「アナハイムはやりやがったってことだ」の意味 – 閃光のハサウェイ

2023年9月6日

アナハイム・エレクトロニクスといえばガンダム宇宙世紀において多くの「ガンダム」を含む傑作モビルスーツを造ると同時に、戦争・経済をも裏で操って来た「死の商人」。

スプーンから宇宙戦艦まで、とのキャッチコピーに違わず、地球連邦政府を含め宇宙世紀の社会全体に強い影響力を持つ軍事企業です。

そんなアナハイムに毒づいたハサウェイのセリフ「あれが新型ならば、アナハイムはやりやがったってことだ!」っての意味に迫ります。

マフティーにも連邦軍にも最新鋭機体を回したアナハイム

激しい鍔迫り合いをみせるΞガンダムとペーネロペー

激しい鍔迫り合いをみせるΞガンダムとペーネロペー 劇場版 閃光のハサウェイより © 創通・サンライズ

反政府組織を騙るテロリストが使うため製造元こそ秘匿されていますが、ハサウェイが空中受領したΞガンダムはまごうことなきアナハイム・エレクトロニクス謹製のモビルスーツです。

しかもミノフスキークラフトによる自由飛行・ビームバリアによる音速飛行・重力下でも使いやすいファンネルミサイルを搭載した最新鋭機。

重力下でも使いやすいファンネルミサイルも搭載し、重力下では間違いなく最強の機体、のはずでした。

しかし生身のままギギとともにモビルスーツ同士の戦いから逃げ惑う最中、ハサウェイは同じく空中を自由に駆け回るペーネロペーを目撃。

アナハイムはマフティーにΞガンダムを供与すると同時に、連邦軍にも同様にミノフスキークラフト・ビームバリア・ファンネルミサイルを搭載したペーネロペー(オデュッセウスガンダム)を渡していました。

敵対する双方の陣営に最新鋭機を供与したアナハイムにハサウェイは、「あれが新型ならば、アナハイムはやりやがったってことだ!」と怒りをこぼしたのです。

「やりやがった」は連邦軍のセリフ

しかし本来「アナハイムがやりやがった」と怒っていいのは連邦軍の方。

地球連邦御用達のアナハイムが、連邦政府の高官たちを暗殺しまくっているテロリストたちに最新鋭のモビルスーツを供与とか、とち狂っているとしか思えない。

しかも、機体の完成度ではΞガンダムの方がペーネロペーよりも完成度では優れている面がありました。そういう意味では、むしろアナハイムはテロリストであるマフティーを優遇したとすらいえます。

毎度やりやがるアナハイム

実は「やりやがった」のは閃光のハサウェイが初めてではありません。むしろアナハイムが「やってない」ときの方が少ないぐらい。歴史から学びたまえハサウェイくん。

(歴史から学んでたら眼前でクェスが死ぬ悲劇もなかったけど)

スターダストメモリーでもやりやがった(U.C.0083)

やりやがるアナハイム、古くはOVA作品0083 スターダスト・メモリーでの前例があります。宇宙世紀年表でいえばU.C.0083。

アナハイムはガンダム試作四号機 ガーベラをジオン残党艦隊の一角シーマ・ガラハウに供与しています。しかもわざわざモノアイまでつけてジオン風に艤装し直し、愛称もガーベラ・テトラとされました。

さらには(一応脅された形だが)デラーズ・フリートが乗っ取ったコロニーにエネルギーを供給し、地球への落下を手伝う暴挙も。

地球に落ちたコロニー3基のうち1基は、アナハイムが「やりやがった」と言って過言ではないのです。

Zガンダムでもやりやがった(U.C.0087)

Zガンダム時代のU.C.0087には、仇敵であるはずのティターンズにマラサイを無償で供与

もともとはエゥーゴに渡す予定で開発された機体だったのに。っていうかそもそもアナハイム自体がエゥーゴのメインスポンサーなのに。

えっ、マラサイを無償で!?

できらァ!

ゴミみたいなモビルスーツならともかく、よりによって評判のいいマラサイをです。ネモで散ったエゥーゴパイロットたちに謝れ!

ハイザックを無理やり連邦系の技術で開発してダメ仕様にしたり、Mk-2を地球側の技術だけで開発したりのティターンズが、アナハイムからマラサイを受け取ったな、って印象もあります。

ハイザックやガンダムMk-2の評判が微妙だったので背に腹は代えられなかったのかもですが…

しかし生き残りをかけた企業戦略とはいえ、エゥーゴのメインスポンサーがいままさにエゥーゴが戦ってる敵に無償でモビルスーツ渡すのはどうよ。

マジでネモのパイロットに謝れ。

逆襲のシャアでもやりやがった(U.C.0093)

また、閃光のハサウェイの前作にあたる逆襲のシャアでもアナハイムはやりやがっています。

アナハイムは月の表側の工廠でロンド・ベルのνガンダムを建造すると同時に、月の裏側の工廠ではヤクト・ドーガやシャアのサザビーを建造

メイン顧客の連邦軍から吸い取ったお金で反連邦組織にモビルスーツを造る。で、対抗のために連邦軍もモビルスーツを建造せざるを得ない。

マッチポンプすぎる。度し難いぞアナハイム!

なお、逆襲のシャアでνガンダムの設計・建造に携わったアナハイム・エレクトロニクス社のオットーは、本当にサザビーの建造については知らなかったらしく、「アナハイムも一枚岩ではない」などとしています。

上層部が腐ってるのか派閥争いか。いずれにしてもそれに振り回されて戦争をさせられ、巻き込まれる人々がかわいそうなのですが……

UCでもやりやがった(U.C.0096)

さらにさらに、UCの時代 U.C.0096でもやりやがってます。

アナハイムはネオジオン残党である袖付きにシナンジュ・スタインを供与。一応形式上は強奪されたということになっていますが、なんのことはない、強奪の体で無償供与しただけ。

結局シナンジュはシャアの再来フルフロンタルによって運用され、驚異的な戦果を挙げました。NTでは同じくアナハイムから供与されたシナンジュスタインとIIネオジオングがゾルタン大尉によって運用され、当代最強の戦艦ゼネラルレビルを轟沈せしめています。

ちなみに、UCの原作小説ではこの辺り、コントロールされた戦争で経済を回したい地球連邦政府の思惑もあり、連邦軍側すら黙認のうえ供与される経緯が語られています。

(現場のはねっかえりのせいで、結果的に供与ではなくガチな強奪の形になってしまいましたが)

ティターンズはある意味正しかった?

グリプス戦役のZガンダム時代、ティターンズはジオン系の技術者を多く取り込んだアナハイムを排斥しようとしていました。なんならティターンズ成立の前、0083の時代からそうした動きがあったぐらいです。

一年戦争でジオンの軍需産業のほとんどをアナハイムに吸収させたのが連邦政府なんですけどね。しかし、だからこそ地球連邦軍としてもアナハイムに危機感を覚えたのでしょう。いつの間にかアナハイムがスペースノイドの権利を主張する組織になっていたのです。

結局アナハイムが「やりやがった」ことを考えれば、この点に限っていえばティターンズのやろうとしたことは正しかったともいえるかもしれません。

まとめ:「アナハイムはやりやがったってことだ」セリフの意味

ジオン、エゥーゴ、ネオジオン、袖付き、マフティー・ナビーユ・エリン……

連邦内の政治問題や派閥争いもあったし、秘密裏に行われたことでもあったとはいえ、これだけ反連邦政府組織にモビルスーツを供与しながら、連邦軍とも付き合いがあったってなかなかすごい話。

とはいえ、そうして栄華を極めたアナハイムも、F90、F91の時代には小型モビルスーツでサナリィに遅れをとり、衰退していくようですが……

逆にいえばそこまでずっと連邦政府とズブズブだった、ってのはすごい話。さすがスプーン作れる死の商人ってところですね。