ガンダム世界の核融合炉はなぜ核爆発する?
数あるガンダム作品の中でもメインである「宇宙世紀」世界のモビルスーツは、現実世界でも研究・開発が進んでいる核融合炉が使用されています。
で、このあたり詳しい方だと「ガンダム世界の核融合炉はなぜ核爆発するの?」と疑問を持つ方がいらっしゃいます。
結論、アニメなど作品を作るとき単純にそこまで考えてなかっただけ(多分)だと思うんですが、それで終わらせるとアレなので、ガンダム上の設定も交えて考察します。
私も別に原子炉にさほど詳しいわけではなく、核融合炉についてはネットで情報を得た程度。本記事で解説していることは、あくまでも私の理解の範疇でのことです。
ガンダムが好きなだけで核関連専門家でもなんでもないので、本気で考察されたい方はご自身できちんと専門書から勉強されることをオススメします。
核融合炉は暴走しないので爆発しないはず
本来、核融合炉は事故等が起きても暴走はしないもの。
核融合炉は故障すると臨界状態を保てず自ずと停止し、暴走しない仕組み。
そこをもって、「ガンダム世界の核融合炉はなぜ核爆発するの?」と疑問が出る。確かに!
一方、現在原子力発電として使われている核分裂炉はコントロールを失うと暴走し、爆発などの事故につながります。
核融合炉の方が安全性が高いってわけです。ただ、核融合炉は研究はなされているものの、まだ技術的な課題が多く、実用化はされてないのが2022年現在。
もうひとつ核融合炉の特徴として、現状原子力発電で使われている核分裂に比べるとクリーンであることが挙げられます。
核融合炉の方が放射性の毒性が低く、放射能の減衰も早いとのこと。
じゃあなにが爆発してるの?
実際のところガンダム世界、宇宙世紀では核融合炉が使われているモビルスーツがドッカンドッカン爆発しています。
核融合炉が爆発しないならいったいなにが爆発しているの? って話ですが。
後年になってガンダムの設定として「核融合炉の触媒として入っている重水素が爆発する」ということになりました。
ガンダム世界の核融合炉は現代でも研究されているD-3He核融合。重水素とヘリウム3を燃料としています。
モビルスーツの爆発は燃料として使われている重水素の爆発って理屈です。
ガンダム世界・宇宙世紀の核爆発の例
核爆発重水素が爆発しているならなんで核爆発と言っているのか。
実際、ガンダム作中で核爆発として明言されているもので、パッと思いつくのが下記。
- U.C.0079 機動戦士ガンダム 08MS小隊 陸戦型ジム
- U.C.0096 機動戦士ガンダムUCの序盤のリゼル
- U.C.0123 F91のジャベリン
- U.C.0153 Vガンダム作中いろいろ
08MS小隊の陸戦型ジムは結果的に核爆発は起こしていません。が、罠があるとわかりきっている敵要塞への無謀な突入を命令されあえなく撃墜。
この際、指揮官イーサン・ライヤー大佐は陸戦型ジムが核爆発を起こすことを期待しての突入命令だったことを示唆しています。
「核爆発」発言に対する作中の言い訳
上記、「核融合炉の核爆発」に対する言い訳(?)として、のちに設定が追加されました。
U.C.0110前後で開発されはじめた新型の核融合炉は小型化された代わりに、核爆発する危険性があるってもの。
F91やVガンダムの時代は新型の融合炉だから核爆発するってわけです。
ただ、この設定だと一年戦争時代の08MS小隊やUCのリゼルで明言された「核爆発」の説明がつきません。
が、その答えとなりそうな記述が、小説版の機動戦士ガンダムにありました。
ちなみに、ガンダム関連の書籍でアナハイム社員へのインタビューで「モビルスーツは核爆発みたいな爆発なんてしない、映画とはいえやりすぎ」みたいな発言があります。
ガンダム世界の中で公開された映画の扱い、ってわけです。いわゆる劇中劇みたいな。ちなみにジャンルはロマンス映画らしい。生きてアイナと添い遂げるゥー!
(実際にタイトルは明言してはいませんが、アジア戦線を舞台にした作品とあり08MS小隊を指しているとわかるしかけ)
しかし、そのインタビューに「エレドア・マシスの古いヒットナンバー」を流していると書いてあります。いうまでもなく、エレドア・マシスは08小隊の一員。
つまりは08MS小隊は映画じゃない。なのに、映画みたいな扱いにされていて、信憑性がワケわかめ。
果たして核爆発のくだりの真偽のほどは……?
いずれにせよ「核融合炉は核爆発的な爆発はしない」問題を公式がネタにした面白い例といえます。
機動戦士ガンダム小説版では……
アムロは、攻撃するザクだって同僚のザクが致命傷を受けたのは分っているはずだと思った。お互いに、核爆発から回避しなければならないのだ。もちろん、通常言われる核爆発とは違っても、汚れもするし通常火薬の爆発力より巨大なのだ。
小説版 機動戦士ガンダムⅠより 富野由悠季 著 ©️Yoshiyuki TOMINO / 創通・サンライズ
つまり、「厳密には核爆発とは違うかもしれないけど、実質核爆発のような物だよね」って認識ってわけです。
これが宇宙世紀に暮らす人たちにとっての共通認識だった、と考えればいろいろ腑に落ちます。
ちなみに小説版ガンダムが出たのは1987年。核爆発の言及がなされたF91、08MS小隊、Vガンダム、UCのどの作品も、小説版ガンダムよりはあと。
なので、少なくとも富野由悠季監督はそのあたりを承知のうえでF91やVガンダムで「核爆発が~」としたわけです。だからこそ、U.C.0110は小型化された核融合炉が核爆発する、って別途設定にしたのかも?
08小隊やUCは富野監督は直接か変わっていないので、その辺り深く考えずに核爆発と言いきった気もするけど、アムロの言うように「正確には核爆発じゃないけど実質核爆発」として言ったと思えばそう不自然ではないでしょう。
余談:核爆発か否かは置いといて
核分裂炉に比べ核融合炉の方がクリーンなのは先述の通り。
しかし核融合炉も放射性廃棄物がゼロではありません。融合炉そのものも汚染されて放射化されます。
そうした核汚染の可能性を秘めた重水素の爆発は「通常言われる核爆発とは違っても」としつつも、核爆発とするのが宇宙世紀なんでしょう。
が、例え核融合炉の爆発が現代では「核爆発」ものといえないとしても、宇宙世紀では核汚染の可能性がある爆発を「核爆発」というのが一般的になったとして、なんら不思議はありません。
すでに核融合炉が一般的になった宇宙世紀では核分裂炉はほぼ使われてないでしょうし。
ちなみに、核融合炉が現代主流の核分裂炉よりクリーンである点、しかしながらやはり汚染がないわけではない点は、は小説版 機動戦士ガンダム作中でも触れられています。
モビルスーツや戦艦の核融合エンジンの爆発による残存放射能は、心配する必要はないと教えられていた。しかし、それは比較の問題でしかないとセイラは承知していた。
小説版 機動戦士ガンダムより 富野由悠季 著 ©️Yoshiyuki TOMINO / 創通・サンライズ
そもそも……
個人的には最初から「宇宙世紀に使われている核融合炉は核爆発が起こるもの」って設定にすればよかったと思うんですよね。
実際「U.C.0110以降に改良された小型反応炉は核爆発のリスクがある」としてるんだから、「それ以前のものも核爆発するよ!」で押し通せばよかっただけな気がする。
もともとガンダム世界で実用化された核融合炉って、現代考えられている核融合炉とは違うものです。
(そもそも現代では核融合炉は実用化できてませんし)
ガンダム世界で使われている核融合炉はミノフスキー・イヨネスコ熱核反応炉というもので、ミノフスキー粒子なる架空の粒子のおかげで成り立つもの。
もとより架空の存在なんです。
そんなものが「核融合炉なんだから爆発しない!」なんて誰が言えるんでしょうね。
最初から、「俺の宇宙では核融合は核爆発するんだよ!」でいけばよかった……
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