【氷菓】古典部シリーズ幻の最終巻、さよなら妖精

古典部シリーズは最新作「いまさら翼といわれても」で計6作品刊行されています(2022年8月現在)。

そんな古典部シリーズの幻の最終巻ってどういうことですか?

折木さん教えてください!

わたし気になります!

幻の3作目にして最終巻、さよなら妖精

古典部シリーズの第3作目といえばクドリャフカの順番。みんな大好きわらしべ長者な文化祭の話です。

が、実はその前に幻の3作目「さよなら妖精」が存在しています。

しかも古典部シリーズは氷菓、愚者のエンドロールに続いてさよなら妖精で完結する予定でした。

しかし、さよなら妖精の執筆が進んだ段階で発刊できないことに。

なんと古典部シリーズが刊行されていた角川スニーカー文庫ミステリー倶楽部がレーベルごと休止が決まったのです。

完結どころか既刊まで絶版に

レーベル休止により、さよなら妖精で完結どころか既刊の氷菓と愚者のエンドロールもが絶版

さほど氷菓も愚者のエンドロールともにそこまでの売れ行きではなかったようで角川スニーカー文庫から発刊されるとかもなく。

(当時作者の米澤穂信さんは本屋さんで働いていて、売れ行きが芳しくないことは把握していたらしい)

ただ、それがわれわれ読者にとっては結果オーライにつながるわけですが。

華麗なる復活

しかし華麗なる復活、さよなら妖精は創元推理文庫から刊行されることになりました。

笠井潔氏の推薦のおかげで東京創元社と縁が繋がり、さよなら妖精を見せたところ「これは世に出すべき!」と編集者も絶賛。刊行の運びになったとか。

残念ながら古典部シリーズとしてではなく単発のノンシリーズとしてではありますが。

結果、さよなら妖精はかなりのヒットを見せ、米澤穂信先生の出世作となりました。

これを受けてKADOKAWAも古典部シリーズの復活を決定。

これによって氷菓、愚者のエンドロールはもちろん、続編としてクドリャフカの順番以降が角川文庫から刊行されていったのです。

古典部シリーズではないけれど

さよなら妖精は古典部シリーズではなくなったため登場人物も刷新。

実際、もとは千反田えるのおじ関谷純だったと思われるイチヤタイゾウなる人物の名前が登場するなど名残も見られますが、古典部シリーズとはまったく関係がありません。

そんなことまったく関係ないほど面白いし、キャラクターも古典部シリーズに負けず劣らず魅力的なんですけどね。

また、テーマがボヤけるとして、主要登場人物マーヤの出身国が架空の国から実在の国ユーゴスラヴィアに変更。全面改稿となりました。

結果オーライ!

氷菓は米澤穂信さんにとってデビュー作。その完結編を届けられず忸怩たる思いがあったのではないかと思います。

しかし結果オーライ、ある意味ではそれが功を奏したとも言えます。

結果的に古典部シリーズは完結せずさらに続くことになったし、東京創元社からは小市民シリーズ、さよなら妖精から派生したベルーフシリーズが生まれることに。

もう、さよなら妖精は米澤穂信さんにとって出世作だし、古典部シリーズにとっての救世主でもありますよね。「クドリャフカの順番」「いまさら翼と言われても」が大好きな私としては本当にありがたい話。

さよなら妖精を読むなら断然新装版単行本

さよなら妖精を読むなら2016年に刊行された新装版単行本がオススメ。

なぜなら書き下ろし短編「花冠の日」が追加収録されているから

2016年以降に刷られたものでも、文庫本には収録されていません。この辺りの事情は別途書いていますので、読んでみようと思ってるけど迷ってる、って方はぜひご一読を。

なお、さよなら妖精は単発もののノンシリーズです。

が、さよなら妖精に登場するもう一人のヒロイン、太刀洗万智を主人公としたベルーフシリーズが刊行されているので、さよなら妖精が気に入った方はぜひ。

主人公が変わっているので一応別シリーズ扱いの模様。太刀洗万智シリーズとも呼ばれてるし。

さよなら妖精自体

私自身、古典部の続巻が待ちきれず、幻の古典部最終巻とされていたさよなら妖精を読んだのですが。

これがめちゃくちゃいい小説!!

古典部シリーズらしい極小スケールの日常系ミステリに加えて、町を飛び出て国と戦争、民族と内戦という大きなスケールが対比になっている。

2004年刊行の作品ですけど、今読んでも古びたところもなく、むしろ連邦制と国の分裂、民族、内戦がテーマになっているあたり、昨今のウクライナ戦争とリンクするところもあり、すごく考えさせられる一作です。

読むまでは作品推しの古典部シリーズファンだったんですけど、さよなら妖精を読んでからは米澤穂信ファンに鞍替えしました。米澤穂信さんの作品のなかで三本指に入る名作だと思います。

古典部シリーズ読んでいて未読の方はぜひ!

新装版の単行本で読むのがおすすめです本当に。最悪、図書館で。