【白銀の墟 玄の月発売直前!】十二国記に残された謎・伏線・フラグ
9月に第一巻、第二巻が、10月に第三巻、第四巻発売される十二国記最新刊、白銀の墟 玄の月。
十二国記という名の王の不在に荒れたわれわれ蓬莱の民にとっては18年も待ったまさに待望の長編新作です。
目前にせまった白銀の墟 玄の月の発売を前に、十二国記に残された謎・伏線・フラグをまとめました。
阿選の妖術と謀反の動機・異常な行動
黄昏の岸 暁の天の巻末で史書風に書かれた戴史乍書にて、戴で圧政を強いている偽王 阿選が幻術を使っている旨の記述があります。
(詳細は下記)
作中で李斎が語っていた「 反阿選だった人物が突如として阿選についたり、行方をくらませた 」のは阿選の幻術にかかったためだったのでしょう。
ただ、幻術の言及は本当に戴史乍書の一言のみ。本編中では唐突に阿選の支持者となるのは地位の高いものほど著しかったとしているくらいで、具体的にどのような幻術なのかが全く不明。李斎も阿選が幻術によって人を操っているとは知りません。
そもそも、阿選がそうした幻術を使えることが不自然です。そうした神通力が使えるのは自力昇仙して一定以上の位を持つ飛仙だけのはず。たとえば慶国の宝重 水禺刀の幻を封じる鞘を造った遠甫や蓬山の女仙など。
一国の重臣とはいえ、禁軍将軍はしょせん国に任じられた地仙。幻術などの神通力は特に使えないはずなのです。
しかも阿選はその武勇をもって驍宗と双璧をなし、用兵も似ているともされる武人です。もともとは飛仙だったとか幻術を使えるっていうイメージじゃないんですよね。
幻術を使える手下や協力者がいるか、なにかしら幻術を使える宝重のような道具を持っている可能性もあります。遠甫が水禺刀の幻を封じる鞘を造れたのですから、国の宝重以外でもそうした神通力を持つ道具が存在しても不思議でもないでしょう。
もしくは、阿選自身も何者かの幻術によって操られている可能性も考えられます。
なお、作中で李斎のの話を聞いた延王 尚隆は「 それでは国土の破壊だろう 」「 阿選は泰王から盗んだ羊を絞め殺そうとしているようなもの 」と評しています。
このように阿選は王になりたかったというより驍宗や戴そのものへの恨みでもって動いている節があります。しかし李斎から見てそこまで恨みがあったようにも見えなかった、と語っており、操られている可能性も大いにありそうです。
私自身は泰麒の養育係をつとめていた正頼が黒幕っぽいな、などと申そうしています。武官ではなく文官である点など、阿選よりは幻術使いのイメージに沿いますし。ぼくがかんがえたさいきょうの正頼黒幕説については下記リンクよりどうぞ。
驍宗配下の裏切り者は霜元?
黄昏の岸 暁の天劇中で驍宗とはライバル関係だった阿選だけではなく、もともと驍宗配下だった者のなかにも裏切り者がいる可能性が示唆されています。
李斎は自身の出身地である承州へ乱を鎮めるため向かう途中、阿選が謀反を起こしたのだと気づき、文州に出征中だった霜元と王宮の芭墨に急ぎ書状を送りました。
が、十日後にやってきたの阿選の手の者。李斎は弑逆の汚名を着せられ逃亡するはめになります。明らかに、阿選謀反との書状を受け取ったどちらかが通じていたと示唆されています。
その後、芭墨を含む多くの驍宗の臣下ら処刑されるなど死んだことと、驍宗と同じく文州へ出征していた英章、臥信らが姿を消したことが語られました(李斎がそう伝え聞いた程度ですが)。
しかし霜元のその後については特に語られていないのです。
もとから部下だった者たちの驍宗への信は篤く裏切りは考えにくいされてはいますが、霜元もまた阿選の幻術にかかったと考えれば特別不自然なことではないのでしょう。
気になるのは、阿選はなぜもっと多くの重臣らを幻術で味方につけずに処刑したのか、なぜ地位の高いものほど阿選の支持者に翻りやすかったのか。幻術をかけるにもなにか条件があるのかもしれません。
幻術を使っているのが阿選ではなく正頼だとしたらこの辺も説明がつくっちゃつくんですよね。驍宗派と思われている正頼が密かに反阿選のリーダーらに接触し、幻術で惑わせて阿選派に転向させる。
正頼を知る者は自然とそれなりの地位だったでしょうから、地位の高いものほど阿選派に翻りやすかったのではないか、と考えています。必ずしも正頼でないといけないワケではなく、ほかの高官でも同じ話ではありますが。黒幕が正頼だとして、李斎には接触しなかった理由がわかりませんし。
この辺りはきっと白銀の墟 玄の月で明らかになってくれことでしょう。
泰麒の角、麒麟の力は戻るのか?
黄昏の岸 暁の天が終わった時点で、泰麒は角を失ったままで麒麟としての力が一切ない状態です。使令もなく新たに折伏することもできず、麒麟の姿に転変もできない。今度襲われれば鳴蝕で逃れることもないでしょう。
本来、麒麟は角を失っても長い年月をかければ新しく生える(?)もの。
しかし泰麒は蓬莱で肉食や穢れを集めたため「 取り返しがつかないほど損なわれてしまった 」とされています。ただ、西王母によって穢れは祓われているので、戻る可能性はあるのでは? という気も。
慶の宝重 碧双珠で時間をかければあるいは……とも思うのですが、当の泰麒が慶を出てしまいました。
ただ、角について、泰麒の穢れと怨嗟を祓ったとき西王母が気になる発言をしているんです。
これ以上のことは、いまはならぬ
小野不由美著 新潮社 十二国記完全版 黄昏の岸 暁の天より
結果的に治してもらえず李斎は失望していましたが、いまは、って言ったんです。
なんとも含む意味がありそうなこのセリフを深読みすると、いま泰麒の角を治して麒麟の力を取り戻すと失道する危険がある、と考察することができます。
十二国記各章で描かれた通り戴はひどい状況。一気に傾いたさまが「 戴のようだ 」と例えられた巧では塙麟が失道しました。国の荒れ方でいえばむしろ巧よりも戴の方がひどく、麒麟がいたら失道してもおかしくないといえます。
推測ではありますが、西王母は善意として「 いまは 」治さなかったと考察できます。その場合、驍宗が玉座に戻り国があるべき姿を取り戻せば、泰麒もまた麒麟としての力を戻すことができるのでしょう。
その場合、やはり泰麒は麒麟に一切頼ることなく国を取り戻す必要があるわけですが……
泰麒の麒麟としての力が戻ったとして、汕子と最強の使令である饕餮、傲濫も戻ってくるのかが気になるところですね。
戴国秘蔵の宝重とやら
黄昏の岸 暁の天序盤で、みなが隠していた不穏な噂を泰麒の耳に入れた冬官長の琅燦。李斎がそのことを問い詰めたとき、戴の宝重について語っています。
「分かってからでは間に合わないかもしれない。文州までは遠いから。空行師を使っても数日はかかるだろう。いざという時、頼りになるのは戴国秘蔵の宝重とやらなんだけど、あれを使えるのは王か麒麟−−泰の国氏を持った者だけだ。宝重を使えるのも台輔、そして多分、切羽詰まった時、一番早くて確実で、あてになるのは、台輔の使令だ」
小野不由美著 新潮社 十二国記完全版 黄昏の岸 暁の天より
おそらく、距離に関係なくピンチをすくうため使える類の宝重ものなのでしょう。ただ、台輔の使令の方が早くて確実であてになるとも言っているので、そこまで瞬時に使えるものでもないのかも。
気になるのは泰の国氏を持った者だけが使える、って点。慶の碧双珠の例があるので必ずしも宝重=ほかの人が使えないとは限らない(碧双珠自体は王しか使えないとは言われていないけれど)。
ということは、白銀の墟 玄の月では戴のピンチを救うどころか阿選に使われられることも考えれる……?
泰麒だけが使えるとのことなので王宮である白圭宮にあるはず。白銀の墟 玄の月で登場するのか、はたまた特に使われずに終わるのか。気になるところ。
蓬山に芳の麒麟がいない
祥瓊が初登場する風の万里 黎明の空にて、月渓が祥瓊の父、峯王を弑逆した際、峯麟もともに殺しています。
しかしどうやら新しく生まれたはずの芳の麒麟、峯麒が蓬山にいないらしい。
供王 珠晶が語ったところによると、峯果はなったはずだけど、いつまで経っても麒麟がいる気配はなく蓬廬宮は閉ざされたまま。蓬山に問い合わせても曖昧な返事が返ってくるのみ。
しかも、峯果がなっていた時期に恭から芳に抜ける方向に蝕が起きており、それがどうも蓬山付近でから始まっていたようだ、とも。これは峯果が蝕によって流されたと考えるのが自然でしょう。
蓬莱、我々が住む倭は虚海の東とされていますから、流されたのは崑崙である可能性が高いとみられます。
供王 珠晶が快く泰麒捜索に協力したのはもしかしたら、隣国芳の麒麟を捜す目的もあったのかもしれません。
蓬山・碧霞元君玉葉は峯麒の行方不明を隠している?
気になるのは、蓬山のヌシである碧霞元君玉葉や蓬山側が峯麒の失踪を隠していると思われる点。
蓬山は十二国のどこにも属さない場所。問われたからといって芳とは他国である恭に事情を教えてやる筋合いはありません。
しかし、陽子らが7国の麒麟で蓬莱と崑崙を大捜索すると聞いたときも玉葉はなにも言わず。
以前、泰麒(泰果)が流されたときには玉葉に捜索を頼まれていた延麒もまた、峯麒のことには一切触れず。延麒すらも玉葉から捜索の依頼を受けていなかった?
風の万里 黎明の空で黄昏の岸 暁の天までの間に芳の麒麟が帰還していた可能性もありますが……
柳の傾き
王も麒麟も出てこないのに、シリーズ全体を通してよく登場する柳。いずれも密かに傾きはじめているものとして描かれています。
まるで劉王が突如として政治に飽きたか不在になったかのような状況。なのに、内心違和感を覚えながらも気づかないかのように振る舞う当の柳の国民たちの姿。
嵐の前のような静けさが却って不気味です。この辺りの事情は本編である風の万里 黎明の空でも触れられ、全部で9つある短編のうち2つもがひそかに傾きはじめた柳がテーマ。
法治国家として高名だったはずの柳で堂々と賄賂を要求するほど官吏が腐敗し、禁じたはずの殺刑について劉王にお伺いを立てても現場に丸投げ、ベテランの傾き探知官である風漢と利広に同時にやってきて、傾いてると口をそろえています。
ただ世界観や設定を描くだけにしては、ずいぶん扱いが重たいような。もしかしたら白銀の墟 玄の月本編でもなにかしら関わりをもってくるかも?
天帝や神々の存在
われわれ蓬莱人や新王なうえ胎果の陽子にはなかなか理解しがたいことですが、十二国の世界には本当に神様が存在しています。
本編で出てくる天仙 犬狼真君や碧霞元君玉葉はもちろんのこと、さらに上位の存在である西王母も実在しています。
陽子は玉葉と西王母らと出会ったことにより、神々が人と同じく意思を持つ存在であり天とは国や朝廷と同じく組織だったものと知ります。
そして同時に、天が実在し意思を持った神々の存在であるならば、必ず間違いもある、と気づきます。
天の存在が今後、どのように物語に絡んでくるのか。
下界との窓口だる碧霞元君玉葉ですら下界でなにが起こっているか見通しているのに、わざわざ西王母や天仙 犬狼真君が人々の本音を聞き届けるのはなぜか。
天の理から外れた蝕や妖魔と天の庇護を受けた十二国世界の関係性は一体どういったものなのか。
そして、戴は本当に天にすら見放されてしまったのか。今後の展開に注目です。
全く触れられない謎の国、舜
小野不由美先生は「 十二国全部の物語を描くつもりはない 」と仰っていますが、なんだかんだでほぼすべての国について触れられてきました。
ただ一国、舜だけは本当にほぼほぼ触れられていない。
王も麒麟も登場していないって意味では柳もですけど、先述の通り柳は何度も舞台として登場しているし、柳の秋官 瑛庚を主人公とした短編 落照の獄もあります。
それに引き換え、舜は国名以外全くといっていいほど登場しない。
私が記憶している限り、黄昏の岸 暁の天で延麒が各国へ泰麒捜索の助力を頼んだ際に「 柳と舜には色よい返事をもらえなかった 」と語ったくらい。ほかにもなにかしら言及はあったかもですが、特別大きな扱いを受けたことは一度もありません。
一応、号が徇で麒麟がオスであることはわかっています。なので徇王で徇麒。でもこれがわかったのもアニメの十二国紹介の回。原作でわかるのは舜極国という国の名前と場所だけ。
白銀の墟 玄の月や短編で登場するのか、はたまたこのまま全く触れられることなく終わってしまうのか。舜の運命やいかに。
まとめ:白銀の墟 玄の月の発売を前にして残された十二国記の謎とフラグ
もともと十二国記シリーズ自体、作者の小野不由美先生が魔性の子を書くにあたって作ってあった設定が元になったもの。
本来、蓬莱側の話しか書かない魔性の子には不要なほどの作り込みでした。
それだけ設定へのこだわりを持つ小野不由美先生ですから、これらの残された謎もフラグなどではなく、ただ作り込まれた設定がひょっこり顔を出しただけなのかも。
いずれにしても阿選や戴関連の謎は今後、新作の白銀の墟 玄の月で明かされることでしょう。
あとは残る芳の麒麟、柳、舜のことに、4巻にもわたる白銀の墟 玄の月で触れてくれるのか、触れてくれるとしてどこまで本編ストーリーに絡んでいくのか。楽しみです。
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