が自分で碧双珠を持って使っていたので。
冬官長で知識魔の琅燦が宝重の行方と効果(国氏制限)を知らないわけはないし、設定魔の小野不由美さんが間違えるわけはないだろうし。李斎の勘違いでなければもう一つあると考えてよさそう。
果たして白銀の墟 玄の月劇中で出てくるかはわからないけれど……
死のフラグ、回生の短剣と戦城南
たとえ二巻のラスト、老安で死んだのが驍宗でなかったとしても。
回生の短剣や戦城南の歌詞など、死を暗示するフラグが立ちまくって全く安心できません。
第二巻のラストは戦城南の歌詞で締めくくられているんですけど、これが冒頭部分なんです。
第四巻ラストで誰か重要人物が死ぬとき用のとっておきっぽくて胸がざわざわします。
白銀の墟 玄の月 第四巻ラストでは戦城南の最後、
「 朝にぴんしゃん出掛けて攻めて 暮れて夜には帰らない 」
で締めくくりそうで怖い。いやいやいやいやいや、泰麒と驍宗も、泰麒も李斎も無事に再会してほしい。
回生も短剣も危うくて危うくて、誰に突きたてられるものかハラハラ。
それこそ泰麒でも生きていたとしたら驍宗でも誰でも「 主公 」の仇として刺されかねない。十二国記シリーズはともかく、小野不由美さんの作風からして驍宗どころか泰麒すらバッサリ死なせることも十分考えられる。主人公でも全く安心できない。
若干の狂気とナイフ。この危うさは十二国記アニメで浅野が持っていた拳銃を彷彿とさせます。
戴の凍った国土に深々と突き立った死のフラグです。
「 生き返る 」ことを意味する回生と、「 死人の魂が還る山 」を意味する蒿里。この名前の対比もなんだか意味深げ。
驍宗襲撃の真相と阿選配下
結局イマイチわからなかった驍宗襲撃の真相と、赤い鎧で揃えた赭甲集団の存在も謎。
赭甲の連中が驍宗の行方不明に関わったのは間違いないとして、白銀の墟 玄の月を読む限り阿選の配下ではないように読み取れます。
実際、白銀の墟 玄の月で登場した阿選軍の人々は側近ですら阿選に謀反のことを聞かされていなかったし、赭甲軍団の話を聞いた李斎も「 阿選軍にそんな人物いたか 」といぶかっていました。
むしろ、阿選の配下は驍宗の配下に劣らず立派な人物が多く、驍宗を数で囲んで背中から斬ったり、里を焼いて喜んで女子供を手にかけるような卑劣漢どもとはどうにもイメージが合いません。
赭甲集団は阿選軍を装って潜り込んだ別勢力の可能性もありそうです。
こうなってるくると阿選が謀反起こしたのかも本当か怪しくなってきます。泰麒を襲い角を斬ったのが阿選ということすらミスリードに思えてくる。
謀反人阿選の動機と無気力
新潮社十二国記公式ページより ©小野不由美 / 新潮社
謀反ののち、阿選は民だけでなく自身の部下らも見捨てた感があります。謀反にしても部下を置き去りに決行しています。
少なくとも白銀の墟 玄の月で登場した阿選の配下はみな、阿選の謀反自体が寝耳に水でした。
阿選の無気力は魂を抜かれたようにも思えますが、かといって完全に傀儡なわけでもない。芯の強い武人ゆえに鳩の鳴き声にもまだ耐えられているだけともとれるけど、いやはや。
泰麒の真意と祈り・王気と天意
新潮社・十二国記公式ホームページより ©小野不由美/山田章博/SHINCHOSHA。
白銀の墟 玄の月における泰麒は謎と伏線とフラグの塊です。
- 穢瘁は完治したはずなのに白圭宮で倒れかけたのはなぜか。
- くずおれたとき、地面の一点を見つめ続けた理由は?
- 王宮の奥と思われる北の方角へ祈るように一礼していたのは?
- 角と麒麟としての力はどうなっているのか。
- 阿選に王気があるというのは本当に欺瞞なのか。
- それとも琅燦の言う通り天による取引なのか。
- 天は本当に正当なる王 驍宗を見捨て、あえて阿選を玉座に据えようというのか。
泰麒の心情が全く描かれず、現状で角が治りつつあるのか、麒麟としての能力が多少なりともあるのか全くないのか全く説明されない。
考察しようがない完全にブラックボックスです。風の海 迷宮の岸や冬栄であんなにわかりやすく悩んでいた幼い泰麒が懐かしい。
かつて不似合いだった蒿里って字がピッタリな陰のある男になってしまうなんて、蓬莱って本当に恐ろしいところなんですね。
泰麒だけでなく、泰麒の使令コンビがどうなったかも気になるところ。完全に引き離されてしまったのか、麒麟の力を取り戻せば帰ってくるものなのか。
実はすでに戻ってきており、泰麒が阿選に斬られた際に小声で言った「 よくぞ我慢してくれました 」というセリフは項梁ではなく使令の二人に言った可能性も……?
また、白圭宮で軟禁状態にあった際にガクッと倒れかけたのは使令が戻ってきたため、とする考察もあります。
理想でいえば、終盤泰麒のピンチに駆け付けた傲濫が圧倒的な力で敵を蹴散らし汕子が泰麒を抱き寄せて守る展開が見たい。
傲濫は子犬に変身したのと魔性の子で……以外に饕餮らしい活躍はしていないし、やっぱり汕子は泰麒のそばにいてほしい。
ご都合主義で予定調和すぎるけれど、なんだかんだ十二国記は最後にカタルシスのあるシリーズ。きっと救いがあるはず……!
阿選と琅燦の関係性
琅燦の行動原理と阿選との関係性が謎すぎます。
古くから驍宗の配下でありながら、阿選の謀反後は三公として偽朝に参画している琅燦。
驍宗配下の裏切り者は琅燦かと思いきや、阿選本人の前で簒奪者呼ばわりし、驍宗には様をつける。
単に天が頭をかきむしってる様を想像して楽しんでいるようにもみえますが、結果としては泰麒の欺瞞に乗って味方をしているようにも見えます。
望めば得られるであろう冢宰の座ではなくあえて実権のない三公となったのも、元驍宗派閥の弾圧に関わりたくないからと考えればやはり驍宗の味方と考察することもできます。
いずれにせよ阿選が琅燦を重用する意味がよくわからない。この奇妙な関係性は一体どんな利害関係で結ばれているのか。謎。
さては阿選おまえ、琅燦のドレッドヘアーに惚れたな?
耶利はいったい何者?
新キャラ耶利が何者かも気になるところ。
官位もなく昇仙もしていない少女なのに、立ち居振る舞いだけで、暗器の楚とまで言われた項梁に認められている。あの年齢でどういう天才か。
しかも宮中の事情もよく知り、天意にも通じている様子。巌趙と気安いようなので、誰か驍宗派閥の武人の娘さんなのかもしれません。
ただ、巌趙とは違い計都慣れてはいないようなのので、驍宗と直接親密な関わりを持っていたわけではなさそう。
あと、獣のような身のこなしと描写されるあたり耶利は半獣の可能性も高そうです。だとしたら十二国記シリーズ初の女性半獣。
身軽そうな装い、高さをものともしない様子からして鳥とか猫の半獣?
カラスや猫辺りなら鳩にとっちゃ天敵。いい感じですね。っていうかねこ娘とかめっちゃいいじゃん。捗る(なにが)。
ただ、もしそうなら今回ばかりは楽俊は登場しない方がいいかも。むしろ逃げて!
耶利が主公と仰ぐ人物は誰?
十二国記シリーズ期待の新人 耶利が強い忠誠心でもって主公とあおぐ人物の正体もいまのところ謎。
大僕として耶利を推挙したのは嘉磬とされていますが、耶利の主人は複数の人を介してねじこむといっていたので嘉磬は主公ではなくつての一人でしょう。新キャラなのにわざわざ正体伏せる意味とないし、やはり耶利の主公が驍宗派閥の嘉磬を通してねじ込んだのだと考える方が自然です。
思惑はともかく、当の主公は驍宗を「 驍宗様 」と呼び、泰麒の味方をしようとしている。それでいて私人である耶利を白圭宮中で自由にさせられ、しかも官位を与えて昇仙させた泰麒の護衛としてねじ込めるだけの影響力もある。
正体として有力なのは琅燦。宮中である程度の影響力を持っている点&驍宗に様をつける辺り最有力です。次点でいまのところ潜伏しっぱなしで登場していない臥信。
ダークホースとして実は閉じ込められてなかった正頼って可能性もありそう。
動かない巌趙と囚われの正頼
白圭宮内における巌趙の扱いと巌趙本人の立ち位置が謎。軟禁されているとされてはいますが、実際に巌趙が登場したのは白圭宮に禁門付近。しかも計都もいる厩舎。
鎖で縛りつけているわけでもなく、仮にも禁軍将軍で驍宗よりもキャリアの長い武人を捕らえておく環境とは思えません。
驍宗とは兄弟のように接してきた巌趙が、阿選のもとで大人しく囚われているとは考えにくい。むしろ、阿選に対してはどの将軍よりも苛烈に反発しそうなものです。
しかも巌趙軍配下は特に粛清された様子もなし。むしろ鴻基を守る阿選の軍として組み込まれている様子。巌趙配下だった杉登も阿選軍所属として登場します。
かといって巌趙が驍宗を裏切ったようでもなく、阿選は簒奪者で王になどなれるはずがないと憤っている。なにか逆らえない、もしくは心情としては阿選を憎みながらも、簒奪を理解せざるを得ない事情があるのでしょうか。
そして本当に囚われているのか正頼。本当はお前が黒幕じゃないのか正頼。麒麟のお尻フェチが過ぎて謀反起こしたんじゃないのか正頼。
私はもし違っていたら尻をぶっ叩かれる覚悟で正頼が黒幕と糾弾しているので、正頼の動向はかなり気になるところ。
白琅 牙門観で阿選への謀反準備中?
玉の大商 赴家の女主人 葆葉は、先王時代に玉の利益で暴利をむさぼった女傑さん。
しかもいまでは国の許可を得ず採掘された、表には出せないような闇玉までも買い込んで商売もしているご様子。一体何にそんなにお金が必要なんですかねぇ。
去思や静之らの見立てによれば、葆葉さんは牙門観を城塞として改造している様子。しかも金属鉱を精錬している。武器の用意?
(ここのシーン、去思ですら気づいた点に李斎だけ気づいてなくて悲しくなる。あなたたたき上げの武人、しかももとは王師将軍でしょ……)
葆葉と牙門観こそが、打倒阿選最大のネック「 驍宗や泰麒を旗印に正義を問うにも兵力で潰されるまでの時間を稼げない 」点をクリアするための伏線になりそう。
っていうか闇玉ってカッコいいな。暗器の楚につぐカッコよさ。
英章ら将軍たちの行方
劇中で明確に再起を図り潜伏した英章を含め、臥信や霜元ら将軍たちの行方も気になるところ。俐珪、剛平ら新キャラの師帥たちも。
特に英章は部下らにから決起の際には驍宗のため駆け付けることを確約する署名まで集めた地図を持っています。この署名は白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻でドラマで絶対に活きてくる。
現状、葆葉の素性はわかりませんが、ただの商人が単独でここまでのことができるとは思えません。生きのびた驍宗配下の将軍ら、たとえば英章、臥信、霜元辺りがここにいたりするかな? と妄想が捗る伏線です。
ただ、李斎らが牙門観を訪ねたあとについた尾行が素人っぽいらしいので、元王師らによる組織ではない可能性も大。
いずれにせよ驍宗の朝は武断の朝。対する阿選もまた驍宗と双璧と呼ばれた武人。白銀の墟 玄の月、戦なくして終わることはなさそう。
牙門観で決起した李斎らのもとに英章・臥信軍が駆けつけて「 褒めてくれ、阿選軍より早く着いた 」とか言ったら鳥肌通り越して文庫本引きちぎっちゃうかもしれない。
あ、裏切り者 霜元は死刑で。
函養山を巡礼する白幟の目的
白銀の墟 玄の月 第二巻序盤で登場した白幟もなにか目的がありそう。
本来、白幟は天三道の道士の修行を真似て函養山付近を巡礼する一般の民たちを指します。しかし白銀の墟 玄の月で登場した白幟は石林観を詣でて祈るだけではなく函養山のあちこちを探って回っているとか。
一応白幟の文化自体はかなり昔からあったようですが、大きく流行り始めたのは驍宗が行方不明になった文州の乱のあとかららしい。
朽桟が本人らに聞けば「 巡礼によってかつて函養山にいた偉い神仙が蘇る 」「 道のない山の中へ入り込むのは神仙が蘇っていないか確かめるため 」と言っていたそう。
たとえ神仙が蘇ったとしてそんななにもないところでいきなり出てくるわけはないしとってつけたような言い訳にしか思えませんが、白幟の誰に聞いても一貫して同じ答えが返ってきています。ある程度組織された動きか誰かが広めた運動と思って良さそう。
いまのところヒントがなく目的ははっきりしていません。しかし函養山という場所といい流行り始めた時期といい、心ある民が行方不明になった驍宗を探していると考えるのが自然でしょう。
白幟の親子の母親も「 かつて山に分け入って昇仙した尊い道士様よ。そのお方に会えれば、寒さからも飢えからも救われる 」と言っていますし。確かに驍宗が玉座に戻ればそうなるでしょうね。
いまのところは英章や臥信らが民に頼んで探させているか、牙門観の女主人 葆葉がやらせていると考えるのがよさそう。
朽桟は白幟の人々が函養山で礫を拾いにきているのではないか、と睨んでいました。実際礫を拾って赴家に持って行けば白幟として旅をする活動資金にもなるし、赴家に接触するついでに捜索の報告を上げていると考えれば合理的かも?
なお、第二巻の終盤、李斎らが失意のなか石林観を去る際、去思が人混みのなかに一瞬「 見覚えのある女性の顔 」を見いだしています。そのまま去ったため誰とはわかっていませんが、白幟に保護を与える石林観のこと、白幟親子の母親と思われます。やはり今後もなにかしら関わりがありそう?
正頼・臥信が盗み出した国幣の存在
正頼と臥信が共謀して国庫から盗み出したとされる国幣も現在行方不明です。
国幣、要は十二国世界に置ける小切手のようなもの。これを盗み出した罪により正頼は捕らわれ厳しい尋問を受けているそう。
ただ、実際に持ち出したのは一度白圭宮に帰還していた将軍の臥信とのこと。臥信はそのまま潜伏して白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻でも登場していません。そのまま反阿選用の軍資金として期を待っているのでしょうか。
臥信は霜元とは違って特に疑念もないので安心ですね。
まとめ:白銀の墟 玄の月 第二巻で残された謎・伏線・フラグ
実のところ、黄昏の岸 暁の天までに溜まっていた戴関連の謎・伏線は白銀の墟 玄の月 第一巻・第二巻でもほとんど未解決。あれこれ考えすぎて失道しそうです。
他国の謎とかフラグはともかく、戴関連はほぼ全部そのまま持ち越し+白銀の墟 玄の月作中で新たに謎は増えっぱなし。フラグも伏線も却って増えちゃいました。
従来、長くても上下巻編成だった十二国記シリーズにおいて初の4巻編成。しかも黄昏の岸 暁の天を前提にした白銀の墟 玄の月。
フラグも伏線も半端ないレベルでまかれていますけど、設定厨といってもいいほどとんでもない設定魔(いい意味で)な小野不由美さんのこと、きっとわれわれ見守る蓬莱勢たちを満足させる形ですべて回収してくれることでしょう。
しかも今度は20年近くも待たせることなく年内の11月9日には答え合わせができる。黄昏の岸 暁の天から続く戴の物語 白銀の墟 玄の月の完結、楽しみです!
ディスカッション
コメント一覧
→(ここのシーン、去思ですら気づいた点に李斎だけ気づいてなくて悲しくなる。あなたたたき上げの武人、しかももとは王師将軍でしょ……)
いや それめっちゃ思いましたよ!しかも葆葉に無駄に突っかかるし、「その人の助けが要るんでしょうあんた、だったらその余計な正義感 少しはしまっとけ!」ってイライラしました。そのシーンに限らず全編を通して李斎にイライラすることが結構ありましたね。「迷宮」はアニメしか知らないから原作でどうだったのか知らないけど、アニメの李斎はめっちゃ好きでした。原作の李斎を知ったのは「暁」が初めてで、そこでもちょいちょいイラついたりしたけど、まあ境遇が境遇だしと大目に見て読んでたんだよね。新刊は半分ぐらい李斎だし、李斎側の話は正直ちょっとキツかったし、原因の大部分が李斎だったと思う。(言い過ぎか?w)
>>Arieさん
ホントホント、泰麒がいなくなったり長いこと苦労して焦ってるのもわからないでもないんですけど、李斎さんちょっと固すぎます。
申し訳ないけど、あの李斎は危なっかしくて泰麒も白圭宮には連れていけませんよね。阿選と対面したら即殴りかかって全部台無しにしちゃう。
考えてみれば風に海 迷宮の岸でも李斎が「 様子を見るだけ〜 」とか言ったのが原因で饕餮と対峙しなきゃいけなくなったり、割と最初からいろいろやらかしてますよね。結果オーライでしたけど。
イメージ的には李斎はすごく有能な将軍で好きなキャラなので、もう一歩活躍していいとこ見せて欲しいです。
素晴らしい考察、読ませていただき、ありがとうございます。
ところで、第4巻のアマゾンの紹介テキストは読まれましたか?かなり、かなり意味深です。驍宗が生きてるっぽい書き方です。
もし、読まれたくなかったら、下の部分は読まないで下さい。出来れば、感想または考察を聞かせていただきたいです。
ーーーーーー
(以下、管理人裁量により伏せました)
>>ここさん
情報ありがとうございます〜。
第三巻・第四巻のアオリとあらすじは読んでいるのですが、公式とはいえネタバレにつながるので本記事はその部分はないものとして書きました。
(記事の下書きしてた時点では把握してなかったのと、公式でもネタバレを嫌がる方が多いので)
なのでコメントからも消させていただいてます。すみません。ただ内容は把握しています。
最初の一行は本当に意味深ですけど、驍宗がもし生きていたとしてなぜ6年間も沈黙していたのか、ってところの説明?にも見えます。
出てきた単語に思い当たるところが今はなく判断が難しいんですけど、長いことなにかと対峙していたために身動きが取れなかったのがなんらかの進展があった、と取れるように思えます。
ただ、いずれにしても最終巻のあらすじとして全体を振り返っているようにも見えて時系列が不明です。驍宗が死んでたとしても一応整合性は取れるのかなって。ネタバレしてるようでうまく伏せてるようにも。
なので第四巻のあらすじはちょっと判断が難しいんですけど、第三巻のあらすじは思いっきりアレを断言してるのが笑っちゃいました。
稀にこういったあらすじ部分に嘘が書いてることもあるので、本当にそういう話?って疑ってたりもします。
記事じっくり拝見させていただきました、考察楽しませていただきました。ありがとうございます!
(3巻のあおり、アマゾンのテキストはまだ見ていません。見ないまま3巻お迎えする予定です)
まさかの最終章で新たな設定(道観の世界観、宗教、土肥の実情、神農、軍歌・・)が登場し、
どれも相変わらずよくできた設定で唸っています。
背景、歴史もしっかり作りこまれていて素晴らしいです。
この設定も新たな伏線、3~4巻に向けての回収に必要不可欠なんでしょうね。
1~2巻は登場人物たちと同じく、王が見つからない不安、王宮での独特の空気(これって日本の古くからあるいわゆる役所的な政治、対応に似てる気がしました)が気持ち悪くて読み進めるごと暗くなってました。。
戦場南の歌詞も不気味だし、なんとなく魔性の子に近しい独特の気持ち悪さがありました。
これが泰の民の今を少しでも疑似体験してる感じなのかな。
3~4巻は、これまでの他作品と同様に怒涛の伏線回収と希望ある展開を望みます~~
20年の短編も気になるところです。
後日譚が語られるんかな?
本格的な冬が到来する前に解決できますよう。
また白圭宮に漣から持ち帰った花が咲きますよう、主上を、泰麒を信じて待ちます。
>>yuuさん
じっくりご覧いただいたとのこと、なんだか恥ずかしいですね。すっぴんを見られる女性ってこういう気分だろうか。
だとしたらきったない肌で申し訳ない気持ちになりますです。
ともあれコメントありがとうございます。励みになります。
ついでに言うと波や新潮社ホームぺージに掲載された小野不由美先生のインタビューで今後の展開がある程度読めちゃうので、事前バレが気になるようでしたらお気をつけた方がいいかもです。
>背景、歴史もしっかり作りこまれていて素晴らしいです。
本当にすごいですよね。短編の丕緒の鳥とか風信とか、「 こんな細かい風習や官吏の設定までしてあるのか…… 」と驚きました。
なんかもう、十二国記の世界でオープンワールドMMOゲームでも作ってほしいなんて思っちゃいます。
官吏にもなれずひたすら恭の王宮付近をうろついてる怪しい奴がいたら私です。
死罪になってもいいので一目珠昌様にお会いしたい。
全てが無事に解決して、泰麒にはぜひもう一度、廉麟に直接お礼を言う機会があってほしいです。もちろんほかの麒麟たちにもですが。
>20年の短編も気になるところです。
新作短編も楽しみですね!
黄昏の岸 暁の天以来はかなり暗めの作風が続いているので、新作は華胥の夢みたいにさわやかな読了感で終われる作品だといいなぁ。
初めまして。AOといいます。発売前の今だから書けるあれこれを楽しく読ませていただきました。
ネタバレになるかなと思われたら、ここから先は内容を伏せておいてください。
赭甲軍団=土匪であると考えます。
赭甲軍団=土匪と何らかの交渉をするために王自らが行く必要があったため、驍宗様は出陣。
出陣前に何らかの接触が内密にあったかも。
土匪も保護すべき民と考えていたため?
好きで自分たちは犯罪行為をしているわけではないという描写があるため。
第1巻の151ページより引用。
英章は顔をしかめた。
「無敗なものか。あの方は、すぐにそういう妙な理屈で確実な勝利を投げ捨てる」
民に国の保護があることを分からせるために、土匪の圧力に屈したわけではないと示すため、
500人程度の賊軍に、一万人以上の兵を送ったなどと妄想しております。
新刊が出たら私のお尻もたたかれる羽目になるかもしてません。
それでは失礼します。
>>AOさん
コメントありがとうございます~!
>土匪も保護すべき民と考えていたため?
わー、この観点はなかったですね。確かに白銀の墟 玄の月では土匪も先王のツケに苦しむ戴の民でしたし、人一倍民を想う驍宗ならこの視点はあり得る。
そういう意味では、土匪をも民として保護して取り込むために、驍宗が土匪にも気を遣ってやるのはあり得ますね。
そこで赭甲軍団との交渉が決裂したとか、第三勢力によってハメられたなんてはなしありそうです。
>新刊が出たら私のお尻もたたかれる羽目になるかもしてません。
一人では心細いので、庭の木に吊るされるときはお誘いします。
日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください(スパム対策)。